「経営に悩む医療人の役に立つならば」・・・軌道に乗るまでの失敗談や苦労、成功の秘訣やノウハウ、そして“次の一手”など、「他では開示されない貴重なノウハウ」を、教えてくれます。
有力院長が次々と登場するので、月に2回はアクセスして、「自院の方向性チェック&考察」の機会にご利用ください。
四ツ池メディカルヴィレッジ
吉井徹哉院長(チーフオフィサー)
「3棟のコテージで1つのクリニック」
斬新な施設づくりと、5つの専門外来で
自由診療の枠を広げる
一番の苦労
開業半年で内部崩壊、スタッフ8人が揃って辞めた
3年前の4月に開業準備を始め、9月に開業したが、なんと同じ年の12月にスタッフ全員が辞めた。200人近くの応募者から40人を面接し、精鋭スタッフを選んだつもりだったのに、半年もしないうちに内部崩壊した。私の側にも勘違いがあった。勤務医時代は、スタッフはキビキビと働き、私の指示にも従ってくれて、それが当たり前のことと思っていたが、いざ自分が直接の雇用者となるとマネジメントの難しさを思い知らされた。失敗のひとつの原因は、全員が「家計に余裕があって、働くことにハングリーさはない女性」ばかりだったこと。上品な人を選んだ結果と言えば聞こえは良いが、当院の特徴すなわち受付・診療・処置が別々の建物になっていることが「スタッフの行動すべてに私の目が届かない」という裏目に出た。空きがあるのに予約電話を勝手に断るなどの事態まで発生し、組織はいったん空中分解した。
そこでゼロから体制作りをやり直すことになったが、結局は縁故採用が中心に落ち着いた。当院は、外観的には革新的な試みが多いぶん、内部の人と人のつながりみたいなものは逆に保守的にしてバランスを取る方が良いのかもしれない。スタッフが別のスタッフを連れてきたり、患者さんを連れてくるようになると、院内に信頼感が醸成され、結果、経営的にも軌道に乗るようになった。
一番の特徴
「ひとつのクリニックなのに建物が分散」は、日本初のスタイルだろう
「まさかここが病院ですか」と患者さんには言われるし、「初期投資額が大変だったでしょう」と業界の人には言われる。一つの敷地に複数のクリニックが集合している形態は最近珍しくないが、一つのクリニックで建物が機能分散している例は、他にないだろう。そして誰もがあっけに取られるのが、当院の環境の良さだ。草木が生い茂り、3棟のコテージを繋げるレンガ畳みの上には、ベンチもあれば彫像やBBQグリルもある。ランドスケイプは別荘地だ。
種明かしをすると、ここは住宅展示場の跡地だった。荒れ果ててはいたが、自然豊かな佇まいや建物群は当時のままで、私は内部改装しただけ。確かに斬新なスタイルやコンセプトだったから、開業資金の借り入れ交渉は難しかったが、信用金庫の理事長に直談判したところ、熱意が伝わったのか、ひとこと「おもしろい。」と決裁された。
当院が変わっているのは、外観だけではない。例えば、私は院長でなく「チーフオフィサー」と名乗っている。「自分は医者だから、○○○しなければ」と考えるよりも、「医師免許を武器にどんなことをしたら、社会の役に立てるか?」と考えている。同様に、うちには看護師もいない。臨床検査技師、放射線技師はいるが、看護師は非常勤1人だけ。旧来の医療界の常識にとらわれず、今後もクリエイティブな発想で他院ができない医療サービスを提供し続けるクリニックでありたい。(※写真提供:四ツ池メディカルヴィレッジ)
一番の秘訣
自由診療をトラブルなく行うには、保険診療での「劇的効果」が肝要
医者は営業マンにはなれない。自由診療を売り込み過ぎると、患者さんはひいてしまう。仮に説得できたとしても、信頼と納得なき自費診療はトラブルの元だ。うちの場合は、まず「保険診療」で患者さんとの信頼関係をつくる。「自由診療のメニュー」は自然と患者さんの目に入っているから、何度か通院するうちに患者さんの側から興味を持って質問してきてくれる。そこから自費診療を始める流れにしている。
保険診療で信頼獲得する秘訣は何かというと、「劇的な効果を見せる」「他院がやらない保険診療をやる」ことだ。例えば、ペインクリニックで痛みから解放してあげたり、アルゴンプラズマで花粉症を大幅軽減してあげる。すると患者さんはおおいに感謝し、「この先生は違う」と思ってくれる。その後は、本音のコミュニケーションが実現する。私は耳鼻咽喉科でのキャリアもあるが、耳や喉を診たり、薬物療法をすることはない。誰がやっても大差がないからだ。
一番の夢
独自の“スマイルエイジング”コンセプトを他地域にも広げる
私が提供する医療サービスは、静岡県という場所にしては特殊なものばかりだが、全体としては「スマイルエイジング」というコンセプトでまとまっている。患者さんには、こう問いかけている。「人生は一人に1回だけ。私達は、その自分の人生を一日一日食べているわけです。毎日食べる一日なら、おいしくしませんか?」。すなわち、年齢とともにおきる身体の変化に寄り添いながら、より良い毎日にしていくための、医療が出来る最高のサービスとは何だろうかと考えているのだ。
3年半が経って、こうした斬新なスタイルがやっと地域にも受けいれられ、経営が軌道に乗ったばかりだが、将来的には第2、第3のメディカルヴィレッジを展開していきたいと思っている。ここで培ったノウハウを整理すれば、他の地域でも転用できるし、似たような遊休地は全国にたくさんある。
診療内容で他の開業医に迷惑をかけないところも良い。今はクリニック間の競争が厳しいから、新規開業すると既存の診療所のシェアを奪うことになってしまう。でも私のスタイルなら、他院がやっていないことばかりなので参入しても他院の食い扶持を奪わない。
とはいえ、まだノウハウ整理にも着手できていないのが現状だ。複数施設展開するには人が必要。早くパートナーになってくれるドクターやビジネスマンが現れないかと思う。そうしたら本当の意味で私は「チーフオフィサー」になれるから。
医院プロフィール
四ツ池メディカルヴィレッジ
浜松市中区幸3丁目5-26
TEL:053-478-7878 FAX:053-478-7801
医院ホームページ:http://yotsuike.me/
浜松駅から車で15分の郊外型住宅地のなかにある。詳しい道案内は、医院ホームページから。
診療科目
ペインクリニック/痛み専門外来、耳鼻科/鼻専門外来、皮膚科/ニキビ外来、お肌外来、オーダーメイド健診、サプリメント外来
理念
スマイルエイジング
院長プロフィール
吉井徹哉(よしい・てつや)院長略歴
1985年 聖マリアンナ医科大学卒業
1985年 聖マリアンナ医科大学 形成外科入局
1986年 聖隷浜松病院形成外科
1987年~2001年 聖隷浜松病院麻酔科
2001年 NTT東日本 関東メディカルセンターペインクリニック科メインスタッフ
2003年 聖隷浜松病院 ペインクリニック科 創設
~2005年 聖隷浜松病院麻酔科 主任医長
2005年 耳鼻咽喉科サージセンター 理事
2007年 サージセンター名古屋 院長
2009年 四ツ池メディカルヴィレッジ 創設
所属学会他
日本臨床麻酔学会員、日本ペインクリニック学会員、日本耳鼻咽喉科学会員、日本抗加齢医学会員、麻酔指導医、ペインクリニック専門医