医師が抗てんかん薬の処方変更するのは発作や副作用など、なにかあった場合に限られるため、単剤処方できるようになったとはいえ、すぐさま臨床に反映され、患者がその恩恵を十分に享受できるとは限らないという。
より良いてんかん医療の実現のために、患者側、医療者側、双方に必要な教育について、日本医科大学脳神経外科学教室講師、日本医科大学武蔵小杉病院脳神経外科講師・医長の太組一朗先生に聞いた。
より良い治療にたどり着く早道とは
まずは患者さん自身が副作用をきちんと主治医に伝え、自分にとって何が大事でどうありたいのかを話し合うことが、より良い治療に早くたどり着く方法のひとつだという。「主治医に相談する際は、日本てんかん学会のホームページに掲載されている専門医リストも役立ちます。専門家の手を借りる必要があると主治医が判断すれば、紹介先の参考にもなります」(太組先生)
ただし、なかには「どうしてもその薬でないと発作が抑えきれない」患者さんもいるとか。個別性が高く、スタンダードが「絶対」とはならないのがてんかん診療の難しいところだと太組先生は語った。
医師(医療機関)のネットワーク作りも急務
より良いてんかん医療の実現のためには、医師の教育も欠かせません。「てんかん診療に携わるすべての医療者に、その立場と役割に応じた正しい知識を習得してもらえるよう、医学部教育や卒後教育を充実させる必要があります」と太組先生。
医療者が互いの得手・不得手を認識し、適切なタイミングで専門家に紹介できるような医師(医療機関)のネットワーク作りも急ぐ必要があると太組先生は訴えます。
社会啓発もとても重要だという。「てんかんは難病中の難病ですが、それに対する施策は十分とはいえません。患者さんはさまざまな場面で困難に直面していますが、症状が重い人ほど声の挙げ方を知らないのです。てんかんという病気に光を当て、病気を広く知ってもらう。てんかんが差別を受けない社会づくりのために議論を続けていくことが大切です」(太組先生)
(この連載はグラクソ・スミスクライン株式会社提供の「News Letter てんかん 第4便」をもとに、QLifePro編集部が編集、一部加筆したものです)