全国てんかんセンター協議会総会(大会長:前原健寿氏:東京医科歯科大学脳神経外科教授)が2月14日、15日の2日間、東京医科歯科大学内にて開催された。期間中は各地のてんかんセンターからの現状報告、てんかん基礎講座、教育講演など多岐に渡る発表が行われた。
それらの講演の中から、シンポジウム2「てんかんセンターの現状と課題2」の概要を全4回に渡りお伝えする。今回は、国立病院機構長崎医療センターの戸田啓介氏と、国立病院機構静岡てんかん・神経医療センターの久保田英幹氏の講演を紹介する。
2015年2月15日:東京医科しい大学M&Dタワー(東京)
座長:亀山茂樹氏(国立病院機構西新潟中央病院 脳神経外科)
中里信和氏(東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野)
※この記事は株式会社ライフ・サイエンス「MEDICAMENT NEWS」第2193号(2015年4月25日発行)掲載誌面をもとにQLifePro編集部で一部再構成したものです。
アンケートで地域連携の課題を調査
国立病院機構長崎医療センターの戸田啓介氏は、長崎県下の神経系医師を対象としたアンケートの結果から連携の理想と現実について講演した。
同院は、てんかんモニタリングユニットを4床備える当地の基幹病院である。地理的には県中央部に位置する。長崎県下における診療連携体制を詳しく把握するため、戸田氏は、長崎県下の神経系医師(90名)を対象に行われたアンケート結果を解析した。
紹介の必要性を感じる時について聞くと、「手術適応の検討が必要な時」や「発作のコントロールがついていない時」が上位を占めた。一方で、自由回答では、コントロールの定義、薬剤抵抗性てんかんの判断基準など、難治てんかんの定義に関する疑問の声も多かった。中には「患者を紹介できる施設がわからない」の声も認められた。
戸田氏はアンケートの結果から、現在の長崎県下における問題点は、(1)診療を行う場の問題・人の問題(2)診療の質の問題(3)情報交換の場の問題――の3点にあると指摘。解決の道筋として診療ネットワークによる情報提供、基本的な教育的情報の発信と共有、カンファや研究会など医師同士が情報交換できる場の活用などを提唱した。
静岡県下のてんかん診療パスを提案
国立病院機構静岡てんかん・神経医療センターの久保田英幹氏は「静岡におけるてんかん地域連携の試み」と題して、現在進行している当地の連携パス体制整備の現状を報告した。
厚生労働省は2016年度よりてんかんの地域診療連携体制の整備事業を開始する。てんかん診療連携の今後を大きく左右する重要なモデル事業だ。静岡県も本事業への参画を決めている。
静岡てんかん連携パス構想は「1次~3次医療施設を往来する双方性あるいは多方向性パス」と「患者教育」が特徴の連携モデルである。患者の紹介に用いる「診療情報提供書」、患者の個人記録というべき「てんかん診療情報シート」、自己学習資材にあたる「発作ノート」などの資材を活用する。
構想では、専門医や高次施設への紹介時には定型の提供書(依頼)を用いて患者を紹介。紹介を受けた施設は診断結果や治療方針を記載した共通診療情報提供書(返書)、診療情報シート、発作ノートをつけ患者を紹介元に返す。体系的で利用しやすいシステムだ。
久保田氏は、まずはてんかん診療の医療連携について「当面の準備」はできたと述べる。一方で、今後の課題として「てんかんとかかわりのない診療科との連携」、「地域連携」、「災害対策」にも取り組む必要があると述べた。