2006年以降、わが国でも処方が可能となった新規抗てんかん薬。選択肢が広がり、既存薬では効果が十分でなかった病態にも治癒の機会が増している。
加えて、服薬アドヒアランスの向上も期待できる新規抗てんかん薬について静岡てんかん・神経医療センター 統括診療部長 久保田英幹先生に聞いた。
治療拒否にもつながりかねないQOLの低下
治療の選択肢が広がるきっかけとなった、新規抗てんかん薬だが、一部の薬剤において、以前までは単剤での使用が認められていなかった。
「多くの場合で長期にわたる治療となるてんかんの薬物治療では、薬剤の相互作用や副作用、コスト、服用の煩わしさなどの全ての面で単剤処方のメリットは大きく、引いては患者さんのメリットも大きいと思います。副作用によってQOLが著しく損なわれれば、治療のモチベーションは下がり、服薬アドヒアランスの低下や治療拒否にもつながりかねません」(久保田先生)
最善の治療を模索することが医師の使命
「薬物療法に関してもう一つ大事なことは、発症から半年ないし1年の間の患者さんのモチベーションの高い時期に、効果と副作用のバランスを取りながら、より良い治療の追求を集中的に行うということです」(久保田先生)
その背景にあるのは、薬物治療によりいったん発作が抑制されてしまうと、たとえ副作用が出ていても我慢できるレベルであれば、患者は発作の再発を恐れて薬剤変更を望まなくなる心理がある、とのこと。
「ただ、患者さんは眠気やふらつきなどの副作用は訴えても、“意欲がわかない”“イライラする”といったメンタル面での不調はなかなか口にしてくれません。精神面への影響や体重変化、性欲の減退など患者さんが副作用と結びつけて考えにくいものについては、体系的に尋ねることで、種々の安全性情報を拾い上げることに努めるべきと考えます。治りたいと願う患者さんに、副作用に対して我慢を強いることがないよう、最善の治療を模索することが、治療のあたる医師の使命です」(久保田先生)
(この連載はグラクソ・スミスクライン株式会社提供の「News Letter てんかん 第3便」をもとに、QLifePro編集部が編集、一部加筆したものです)