QLifeは、兵庫県立尼崎総合医療センター 循環器内科科長の佐藤幸人先生監修のもと、心不全専門医40人、循環器専門医80人、非専門医80人の計200人の医師を対象に、慢性心不全治療における栄養管理の実態調査を実施。慢性心不全治療における栄養管理の重要性を認識している医師が専門・非専門に関わらず増えていることが分かった一方、専門医と非専門医で意識にギャップが見られる部分もあった。調査は2017年9月10日~12日にインターネット調査で行われた。
外来慢性心不全患者に対するエネルギー・栄養素等を「制限する」栄養療法と「付加する」栄養療法について、成人(~65歳未満)/高齢者(65歳以上)に対してどのように行っていますか。
成人患者では、39.0%が「制限する」栄養療法を重視すると回答、「付加する」栄養療法を重視するとした回答は13.5%だった。高齢者患者では、13.0%が「制限する」栄養療法を重視すると回答、「付加する」栄養療法を重視するとした回答は44.5%だった。
2016年に日本心不全学会から「高齢心不全患者の治療に関するステートメント」が公表されたこともあり、成人は「主に制限」し、高齢者は「主に付加」する栄養療法を重視するなど栄養管理の重要性の認識は広がっている。
「1か月あたりの外来の慢性心不全患者数」を教えてください。またそのうち、「低栄養ないし低栄養のリスクが高いと思われる患者数」、「栄養剤を用いた栄養指導を行っている患者数」を教えてください。
1か月あたりの外来の慢性心不全患者のうち、「低栄養ないし低栄養のリスクが高いと思われる患者数」の割合は28.5%、「栄養剤を用いた栄養指導を行っている患者数」の割合は8.9%だった。また、「低栄養ないし低栄養のリスクが高いと思われる患者数」(2,653人)のうち、「栄養剤を用いた栄養指導を行っている患者数」(829人)の割合は31.2%だった。
外来の慢性心不全患者に対し、新規で経腸栄養剤の経口投与を行うきっかけは何ですか?
新規で経腸栄養剤の経口投与を行うきっかけについて、全体では「医師による判断」が最も多く34.0%、以下「患者本人や家族の訴え」29.5%、「メディカルスタッフによる助言」16.0%と続いた。
心不全専門医では「医師による判断」が最も多く47.5%、循環器専門医では「医師による判断」が最も多く41.3%、非専門医では「患者本人や家族の訴え」が最も多く40.0%だった。
早めの栄養介入で心臓悪液質を防ぐべき
今回の調査結果について、調査監修した兵庫県立尼崎総合医療センター 循環器内科科長 佐藤幸人先生は、「慢性心不全治療における栄養管理の重要性を認識している医師が専門・非専門に関わらず増えている。“入院から在宅へ”の大きな流れのなか、プライマリ医には、専門医と同等の判断が求められている」とコメント。そのうえで、心臓悪液質を防ぐためには、「もう1ステップ早い、栄養介入判断が必要」と語る。「 “食べないということを聞くまではわからないことが多い”という医師回答にもあるように、患者や家族の訴えや検査結果から初めて栄養介入を検討するのではなく、食事摂取量が減り始めた時点や、低栄養を疑い検査を行う判断をした時点で、既に“低栄養である”とみなして早めの栄養介入を実施し、心臓悪液質を防ぐべきと考えます。医師以外のメディカルスタッフの関与も必要です」と語った。
外来慢性心不全患者への栄養介入実態調査 結果報告書