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妊娠・出産、発作時対応、外科手術などてんかんを巡るテーマをわかりやすく~市民公開講座「にいがた神経内科ウィーク」

読了時間:約 3分35秒  2015年07月31日 AM10:30
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第56回日本神経学会学術大会の期間中には、脳卒中、パーキンソン病、頭痛、てんかんといった4つの神経内科疾患をテーマとした市民公開講座「新潟神経内科ウィーク」が新潟日報メディアシップにて開催された。5月23日のテーマは「てんかん」。てんかんと社会生活、てんかん発作の種類と発作時の対応、てんかん外科手術の実際について、3人の専門家がわかりやすく解説し、来場者との間で質疑応答が行われた。

第56回日本神経学会学術大会 市民公開講座「にいがた神経内科ウィーク」
司会・講師:寺島健史氏(新潟大学医歯学総合病院魚沼地域医療教育センター 特任教授)
講師:神一敬氏(東北大学大学院てんかん学分野 准教授)
講師:亀山茂樹氏(西新潟中央病院 名誉院長)

患者の8割は薬でコントロール可能

寺島氏は、「てんかんと社会生活」と題して、てんかんの概要とてんかんに関する疑問をテーマに講演を行った。

てんかんは難病というイメージが強い。しかし寺島氏は「正しい治療を受ければ、8割近くの患者は経口薬で発作をコントロールできる」という。

てんかんに対しては、偏見も未だ根強い。2011年の栃木県鹿沼市のクレーン車事故や京都市の死傷事故を契機として、道路交通法や刑法の一部が改正され厳罰化されたため、「てんかん患者は自動車を運転できない/運転してはならない」という誤ったイメージが先行する結果となってしまった。

しかし、道路交通法は「一定期間発作がなければ運転免許は取得できる」と規定しており、てんかん患者が車を運転できないわけではない。

結婚と出産についても、寺島氏は「てんかんがあるから結婚できないとか妊娠できないという考え方は、今日で改めてもらいたい」と強く訴える。

てんかんの遺伝性については「遺伝するてんかんはごく少数である」と指摘。抗てんかん薬の催奇形性についても「必ずしも全ての抗てんかん薬に当てはまらない」と述べ、主治医と相談して適切な治療薬を選択すれば、安全な妊娠・出産は可能だと説明した。

むしろ寺島氏は「勝手な服薬中断の方が怖い」という。発作は母体や胎児に大きな負担になるからである。

寺島氏は「てんかん患者の大部分は普通の人と変わらぬ生活を送ることができる」と述べ、「てんかんは決して特殊な病気ではない」点を強調した。

発作の時には「落ち着いて対応を」

続いて神氏は、「てんかん発作の実際と対処」をテーマに講演を行った。

てんかん発作には、全身性のけいれんを主体とする発作と意識の減損を主体とする発作がある。全身けいれん時は、周りの危険なものを片付ける、嘔吐時に喉を詰まらせないよう、横向きに寝かせるなどの対応が必要だ。

逆に「舌を噛まないよう布を噛ませる」などの行為は、患者にも介護者にも危険が伴う。神氏は、発作に対して過剰に慌てる必要はないとする。

発作時は積極的に声をかけることが重要となる。また携帯電話・スマートフォンのビデオ機能で発作の様子を撮影すると、後の診断の際に役立つ。

講座では、来場者からの質疑応答も行われた。「発作がいつ起こるかと思うと怖い」という元患者の質問に、神氏は「一定期間にわたって発作がなければ、発作が再発する確率はどんどん減少していく」と回答。「少しずつ自信を持っていってほしい」と励ました。

子供の発熱時のひきつけを心配する質問には、神氏は「熱性けいれんイコールてんかんではない」と指摘。親から子供への遺伝についても「(高血圧や糖尿病などと同様に)ある程度は体質的な要因が遺伝しているが、遺伝だけで子供がてんかんを発症することはないと考えてほしい」と説明した。

顔色が悪い(チアノーゼ)時の対応については、「あわてる必要はない」とし、少し顔色が悪くても慌てて救急車を呼ぶ必要はないと説明した。

ただし、発作が5分以上持続する場合(てんかん重積状態)は、救急車による対応が必要になると注意喚起した。

難治てんかんは早期の手術決断が鍵

続いて登壇した亀山氏は、「手術で治るてんかんもある」と題して、てんかん外科をテーマに講演を行った。

西新潟中央病院は、国内てんかん診療の中心的役割を担う三次施設(てんかんセンター)だ。亀山氏自身も「定位温熱凝固術」の考案者であり、外科治療の第一人者として知られている。

学術的には「2種類以上の適切な抗てんかん薬を2年間続けても発作が止まらないてんかん」を難治てんかんと定義し、外科治療の検討対象となる。

ただし、亀山氏は「小児の場合、MRIに異常がある場合は早期手術も考慮すべき」と指摘した。特に小児の難治てんかんは、知的・身体的な発達遅滞、学習障害などを併発することがあるため、時間は非常に貴重である。亀山氏は、特に小児の難治てんかんは、手術検討を含めて早期にてんかんセンターに紹介するよう訴えた。

会場からは「外科治療をすれば将来的に抗てんかん薬の服用を中断できるか」という質問が寄せられた。これに対して亀山氏は「薬の中断自体は重要なことではない」と述べ、外科治療の最大の目的は「(術後の服薬継続の有無に関わらず)発作が出現しない状態を維持する」ことだと指摘する。

実際、術後もしばらくは発作の再発の抑制を目的に抗てんかん薬を服用する。中には、休薬のタイミングが来ても継続を希望する人が少なくない。

「治療でてんかんの原因を取り除くことができるようになるのか」との質問には、「外科治療の対象になるてんかんの大半は、脳腫瘍など何らかの異常がある」として「そこを取り除けば普通の人と変わらない状態になれる」と述べた。特に小児てんかんの場合は休薬できる可能性が高いとした。

※この記事は株式会社ライフ・サイエンス「MEDICAMENT NEWS」第2199号(2015年6月25日発行)掲載誌面をもとにQLifePro編集部で一部再構成したものです。

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