Web上で最新エビデンス集を掲載
アレルギー性鼻炎や花粉症に対する2016年版鼻アレルギー診療ガイドラインがこのほど明らかにされた。同ガイドラインは2013年版以来、3年ぶり8度目の改訂となり、今回新たに鼻噴霧用ステロイド薬の初期からの導入に加え、中等症以上の鼻閉のある症例での治療選択肢として抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤が登場。さらに前回改訂時に製剤が未発売だったアレルゲンエキスによる舌下免疫療法についても治療選択肢として位置づけた。「ガイドラインは個々の患者に対する治療上の“参考”となることを期待して作成したものであり、治療法を“規定”するものではない」という従来の考え方に基づき、エビデンスを基に解説。治療法に関する推奨度に関しては本文中では取り扱わず、Webサイトで、これまでのエビデンスも含む、最新エビデンス集を掲載している。
花粉症軽症期の薬剤選択肢が広がる
同ガイドラインでは具体的な治療法として通年性アレルギー性鼻炎、花粉症に分けて解説。この中で従来は両疾患で中等症以上の選択肢となっていた鼻噴霧用ステロイド薬について、通年性アレルギー性鼻炎では、軽症で第2世代抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、Th2サイトカイン阻害薬とならぶ選択薬の1つとして表記。花粉症についても、効果発現が早いことから従来は花粉飛散開始前からの初期療法には位置付けられていなかったが、「minimum persistent inflammationの考え方から初期の炎症から使用することで飛散ピーク時の症状増悪を抑制できる」として花粉症の初期療法のくしゃみ・鼻漏型、鼻閉型または鼻閉を中心とする充全型のいずれでも第一選択薬の1つとした。
また、2013年版では、花粉症の軽症期の第一選択薬は第2世代抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬のみだったが、今回の改訂でケミカルメディエーター遊離抑制薬、Th2サイトカイン阻害薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬の4種類が新たに加わった。
第2世代抗ヒスタミン薬の配合剤に初めて言及
同ガイドラインではヒスタミンH1受容体拮抗薬の項目で「近年では、非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬と血管収縮作用を有するプソイドエフェドリンの配合剤による治療も行われている」と第2世代抗ヒスタミン薬の配合剤について初めて言及。同配合剤の具体的な治療選択肢としては通年性アレルギー性鼻炎の中等症・重症の鼻閉型または鼻閉を中心とする充全型での新たな治療選択肢に加えた。
花粉症についても中等症および重症の鼻閉型または鼻閉を中心とする充全型で、従来の鼻噴霧用ステロイド薬+第2世代抗ヒスタミン薬+ロイコトリエン受容体拮抗薬またはプロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬の3剤併用療法と同列の治療選択肢として、鼻噴霧用ステロイド薬と第二世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤との併用療法を推奨している。
アレルゲンエキスの舌下免疫療法や眠気に対する留意事項も追加記載
前回改訂時に市販されていなかったアレルゲンエキスを利用した舌下免疫療法についても新たな項目を設定した。プラセボと比較して有意な効果が認められることや、皮下免疫療法と比較して局所副作用は多いものの、全身性副作用は少なく安全性は高いと紹介。通年性アレルギー性鼻炎、花粉症のいずれでも継続治療が可能な症例では選択肢の1つであり、長期寛解も可能であると表記した。
また、2013年に厚労省から出された「添付文書の使用上の注意に自動車運転等の禁止等の記載がある医薬品を処方または調剤する際は、医師又は薬剤師から患者に対する注意喚起の説明を徹底させること」を受け、眠気に対して留意する記載が追加された。(村上和巳)
【関連リンク】日本アレルギー学会