通院先を変更する背景に、医師や治療薬への期待がある?
国民の約4割が罹患しており、近年増加傾向にあるアレルギー性鼻炎1)。処方薬、市販薬も豊富で、2014年には舌下免疫療法も登場。いまや、さまざまな治療選択肢から、患者一人ひとりにあった治療方法を選択できる時代だ。それでは、アレルギー性鼻炎患者本人は、治療に関してどのように考えて、クリニックの受診や市販薬の購入などの行動を起こしているのだろうか。
そこで今回QLifeは、アレルギー性鼻炎で医療機関に通院中の患者2,702人を対象に、治療についての考え方に関する大規模調査を実施した。その結果から垣間見える患者のホンネについて、シリーズで紹介する。第2回目は、開業医を悩ませる「ドクターショッピング」に焦点をあてる。繰り返されるドクターショッピングの背景には、何があるのだろうか。
1)鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-2016年版(改訂第8版).(株)ライフ・サイエンス, 8-13, 2015
季節性アレルギー性鼻炎患者の半数以上が通院先を変更
一年のうち、特定の期間にだけ症状が出る、季節性アレルギー性鼻炎患者。症状が出始めたとき、季節性の患者が受診するのは、去年も通ったクリニックなのか、それとも初めて行くクリニックなのだろうか。調査によると、アレルギー性鼻炎患者全体の56.5%が、現在通っているクリニックの前に通っていた、別の耳鼻科や内科から通院先を変更していた。季節性の患者だけに絞ってみると、通院先を変更したのは55.3%。これは全体の結果とほぼ同じ割合だ。季節性アレルギー性鼻炎患者でも、半数以上が通院先を変更していることが明らかになった。
処方薬をもらってもなお、市販薬を購入する患者たち
通院先を変更する患者は、何を期待して新たなクリニックの門を叩くのだろうか。その理由を探るべく、本調査では花粉症シーズン(2~4月)に処方薬を服用したと回答した患者における、市販薬の使用状況を分析した。その結果、クリニックに通い処方薬を服用していた患者のうち、4.9~7.1%が市販薬も服用。少数派ではあるものの、処方薬服用に関わらず、一定の割合で市販薬を併用する患者が存在する実態が浮かび上がってきた。2008年の大規模調査でも、最初に処方された治療薬に対して65%の患者が不満を抱いていたと報告されているが2)、本調査の結果からも、処方された薬だけでは治療効果に満足できないという患者のホンネが透けて見えはしないだろうか。
2)今野昭義ほか:Prog Med. 28(9):2285-2296, 2008
なお、季節性患者が処方薬を選ぶ理由は、「良く効く薬がほしい」(72.2%)が最も多く、「安全に治したい」(70.6%)、「早く効く薬がほしい」(69.4%)と続いた。一方、市販薬を選ぶ理由では、「手間をかけずに治したい」(42.4%)が最多と頷ける結果に。次いで、「早く効く薬がほしい」(42.0%)と「安全に治したい」(42.0%)が並ぶという結果だった。
患者が治療薬に対して抱く期待を把握したうえで薬剤選択を行うことが、ドクターショッピングに終止符を打つうえでも、有効打となるかもしれない。
本調査の概要は以下の通り。
- 調査対象:アレルギー性鼻炎で医療機関に通院している患者2,702人
- 有効回収数:2,702人
- 調査方法:通院する医療機関を通して、患者本人に案内したインターネット調査
- 調査時期:2017年7月15日~8月31日
また、詳細な調査報告書はhttp://www.qlife.co.jp/news/171031qlife_research.pdfからダウンロードできる。(QLifePro編集部)