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一次予防ではモチベーション維持が大事
脳梗塞の一次予防と二次予防では、患者さんの自覚は全く違うと言えます。脳梗塞を経験した患者さんは切実ですから、教育はしやすいし、抗凝固療法のコントロールも良好です。対して、一次予防では、患者さんに切実感がないので教育が難しいのが現状です。
一次予防の患者さんにとっては、痛い!苦しい!と言った症状に対する治療ではないため、治療継続のモチベーションの維持が難しいのです。また、20人くらいの患者さんに対して、ワルファリンと新規経口抗凝固薬の特徴を説明して、どちらかを選ぶか聞いたことがあります。その際、85%の人が「ワルファリンを続ける」と答えています。薬価の問題もあるのでしょうが、モニタリングできることで患者さんは安心感を持ち、治療のモチベーションが維持できるということもあるのだと思います。
新規の経口抗凝固薬は“医者を楽にする薬”ではない
抗凝固療法の服薬にあたっては、十分な指導が必要です。このことは新規経口抗凝固薬でもまったく変わらないし、もしかしたらこれまで以上に重要かもしれません。手間と暇がかかるのが、抗凝固療法なのです。新規経口抗凝固薬では、正しく処方・服用がなされていれば、頭蓋内出血などの大出血はワルファリンに比べて少ないというデータも示されています。ワルファリン使用時と同様に、きめ細かい指導をしつつ使用すれば、ワルファリン以上に良い結果(高い脳梗塞予防効果と低い出血性合併症)が得られると認識すべきでしょう。
皮下出血などが起こると、薬が効きすぎていると思ってしまい、勝手に休薬する患者さんがいます。なので、「皮下出血などの出血性合併症は少ないに越したことはないけれども、皮下出血を避けるために脳梗塞を起こす確率が上がるようなことをしていてはいけない」ということを十分に知ってもらう必要があります。そういう意味でも、患者教育は今後も重要で、新規経口抗凝固薬といえども外来での継続的な教育が不可欠です。つまり、新規経口抗凝固薬は、医者に楽をさせるために開発された薬ではないということですね(笑)。
我々が行っている「ワルファリン教室」には、できるだけ家族にも参加してもらって、患者さんの服薬コンプライアンス維持に協力してもらっています。ですが、最近増えてきている独居老人は、飲み間違いや飲み忘れの可能性があるため、抗凝固療法の導入には慎重にならざるを得ません。ワルファリンの場合はPT‐INRのモニタリングがその状況を把握する上で役に立ちますが、モニタリングをしなくていいという新規経口抗凝固薬はそれがありません。患者さんの理解度や服薬コンプライアンスなどは、具体的な数字になりにくい点であり、これらの条件によっても新旧の薬をうまく使い分ける必要があると思います。
新しい武器の使用法を正しく理解し、使いこなす
脳梗塞を避けるためには、適切な抗凝固療法を継続してもらいたいと思います。心房細動の患者さんで一番回避しなくてはならないのは脳梗塞です。頭蓋内出血は深刻ですが、それ以外の出血は、大体において対処可能で死に至ることまではありません。また、高血圧が続くと、頭蓋内出血や脳梗塞も増加するため、血圧コントロールも重要です。きちんと降圧する必要があります。
心不全がない患者さんでは、洞調律維持治療を試みる場合、自分の使い慣れた抗不整脈薬を1~2種類くらい試します。それでも患者さんのQOL改善が確認できなければ、カテーテル治療の適応などを専門医に相談するということでいいのではないかと思っています。
この数年で新規経口抗凝固薬が次々と使用可能になります。積極的に講演会や勉強会に参加して、新規経口抗凝固薬という新しい武器の使用法を正しく理解し、使いこなせるようになってもらえればと願っています。
※お話の内容は2011年7月時点のものです
奥山裕司先生(大阪大学大学院 循環器内科/先進心血管治療学講座 准教授)
1990年大阪大学医学部卒業。大阪警察病院、米・ロスアンゼルス・シーダスサイナイ医療センター、大阪府立急性期・総合医療センターを経て、2011年より現職。日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会認定総合内科専門医。