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「医師から医師への疑義照会」実態…他医の処方が明らかにおかしい時の対処とは?

読了時間:約 4分44秒  2015年11月25日 PM04:00
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ポリファーマシー(多剤処方)の原因の一つに、「医師は、他医の処方に口を出しにくい」文化があることが指摘される。特に患者が高齢になると、複数の病態や疾患を抱えていることが多いため、別々の処方によって薬が次々と追加されやすい。疑義照会といえば通常は「薬剤師の仕事」であり、確かにかかりつけ薬局があれば、成分の重複や相互作用リスクに「気がつく」ところまでは役割を果たせるかもしれないが、それを実際に交通整理したり、ときにはポリファーマシー弊害を防ぐために積極的に薬を切る検討をするのは、かかりつけ医でなければ難しい。

そのため総合的な診療をする診療所の医師には、個別最適を全体最適の目で補正する役割が期待されるが、実態としては、全体最適どころか「明らかにおかしい処方」の場合でも、なかなか他院の処方にモノを申すのは難しいようだ。QLifeはこうした「医師による疑義照会」の現状を確認するため、診療所医師250人に対してインターネット調査を行った。

おりしも平成27年11月4日に、日本老年医学会と厚労省研究班が共同で、高齢患者向け薬物療法のガイドラインを改訂したばかりである。そのなかで「高齢者の処方適正化スクリーニングガイド」としての『特に慎重な投与を要する薬物』の具体名が呈示された。この一覧表は当初『ストップ』リストという名前になる予定だったが強い反対意見があって廃案になった。臨床現場でも、専門の薬をストップできるほどの知識を1人のかかりつけ医に求めることは難しいため、医師同士のコミュニケーションの促進が望まれる。

■ 実施概要
調査対象: 診療所の理事長・院長・副院長・勤務医
有効回収数:250人
調査方法:インターネット調査
調査時期:2015/8/11 ~2015/8/18

あなたが、他院の処方内容を見て、「明らかにおかしい」と思ったことはありますか。

74%の医師は、他院の処方内容を見て、「明らかにおかしい」と思ったことが「ある」と回答した。
年代別で見たところ、年代が上がるにしたがって、「ある」と回答した割合が高くなった。

あなたが、他院の処方内容を見て「明らかにおかしい」と思った際、どの程度、処方医に対して疑義照会・意見・相談していますか。

76%の医師が、他院の処方内容を見て「明らかにおかしい」と思っても、処方医に対して疑義照会・意見・相談は「全くしない」ことがわかった。
注:後出するように、直接はしなくても患者を介して間接的に行う医師はいる。

年代別で見たところ、 50代の医師が、疑義照会・意見・相談を「全くしない」と回答した割合がもっとも高く、8割を占めた。

他院の処方医に対して疑義照会・意見・相談しない時があるとのことですが、その理由を教えてください。

他院の処方医に対して疑義照会・意見・相談しない時がある理由を質問した。以下に代表的なコメントを挙げた。

他院を尊重
  • 他院の医師に失礼だから。よほどの事がない限り意見はしません。(勤務医/50代/静岡県)
  • 「私には理解できない、専門家ならではの使い方」かもしれないから。(勤務医/50代/愛知県)
  • それぞれの先生のポリシーが反映されていることであり、その処方が禁忌でない限りは、尊重すべき。(副院長(常勤)/50代/福島県)
面倒・多忙
  • 各医師には処方権があり、変更してもらうには膨大な努力が必要になるから。(理事長・院長/60代/愛知県)
  • 面倒なので、こちらで患者さんに説明する。(理事長・院長/60代/広島県)
  • 診療が忙しくて、かまっていられないか、忘れてしまっている。(理事長・院長/40代/愛知県)
トラブル回避
  • 田舎なので関係がこじれると患者紹介先がなくなるから。(理事長・院長/50代/佐賀県)
  • 患者さんに知れると他院と患者さんのトラブルの原因となる可能性があるから。(理事長・院長/50代/京都府)
  • 医療訴訟の原因になりたくない。(勤務医/50代/京都府)
自院で変更すればよい
  • 適切な内服を私が処方しました。(勤務医/50代/栃木県)
  • 他院の処方薬をやめてこちらの処方薬を服用してもらえば特に問題はないと考えるから。(理事長・院長/60代/熊本県)
効果がない
  • 過去に照会した経験があるが、相手に真摯に聞いてもらえなかった。(理事長・院長/60代/愛知県)
  • 言っても変わることは無いから。(理事長・院長/50代/福岡県)
意見しづらい
  • 処方内容がおかしいという照会などを、医者相手にできるはずがない。(理事長・院長/60代/東京都)
  • 相手に気を使うから。(副院長(常勤)/40代/和歌山県)
患者本人に対処してもらう
  • 患者自身に当該医師に対して確認をしていただく。患者の認識が間違っている可能性が否定しえないため。(理事長・院長/40代/東京都)
  • 患者に説明して患者からその医師に相談してもらうという方法を採ることが多い。(勤務医/50代/茨城県)

逆にあなたが、(薬剤師からではなく)他院の医師から、あなたの処方について疑義照会・意見・相談を受けたことはありますか。

22%の医師は、他院の医師から、処方について疑義照会・意見・相談を受けたことが「ある」と回答した。
年代別で見たところ、50代の医師が、処方医に対して疑義照会・意見・相談をしたことが「ある」割合がもっとも高く、4分の1を占めた。