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耳鼻咽喉科医師600人調査(2)アレルギー性鼻炎治療・対策の選択

読了時間:約 4分40秒  2019年04月16日 AM10:00
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アレルギー性鼻炎の治療選択肢が増加した2010年代

2010年代は、花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎の治療選択肢が飛躍的に増加した年代といっても過言ではない。市販薬のラインナップが充実したことに加え、臨床では舌下免疫療法や第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤が登場し、治療選択肢の幅が広がった。

花粉の飛散シーズンに特に忙しくなる耳鼻咽喉科医は、自身のアレルギー性疾患についてどのように対処しているのだろうか。また、その家族を含めたアレルギー性疾患罹患状況、治療選択の実態はどうなっているのか。株式会社QLifeはエムスリー株式会社と共同で、全国の耳鼻咽喉科標榜医師600人に対するインターネットアンケート調査を実施し、回答者自身及び回答者の家族の年齢、性別、居住地、アレルギー性疾患罹患状況、治療実態などに関する聞き取りを行った。同調査の結果を報告する本シリーズ第2回目では、耳鼻咽喉科医自身と家族の治療選択や抗原回避対策の実施状況についてまとめた。

今回の調査では、集計にあたり、性別×年代×エリアの構成比を実態に近づけるため、「総務省平成27年国勢調査」の人口構成比に補正する形でウェイトバック集計を実施。回答医師のみに聴取した項目(診療実態)に関しては、 「厚生労働省平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」の人口構成比に補正する形でウェイトバックエリア(8区分)別にウェイトバック集計を実施した。

花粉症、通年性アレルギー性鼻炎ともに治療は「第2世代抗ヒスタミン薬」「鼻噴霧用ステロイド薬」が中心

花粉症治療において、医師から最も多く選ばれていた治療選択肢は、「鼻噴霧用ステロイド薬」(68.7%)、次いで「第2世代抗ヒスタミン薬」(68.1%)、「点眼薬(抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、ステロイド薬)」(31.3%)だった。「舌下免疫療法」は3.5%だった。通年性アレルギー性鼻炎治療では「第2世代抗ヒスタミン薬」が最も多く選ばれており(57.8%)、「鼻噴霧用ステロイド薬」(51.3%)、「抗ロイコトリエン薬」(12.2%)と続いた。「舌下免疫療法」は3.0%だった。花粉症、通年性アレルギー性鼻炎ともに、第2世代抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬が多く使用されている状況が浮かび上がってきた。

医師が選択している治療薬・治療法


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次に、治療薬・治療法選択を重症度別にまとめたところ、花粉症において、第2世代抗ヒスタミン薬は「中等症かつくしゃみ・鼻漏型」で最も多く使用されており79.0%だった。鼻噴霧用ステロイド薬を最も多く使っていたのは「重症・最重症かつ鼻閉・充全型」(73.6%)で、点眼薬は「重症・最重症かつ鼻閉・充全型」での使用が最も多かった(33.4%)。抗ロイコトリエン薬は「重症・最重症かつ鼻閉・充全型」での使用が最も多く(27.5%)、第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤は「重症・最重症かつ鼻閉・充全型」が最多で17.8%だった。舌下免疫療法の使用が最も多かったのは「中等症かつ鼻閉・充全型」(6.1%)だった。

花粉症重症度別 選択している治療薬・治療法


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通年性アレルギー性鼻炎では、第2世代抗ヒスタミン薬は「重症・最重症かつ鼻閉・充全型」で最も多く使用されていた(69.6%)。鼻噴霧用ステロイド薬を最も多く使っていたのは「重症・最重症かつ鼻閉・充全型」(64.1%)で、点眼薬は「重症・最重症かつ鼻閉・充全型」で最も多く使用されていた(23.4%)。抗ロイコトリエン薬は「重症・最重症かつ鼻閉・充全型」での使用が最多となり(45.6%)、第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤は「重症・最重症かつくしゃみ・鼻漏型」で最も多く使用されていた(15.5%)。舌下免疫療法の使用が最も多かったのは「重症・最重症かつくしゃみ・鼻漏型」(4.6%)だった。

通年性アレルギー性鼻炎重症度別 選択している治療薬・治療法


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医師が実施している花粉症対策、「マスク」「空気清浄機」「室内のこまめな清掃」

耳鼻咽喉科医が実施中もしくは実施したいと考える花粉症対策では、花粉症に罹患している医師の多くが「マスク」の着用と回答した(57.4%)。次いで「空気清浄機」(36.0%)、「室内のこまめな清掃」(22.9%)、「洗濯物の室内干し」(22.8%)となった。花粉症に罹患していない医師においても、対策としてマスクを着用しているとの回答が多く(64.5%)、「空気清浄機」(48.9%)、「洗濯物の室内干し」(33.0%)、「室内のこまめな清掃」(29.0%)と続いた。両者とも、上位4つに同じ対策が挙げられていることから、これらの対策は医師にとって、室内環境で花粉を回避・除去するうえで基本行動となっていることがみてとれる。

医師が実施中/実施したいと考える花粉症対策


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通年性アレルギー性鼻炎に罹患している医師は、「室内のこまめな清掃」(31.0%)を最も多く挙げた。花粉症に罹患している医師では最多だった「マスク」は次点で(28.4%)、「空気清浄機」(28.2%)、「こまめに布団を干す、もしくは布団乾燥機をかける」(17.9%)がそれに続いた。通年性アレルギー性鼻炎に罹患していない医師でも、「室内のこまめな清掃」(54.3%)が最も多く、「空気清浄機」(54.2%)、「こまめに布団を干す、もしくは布団乾燥機をかける」(40.2%)、「防ダニ布団カバーを使う」(34.0%)であった。通年性アレルギー性鼻炎に罹患している医師も罹患していない医師も、マスク以外の対策としては「室内のこまめな清掃」、「空気清浄機」、「こまめに布団を干す、もしくは布団乾燥機をかける」が上位に挙がっており、こちらも室内環境における対策の基本となっているようだ。

抗原回避は、「鼻アレルギー診療ガイドライン」1)において基本的な対策のひとつとして推奨されている。花粉は完全な抗原回避が難しくはあるが、花粉症患者にとっては薬物治療と並んで、屋外・室内において抗原曝露を避ける対策をとることが大切だといえる。

医師が実施中/実施したいと考える通年性アレルギー性鼻炎対策


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日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会専門医・代議員、ゆたクリニック院長の湯田厚司氏は、治療選択に関する結果について「ガイドラインに準じた治療が行われており、非常に良い傾向です。また、以前よりも鼻噴霧用ステロイド薬の利用率が高まっています。国際的なガイドラインでも推奨されている第2世代抗ヒスタミン薬が多く使用されているという結果は、大事なことだと考えます」とし、「重症度と病型により上手く薬剤の使い分けができており、薬剤の特徴を捉えた適切な使用だと思います」とコメントした。また、抗原回避対策については「花粉症対策では、“洗濯物の室内干し”に代表される、繊維・衣類への対策にもう少し気を配って欲しいところです」としている。

本調査の概要は以下の通り。

  1. 調査対象:耳鼻咽喉科標榜医師
  2. 有効回答数:600人
  3. 調査方法:インターネット調査
  4. 調査時期:2018/10/4~2018/11/1

また、詳細な調査報告書はhttp://www.qlife.co.jp/news/181226qlife_research.pdfからダウンロードできる。(QLifePro編集部)

参考文献
  1. 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-2016年版(改訂第8版)第5章 治療.(株)ライフ・サイエンス, 35-82, 2015