中高年男性の排尿障害は以前は歳のせいだからと見過ごされがちであったが、最近では市販薬のテレビコマーシャルや食生活の欧米化などにより、排尿障害を訴える男性の増加が予想されている。そこで、40代以上の中高年男性を対象に排尿状態に関するアンケートを実施した。その結果概要を紹介する。調査の詳しいデータについては、ページ最下部にあるリンクからダウンロードが可能。
▼実施概要
(1) 調査対象:40代以上の一般生活者男性
(2) 有効回収数:4123人
(3) 調査方法:インターネット調査
(4) 調査時期:2012/11/9~2012/11/26
40代以上男性の4人に3人が排尿状態に変化を実感。日常生活にも影響を与えている
中高年男性の58.6%が変化について気にしており、4人に3人は年齢とともに排尿状態の変化を実感している。40代においても約60%が変化を実感している。 排尿状態が日常生活に与える影響についても、約20%が「やや影響がある」「大いに影響がある」と回答。年齢を重ねるにつれ排尿状態が日常生活に与える影響が大きくなっている。
70代以上の約半数が排尿に関して不満を感じている。しかしながら、病院受診しているのは20%未満
「現在の尿の状態がこのまま変わらずに続くとしたらどう思いますか」という排尿に関するQOLスコアにおいて、70代以上の約半数が、4点以上に相当する「やや不満」、「いやだ」、「とてもいやだ」の回答であった。また、QOLスコアが4点以上を「不満を感じている」とすると不満を感じていても病院受診経験がある人は20%未満であり、「とてもいやだ」と感じている人でさえ36.2%しか病院を受診していないことが分かった。
生活習慣病を持っている人の約半数は排尿状態に不満を感じている
排尿状態の満足度を示すQOLスコアを年齢別ならびに生活習慣病の有無で調べたところ、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を持っている人では全体の約半数、年齢別では70代以上の6割以上が排尿状態の満足度について「やや不満」「いやだ」「とてもいやだ」と回答していることが分かった。一方、生活習慣病を持っていない人は、全体の3分の1、年齢別では70代以上の約半数が「やや不満」「いやだ」「とてもいやだ」と回答。このように生活習慣病を持っている人は持っていない人に比べて、排尿状態に対する満足度が低いことが分かった。
中高年男性の排尿障害の原因で多い「前立腺肥大症」
国立長寿医療研究センターの吉田正貴先生は中高年の排尿障害について「男性の場合、前立腺肥大症の可能性を念頭において治療する必要がありますが、中には前立腺がんなどが潜んでいる場合もあります。しっかりと問診を行った上で、尿検査やPSAの異常がみられない場合には、α1遮断薬を第一選択に治療を行うことがガイドラインでも推奨されています。もし、α1遮断薬を投与しても状況が変わらないようであれば、泌尿器専門医に一度相談してください」と語る。
今回の調査から、不満を感じていながらも受診意欲が低いことが明らかになったが、吉田先生は「患者さんの中には、排尿障害に困っていながらも“歳のせいだから”などと、治療をあきらめてしてしまい、医師に伝えないケースもよくあります。おしっこのトラブルで患者さんが困っているのであれば、治療をすすめてみて下さい。その際、チェックシート(IPSSスコアやQOLスコア)を活用することをおすすめします。また近年、本調査でもみられたように、生活習慣病と排尿障害の関連性が指摘されています。排尿障害の治療に加えて生活習慣の改善も大切と考えられますので、一般医と泌尿器科医の連携が今後ますます必要になってくると予想されます」とコメントした。
吉田正貴先生(独立行政法人 国立長寿医療研究センター 手術・集中治療部部長)
日本泌尿器科学会(指導医),日本排尿機能学会(理事),日本腎臓学会(指導医),日本老年泌尿器科学会(評議員),日本性機能学会(評議員),日本泌尿器内視鏡学会(評議員)など。
排尿の悩みについてのアンケート結果報告書