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日本人の適正用量を示せたリバーロキサバン
抗血栓薬の領域では、日本人と欧米人でPharmacodynamicsが異なることは定説になっています。ワルファリンにしても、実際の医療現場では、海外と比較してPT‐INRで0.5ほど低くコントロールしています。また、他の抗凝固薬の臨床試験においても、薬剤によっては海外より低い用量が投与されています。そういう意味で、リバーロキサバンが日本で大規模な研究を実施し、日本人の適正用量を示したことは、重要な成果だと思います。添付文書に承認用量としてきちんと記載されていることは、臨床試験に裏付けられた用法・用量だという意味で意義があり、評価できると思います。
低体重や筋肉量の少ない患者さんには注意
新規経口抗凝固薬で重篤な出血がみられたケースの中には、適正使用情報が正確に伝わっていなかったケースもあります。出血のリスク因子としては、高齢と低体重、抗血小板薬との併用などが知られていますが、用量設定の根拠となる腎機能の評価が落とし穴となります。腎機能の基準となるのは、Cockcroft&Gaultの推定式によるCLcr値(mL/min)と推算糸球体濾過量(eGFR, mL/min/1.73m2)で、臨床試験ではCockcroft&Gaultの推定式を用いて腎機能を確認しています。しかし、実際の医療現場では、近年、eGFRの値が多く使用されています。eGFRの算出では標準体表面積が基準となっているため、本来、ボディサイズ当たりの投与量、つまりはmg/kgの投与量設定を行わないと、実際の腎機能が投与量に反映されません。低体重や体重が重い患者さんでは、Cockcroft&GaultによるCLcrとeGFRの値に乖離が生じてしまいます。そのため、寝たきりの高齢者や筋萎縮症などの、低体重や筋肉量の少ない患者さんには、eGFRの値をそのまま使えないので注意が必要です。
臨床試験では、リスクの高い患者さんは除外されています。実臨床では、承認の根拠となった臨床試験のデザインや結果を理解した上で、適応する患者さんや投与量を決めることが重要です。それは私たち薬剤師の仕事でもありますし、処方される先生方にも十分意識していただきたいと思っています。
医師・薬剤師・患者で薬を育てる
本来はよい薬なのに、適正使用や有害事象の管理が適切でなかったために、いつの間にか医療現場から消えてしまった例も多いと思います。長い臨床試験を経て世に出た薬は、医師・薬剤師だけでなく、患者さんにも適正に使っていただき、育てていかなければならないのです。有効性のほかにも、安全性情報など、さまざまなエビデンスを収集することで育薬し、患者さんにその恩恵を還元しなくてはなりません。そのためにも薬剤師の果たすべき役割は重要と考えています。
※お話の内容は2012年11月時点のものです
木村利美先生(東京女子医科大学病院 薬剤部部長)
1986年東京薬科大学薬学部卒。北里大学病院薬剤部を経て、1993年に新医療技術導入海外研修University of Michigan Hospitals、2000年医学博士取得。2006年東京女子医科大学病院薬剤部 副部長。2009年フィラデルフィア小児病院クリニカルファーマコロジー部留学 客員教授。2010年から東京女子医科大学病院 薬剤部部長。