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抗VEGF治療薬の登場で飛躍的に進化した加齢黄斑変性治療

読了時間:約 2分18秒  2013年12月25日 AM10:30
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 加齢黄斑変性(AMD)は近年、急増している眼病だ。網膜の中心にある錐体視細胞が集まった黄斑の下の脈絡膜に新生血管が発生する疾患で、その新生血管から出血したり滲出液が漏れ、放置すると視覚障害が起きたり、中には失明に至る場合もある。AMDには大きく分けて萎縮型と滲出型の2つの種類があり、日本人に多いのは滲出型(wet AMD)だ。患者数は、50歳以上の約1.2%(80人に1人)で、視覚障害者手帳の交付原因疾患の第4位となっている。加齢を主なファクターとするだけに、今後ますます深刻化することは必至といえる。そこで、この加齢黄斑変性治療の最新情報について、川崎医科大学眼科学教室の水川憲一先生に話を伺った。

どうかな?と思ったら、すぐに大学病院などの専門施設へ紹介を

光干渉断層計(OCT) AMDの症状は、ものが歪んで見える「変視症」と、中心の視野が欠ける「中心暗点」、それらに伴う「視力低下」です。しかし片眼がAMDになっても、両眼で生活していると意外に気づかず発見が遅れるケースが多いので、私は「日頃から片眼でも見る習慣をつけてください」と患者さんにお話ししています。AMDは根治する疾患ではありませんが、早期に治療を開始することで視力維持がしやすい傾向にあります。眼科における診断はまず「眼底検査」で網膜血管を見ますが、これだけで判断は難しいでしょう。「光干渉断層計(OCT)」を備えたクリニックなら少しの滲出や新生血管も発見できるものの「中心性漿液性脈絡網膜症」との区別がつきにくく、経過観察する間に病状が進行する可能性が否めません。
 AMDは緑内障などと違い、約1年単位で視力が大きく低下します。私が講演などで開業医の先生方にお願いしているのは「どうかな?と思ったら、すぐに大学病院などの専門施設へ紹介してほしい」ということ。たとえ間違っていても構いません。AMDのほとんどはフルオレサイトとインドシアニングリーンの「2種類の色素を用いた蛍光眼底造影」で診断がつきますので、この設備を持っている病院へいかに早く患者さんを行かせるか…が、その後の治療効果を決めるのです。

新薬の登場で選択肢が増えている抗VEGF薬治療

 AMDのうちwet AMDの治療はここ数年で大きく変化を遂げています。wet AMDと診断されたら、治療の選択肢は大きく2つです。1つは「光線力学的療法(PDT)」。弱いレーザーによって新生血管を閉塞させる方法です。もう1つが「抗VEGF薬治療」。新生血管を増殖させるVEGFの働きを抑える薬剤で、眼球に直接注射します。抗VEGF治療薬は現在3種類。最初の薬剤が登場したのが2008年で、2012年にも新たに1剤が認可されました。医療現場におけるwet AMD治療は、ここ数年で飛躍的に進化していますね。医師にとって“手の内が多い”ことはタキフィラキシー対策にも有効であり、薬剤の種類が増えるのは大歓迎です。
 ただ「抗VEGF薬治療」における問題が患者さんのストレス。“目に注射をする”という恐怖をいかに和らげるか…そのためのコミュニケーションが今後の課題かもしれません。例えば、治療計画を明確にして不安を減らすこと。「年間に何回、通院すればいいのか」「次回の注射日はいつか」がわかっているだけでも、患者さんは心の準備ができます。そして何よりAMDは発症すると治療に終わりがないことを、理解していただくことも必要です。「一生、目が見える生活を送りましょうね」と、私は折にふれて言うようにしています。

水川憲一先生(川崎医科大学眼科学教室講師)

水川憲一先生

1993年川崎医科大学卒業、川崎医科大学眼科学教室入局。1995年JA山口厚生連小郡第一総合病院眼科医師。1996年川崎医科大学眼科学教室助教。2000年医療法人明世社白井病院副院長。2007年より川崎医科大学眼科学教室講師