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花粉症治療において、患者が医療に、そして薬に求めているものとは?

読了時間:約 4分5秒  2015年01月22日 AM11:00
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一般財団法人脳神経疾患研究所付属総合南東北病院
アレルギー・頭頸部センター 今野昭義先生

「医療機関を受診する花粉症患者の66%が、治療に何等かの不満を抱えている」(※1)

そうしたことが、一般財団法人脳神経疾患研究所付属総合南東北病院 アレルギー・頭頸部センターの今野昭義先生の調査で明らかになった。全国平均の有病率が26.5%(※2)と報告されている花粉症。その治療には、専門医だけでなく、多くのプライマリケア医も関わっている。しかしながら、患者の3人に2人が何らかの不満を抱えている、とされたこの報告は、専門医だけでなく、全ての医療者が花粉症の治療に対し、改めて正面から向き合わなければならない、といっても過言ではない。そこでQLifeでは、今回の調査を行った今野先生に、あるべき花粉症治療の姿勢について、話をうかがった。

症状に応じた薬剤選択が治療満足度を上げる

「花粉飛散の終了とともに症状が収まってしまう花粉症は、患者さんの多くが多少の症状が残っていても“時期が過ぎれば収まるから”と我慢してしまう。つまり、医療機関での花粉症の治療に不満を抱えながらも“花粉症治療というものはこんなもんだ”と半ばあきらめてしまう患者さんが多いのだと思います」と今野先生。先生の調査でも「どのような症状が残って物足りなさを感じたか」の問いに対し、最も多かったのが「鼻閉」、次いで「目のかゆみ」「鼻汁」の順となった(※3)。また、今野先生は、患者が物足りなさを感じる背景の1つにシーズンを通して同一薬剤かつ単剤で処方されがちであることを指摘する。

「ガイドラインでは症状に合わせて治療薬を組み合わせること、特に症状が悪化した患者さんには単剤ではなく、作用機序の違う薬を組み合わせることが明記されています。患者さんごとに初期はどんな症状が辛いのか、そしてピークはどうか?終息期はどうか?とコミュニケーションをとることで、その時々に必要なお薬は絞られてきて、患者さんの満足度も向上するはずです」(今野先生)

抗ヒスタミン薬への不満と鼻噴霧薬の低いコンプライアンス

花粉症治療における薬物治療の中心にある抗ヒスタミン薬だが、以前、今野先生が行った別の調査(※4)では、第2世代抗ヒスタミン薬に対して、患者の65%が何らかの不満を持っていることも分かっている。「ひとくちに第2世代抗ヒスタミン薬といっても、薬剤のプロファイルはさまざまです。いわゆる“合う”“合わない”がありますので、もし患者さんが不満に感じていたならば、積極的に別の薬を試すべきと思います。もちろん、抗ロイコトリエン薬などの他の薬も同様です」(今野先生)

また、もう一方の薬物治療の中心である鼻噴霧薬も、特に日本人が苦手としている、と今野先生。調査でも、鼻局所用薬を処方された患者の62%が「煩わしい」と回答している。

患者の求めと合致する点で期待される新規配合剤

今回の調査で、患者が医療機関の内服薬の求めることを聞いたところ、「よく効く」が74%と最も多く、次いで「効果が長続きする」70%、「使用後に眠くならない」53%と続き(※6)、患者は「効果があり、持続する」かつ「服用後の眠気が少ない」薬を求めていることが分かった。また、「眠気が無く、効果が強い薬」があれば、今服用している薬に替えて試してみたいと思う患者は8割以上(※7)となった。

そうしたなか、近年、新たな治療選択肢として、フェキソフェナジン塩酸塩と塩酸プソイドエフェドリンの配合剤と舌下免疫療法の2剤が登場した。

「配合剤が登場して1年半が経過しましたが、おしなべて患者さんの満足度は向上しているように思います。即効性と持続性の点はもちろんですが、1剤でくしゃみ、鼻水、鼻閉という花粉症の3大症状に効果があるので、ピーク時に患者さんのQOLを守ることができています。舌下免疫療法は自然寛解が非常に少ない青少年期発症のスギ花粉症患者において、自然経過を変える可能性のある唯一の治療法であり、スギ花粉症治療のベースと考えます。しかし、2~3年の継続治療を必要とします。また、30~40%の患者では、薬を必要としないほどまで改善しますが、残りは症状は改善しても、花粉大量飛散期には何らかの対症薬を必要とします。そのような場合にも、鼻閉が主訴となる患者では、新規配合剤は最善の選択肢の1つといっても良いと思います」

まだ発売されたばかりの配合剤だが、効果や安全性を示すデータが徐々に発表されている。中等症~重症の季節性アレルギー性鼻炎患者784例を対象に行われたプラセボ対照アレルゲン曝露試験では、配合剤の投与後すぐに症状スコアが低下し、45分後にはプラセボより有意に低下(※8)した。また、製薬メーカーが発表した市販直後調査においても、安全性が蓄積されてきている。

花粉症治療において、プライマリケア医に求められているものとは

最後に今野先生に、花粉症治療においてプライマリケア医が心がけるべきことを聞いた。

「花粉症は、一生続く病気ですから、患者さん自身が症状をコントロールできるようになることが一番です。それをアシストするのがドクターの役割だと思います。そのためには、ガイドラインを今一度熟読していただくとともに、患者さんとの密接なコミュニケーションをとることが重要です。“昨年使った薬は満足されましたか?”“何が不満でしたか?”と話をして、それぞれの患者さんに最も合う薬剤を探してみてください。また、多くの先生が陥りがちなのが、初期療法やシーズン当初の症状だけを見て、薬剤を処方し、そのシーズンをその薬剤のみで通してしまうことです。ピーク時にどんな症状が出て、何がつらいのか、先を見据えた薬剤選択を行っていただきたいですね」(今野先生)

今野昭義先生(一般財団法人脳神経疾患研究所付属総合南東北病院 アレルギー・頭頸部センター)

日本アレルギー学会認定専門医・指導医、日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定医、日本がん治療認定医療機構認定暫定指導医、頭頸部がん専門医制度暫定指導医、日本アレルギー学会認定医

※1、3、5、6、7 今野昭義「花粉症患者を対象とした医療機関受診行動と治療満足度調査2013」新薬と臨牀63(7)1192_1207
※2 馬場廣太郎、中江公裕「鼻アレルギーの全国疫学調査2008(1998年との比較)_耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として_」Prog Med.2008;28:2001-2012
※4 今野昭義、久保伸夫「花粉症治療における第2世代ヒスタミン薬の患者満足度と受領意識の向上」Prog Med.2008;28:2285-2296.
※8 Berkowitz RB et al:Clin Ther28(10):1658,2006