恐れ入りますが、本コンテンツの閲覧・利用は医師限定となっております。
医師であるにも関わらず本メッセージが表示されている場合は、プロフィール情報が間違っている可能性があります。
QLife MEMBERマイページにログイン後「医療者情報>医療資格」をご確認下さい。
QLife MEMBERマイページ
心房細動患者は脳梗塞予備軍
心房細動自体は一般的に予後の悪い疾患ではなく、ほとんど支障なく生活している患者さんも多くいますが、心房細動患者は脳梗塞の発症率が非心房細動患者の5倍程度も高いことが過去の研究から報告されています。心房細動患者の脳梗塞の年間発症率は約5%、そして一生涯のうちに脳梗塞を発症する確率は約35%であるという報告もあり、心房細動の患者さんは脳梗塞予備群と言えるでしょう。
日本の心房細動患者は、100万人超えに
心房細動は加齢との関連が大きいため、日本の高齢化に伴って、患者数は増加しています。現在、日本における心房細動の有病率は、全人口当たり0.6~0.8%、患者数は80~90万人と推計されています。今後10年程度で、その数は100万人を超えると予測されているのです。
また、現在では、高血圧・糖尿病などを背景とした非弁膜症性心房細動が大半を占めるようになり、リウマチ性僧帽弁膜症を背景とした心房細動は少数です。ですので、今や心房細動は生活習慣病の一種だと言っても過言ではないと思います。
心房細動を見逃さないためのポイント
心房細動は、発症していても自覚症状のある患者さんは決して多いとは言えません。今回のFAF(伏見心房細動患者登録研究/FUSHIMI AF REGISTRY)では約半数が無症状でした。無症状の場合、心房細動は健康診断やほかの病気の検査でたまたま見つかることになります。有症候性の場合、動悸が最も多いのですが、ほかにも倦怠感、息切れ、胸の痛み、めまいなど、その症状はさまざまです。特異的ではないため、症状から心房細動の存在を疑って、心電図をとることで初めて確定診断ができます。
生活習慣病を有する患者は要注意
心房細動は加齢との関連が大きく、多くの患者さんが高血圧症や糖尿病生活などの習慣病を合併していることが特徴です。こうした生活習慣病がある場合、血管内皮の細胞が傷んで動脈硬化が起きますが、それと同じことが心臓でも起こっていると考えることができます。つまり、このような生活習慣病を有する患者さんでは、心臓内でも細胞の“傷み”が早く、心房細動が起こりやすい状況だと考えられます。若くて正常な心臓であれば、期外収縮が発生しても長続きしませんが、こういった心臓の細胞の傷みがあると、電気の伝わりが途切れたり時間がかかったり、色々なルートができてしまうことで、心房内をでたらめに電気が旋回するようになってしまいます。また、このような心臓の細胞の傷みは、生活習慣病を改善することが最も大切です。
確定診断のための検査
心房細動を発見するには、心電図をとるしか方法がありません。持続性心房細動や永続性心房細動は心電図を1回とれば発見できますが、発作性心房細動の場合は、発作が起きている時に検査を行わなければ検出できません。言わば“現行犯”でつかまえるしかないわけです。24時間ホルター心電計や携帯型心電計を使用することで検出率を高めることもできますが、たまにしか出ない発作性心房細動を捕捉するのは、容易ではなく、この方法にも限界があります。疑いを感じたら、諦めずに繰り返し心電図をとることが確定診断のポイントと言えると思います。
また、心房細動は喫煙、飲酒、ストレスとの関連も指摘されており、大量の飲酒後や身体的・精神的ストレスの負荷後に、発症しやすいと考えられます。手術で外科系の診療科に入院している際に、手術中、あるいはその前後で初めて心房細動が発見され、循環器内科に紹介されてくることもしばしばあります。
また、有症候性の患者さんでは、動悸を感じた時に自分の脈をとってもらうことも役立つケースがあります。自動血圧計を装着した時に、脈拍音が乱れていることで心房細動に気づかれた患者さんもおられます。
プライマリケア医と専門医の連携が理想
心房細動の患者さんの多くは、普通に日常生活を送っておられる方が大半です。しかしながら、心房細動を発症後1年以内は脳梗塞や心不全を起こしやすく、最も危険な時期でもありますので、心房細動と初めて診断された患者さん、または疑いのある患者さんがいた場合は、一度、循環器専門医に相談していただきたいと思います。心房細動の背景因子を見極めて、早めに治療方針の決定や塞栓症のリスク評価などを行う必要があるからです。専門医がリスクを評価し、治療や管理の方針が決まって方向性がついたら、近隣のプライマリケア医へ患者さんを戻して治療を続ける、このような連携が理想的だと思います。
※お話の内容は2012年7月時点のものです
赤尾昌治先生(国立病院機構京都医療センター循環器科 医長・診療科長)
1991年京都大学医学部卒。京都大学病院、静岡市立静岡病院循環器科、京都大学大学院を経て、1999年米国ジョン・ホプキンズ大学循環器内科研究員・客員准教授。2003年京都大学先端領域融合医学研究機構特任助手。2004年京都大学循環器内科助手。2007年京都大学循環器内科助教。2009年から国立病院機構京都医療センター循環器科 医長・診療科長。現在、京都大学臨床教授を兼務。