長時間脳波モニタリングは、休薬して発作を誘発させるので転倒しやすくなる。したがって看護師には安全面での配慮が求められる。また、てんかん医療において服薬指導の役割はきわめて大きいといえる。
患者の安全・安心につながるよう心掛けていることは何か。朝霞台中央総合病院 脳卒中・てんかんセンターでの看護師の役割について看護部の大越妙子氏に、薬剤師の役割について入院患者の服薬指導を担当する、薬剤科の岡田亮介氏に聞いた。
※この記事は株式会社ライフ・サイエンス「MEDICAMENT NEWS」第2185号(2015年2月5日発行)掲載誌面をもとにQLifePro編集部で一部再構成したものです。
心理的サポートはスタッフ全員で対応
――センターでの看護師の役割について。
大越妙子氏(看護部):私は長時間デジタルビデオ脳波モニタリング、あるいは救急脳波モニタリングのために入院される患者さんを担当しています。長時間脳波の場合は1週間が1クールで、5歳のお子さんから高齢の方まで幅広く担当しています。救急の場合は小さなお子さんは少ないですね。
長時間脳波モニタリングの場合は休薬して発作を誘発させるので転倒しやすくなります。したがって安全面での配慮が私たち看護師には求められます。ベッド柵に頭をぶつけないようにとか、室内でもトイレや洗面所への移動には必ず看護師が付き添うようにします。その他の入院としては術後や薬剤調整のケースがありますが、長時間脳波のように1週間にわたる場合はほとんどなく数日程度です。
てんかん患者さんは発作がない時は普通の生活が可能です。ただし、心因性の悩みを抱えている患者さんもいて、それが発作に関係することもあります。そのような患者さんのお話はしっかり傾聴して、心理的サポートが必要な場合には医療スタッフの皆に情報共有し、スタッフ各員がそれぞれに対応できるようにします。発作の兆候は人それぞれですので、入院時にはどのような背景があって発作につながっていくのかを患者さんによく聴き、医師にフィードバックしていきます。
患者さんの発作型はそれぞれ異なりますので、その都度学ばせてもらっています。発作がどのように起こってくるかを正確に知っておかないと、正確な診断・治療に結びつきませんので、注意深く観察し報告しています(表1)。
以前は久保田先生にカンファランスで、発作の具体的な観察方法を教えていただきました。こうして日々の看護業務から得られたデータは、この数年続けて日本てんかん学会で看護部のスタッフから報告を行っています。
◆あわてない
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◆発作後の観察も重要
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◆発作全体を観察
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◆情報収集を忘れない
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※掲載誌面をもとにQLifePro編集部で作成
服薬アドヒアランスの維持への配慮
――センターにおける薬剤師の役割について。
岡田亮介氏(薬剤科):私は入院患者さんの服薬指導を担当しています。てんかん医療においては、服薬アドヒアランスを維持することは非常に大切ですので、飲み忘れないように十分に注意すること、また絶対に自己判断で薬を飲むことを止めないように伝えています。
ポイントは「薬物治療でてんかん発作は十分コントロールできる」ことをしっかり患者さんに理解してもらうことにつきると思います。てんかん医療において服薬指導の役割はきわめて大きいので、患者さんの安心につながるよう心掛けています。ですからベッドサイドでは、なるべく時間をかけて患者さんのお話を聴きます。例えば、飲み忘れがあるようならその原因を聞くとか、他の薬剤を服用している場合も多いので、そちらの副作用のチェックも行っていきます。
副作用の発現は、服用後すぐに発現するものや長期間服用後に出るものなど様々です。早期に発現するような副作用は特に注意深く確認します。退院後に出るような副作用に対しては、「こんな症状が出たらすぐ病院に連絡し医師に相談してください」と注意喚起します。
相互作用については、医師から処方が出た段階で必ずチェックし、飲み合わせのよくない薬剤があれば、すぐ医師に連絡し確認を取ります。
また、当センターでは抗てんかん薬の臨床試験を現在7つ行っており、その管理は薬剤科で行っています。主な業務は温度管理、払い出しの確認などです。