痛み止めや解熱鎮痛剤として、処方されるケースも多い非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)。それに伴い、NSAIDs潰瘍の症例も増加しており、厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル(*1)」でも最初の項目に挙げられるほどとなっている。
まれに無症候性で突然吐血し、救急搬送されるケースもあるNSAIDs潰瘍。そのリスクを減らすためにプライマリケアに求められるアプローチについて、消化性潰瘍のエキスパートでもある、筑波大学附属病院光学医療診療部長の溝上裕士先生にお話をうかがった。
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予防効果が不十分な「NSAIDs+防御因子増強剤」の処方
NSAIDs潰瘍は、服用初期、特に最初の1週間が高率とされている(*2)ほか、3か月以上服用している関節リウマチの患者に対して行った上部消化管内視鏡検査で15.5%に胃潰瘍が発見されたとの報告(*3)もある。
「65才以上の高齢、消化性潰瘍の既往、抗凝固薬や抗血小板薬の併用、ステロイド薬の併用、高用量または複数のNSAIDsの併用がリスクファクターとなります」(溝上先生)
NSAIDsを処方する際に防御因子増強剤を併せて処方するケースも多く見られるが、予防効果は不十分である。
「しかしながら、NSAIDs+防御因子増強剤の組み合わせに慣れていることもあり、潰瘍発生のリスクを考慮せず、画一的な “無意識のDO処方”が多くのケースで見られています」と溝上先生。
日々の診察時の問診でNSAIDs潰瘍を未然に防ぐ
溝上先生は「例え使い慣れたNSAIDsでも、問診を通して患者の変化を見逃さない姿勢が必要」と語る。胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐き気、胃が痛い、空腹時にみぞおちが痛いなどの粘膜の荒れを示唆する症状はないか、便が黒くなる、吐血などの出血を示唆する症状はないか、を問診で聞くとともに、患者に対して、その症状が起きたときにはすぐに医師へ連絡をするよう伝えることも重要だ。
保険が適用され、ガイドラインが推奨する2つの予防法
医師による問診でのチェック、薬局による薬歴・既往歴のチェックをもってしても、避けようがないリスクがある。「それは患者自身によるOTC医薬品の購入です」と溝上先生。「NSAIDsのOTC医薬品の多くが広告メッセージなどで“医療用成分と同じ”ことをうたっていますが、実際の販売現場で、処方薬と同じ注意喚起が行えていないケースもあると思います」
2009年版「消化性潰瘍診療ガイドライン(*4)」では、NSAIDsの投与継続が必要とされる患者に対して、NSAIDs潰瘍の予防策として「PPIの処方」「COX-2選択的阻害薬の処方」の2つが挙げられている。「痛みを訴える患者の治療という観点からも、さらにNSAIDs潰瘍のリスクを減らすという観点からも、NSAIDsを処方するケースの多いプライマリケアの先生にはこれらの予防策を行っていただきたいです」(溝上先生)
*1)重篤副作用対応疾患別対応マニュアル(http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1g01.pdf)
*2)Lewis SC,Lnagman MJS,Joan-Ramon Laporte. et al. Dose-response relationships between individual nonaspirin nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NANSAIDs) and serious upper gastrointestinal bleeding : meta-analysis based on individual patients date .Br J Clin Pharmacol 54:320-326 (2002)
*3)塩川優一他:非ステロイド性抗炎症剤による上部消化管傷害に関する疫学調査、リウマチ31:96-111(1991)
*4)消化性潰瘍診療ガイドライン(http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/pu/peptic-ulcer_4.pdf)
溝上裕士先生(筑波大学附属病院 光学医療診療部長)
1981年東京医科大学卒業、同年、兵庫医科大学第4内科入局。1991年国立加古川病院内科医長。 2007東京医科大学第5内科准教授。2011年筑波大学附属病院光学医療診療部長、病院教授。
(提供:ファイザー株式会社)