医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

Home > 医院経営のノウハウと舞台裏 > 習志野台整形外科内科 宮川一郎院長

習志野台整形外科内科 宮川一郎院長

読了時間:約 4分44秒  2012年01月31日 AM10:52
このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事は医療者のみが閲覧する事ができます。

あなたは医療者ですか?

 「経営に悩む医療人の役に立つならば」・・・軌道に乗るまでの失敗談や苦労、成功の秘訣やノウハウ、そして“次の一手”など、「他では開示されない貴重なノウハウ」を、教えてくれます。
 有力院長が次々と登場するので、月に2回はアクセスして、「自院の方向性チェック&考察」の機会にご利用ください。
習志野台整形外科内科
宮川一郎院長

「継承開業」は、「やりたいことへの時間短縮」だった
今では全国から取材が訪れる
IT推進の最先端医院に

一番の苦労

「継承開業」が上手くいったための、思わぬ落とし穴


継承開業当時の受付

 私は、第三者の紹介でいわゆる「継承開業」した。ゼロから全てを始める「新規開業」と違って、「患者数を徐々に増やして経営を軌道に乗せる」までの時間を大幅に圧縮できる。私は新しいことをどんどん試したいタイプなので、この手法は正解だった。よくある診療圏調査などはせず、むしろ院内のレイアウト・動線にこだわって複数の候補からここを選んだ。
 順調に進んだが意外なところに落とし穴があった。「ゼロから自分の城を作り上げる」プロセスがなかっただけに、仕事環境が「病院→診療所」へと不連続に一気に様変わりした。この環境変化が精神的な苦痛を生みだした。なぜなら、勤務医時代と比べて、システムも空間も設備もスタッフ数も、全てが急にこじんまりとしたからだ。もちろん使えるお金もケタが変わる。直前の病院ではかなり自由にやらせてもらっていたこともあり、羽をもぎとられ、視野や行動範囲が狭くなってしまった気がして・・・閉塞感にさいなまれた。普通は独立すると自由を感じるものだが、その逆になった。結果的には、その時に溜まったエネルギーがiPadと出会ったときに爆発したので良かったとも言えるが、その当時は辛かった。

一番の苦心

スタッフは「総入れ替え」を最初から覚悟した


現在の受付

 「継承開業」で難しいのは、古参スタッフが「前の院長の時は、こうやっていました」と、新院長の言うことを聞かないこと。従業員の総入れ替えもやむなしと考えていた。幸い、私のやり方に賛同をして残ってくれたスタッフが多かったのだが辞めたスタッフもいた。これは、ある程度しかたがないと思う。なぜならスタッフも、「新しい患者層」に合わせなければいけないからだ。来院者には「旧院長の患者さん」だけではなく、新院長の専門領域や診療方針にあう「新しいタイプの患者さん」群が加わる。その人達は、従来のやり方では「対応が良くない」「遅い」などといったクレームになるかもしれない。
 スタッフの意識改革に大きな効果があったのは、受付スペースを改装したこと。従来は、待合室に向かって直角方向に机が配置され、スタッフが横を向いて仕事していたのを、全スタッフが待合室に正対するようにした。また受付の机を切って、パソコンのモニターを下に埋め込んだ。患者さんから見てスタッフの顔が隠れないようにしたのだ。こうした取り組みで、徐々に院内の空気が変わった。

一番の特長

患者さんと医師の双方にメリットの大きな「iPad問診票」


※画像をクリックすると大きな画像になります

 当院はiPadを本格活用している医院として、にわかにメディアにとり上げられるようになった。ただ、ITはあくまで手段であり、私はまず一人の整形外科医として地域医療に全力を尽くしている。患者さんとより良くコラボするためにiPadを使っているに過ぎない。
 具体的な取り組み例は、患者さんへの動画説明(大画面につなげて映し出せる)や、リハビリ時などに患者さんの傍でX線画像を表示するしくみなどがあるが、「患者さんとのコラボ」として最も象徴的なのが、「iPad問診票」だ。
 当院は多い日で300人以上の患者さんが来る。紙の問診票では記入漏れが多くて再確認する時間が必要だったり、記載内容を電子カルテに転記する時間が必要となり、「本来の診療にもっと時間を使いたいのに」と不便を感じていた。ところがiPadを患者さんに渡して画面上で質問に答えてもらえば、患者さんのペースで、かつ漏れなく回答していただける。さらには院内パソコンにもミスなく即時にデータ転送できるから、良いことづくめだ。高齢者などパソコンや機械に触るのが苦手な患者さんには強要していないが、判らない際にはスタッフが手伝うことで、概ね60代までの人は使えている。

一番の秘訣

患者さんタイプ別に「時間の掛け方」にメリハリを

 患者さんのタイプは大きく分けて2種類ある。「悪いところが見つからない」と告げた時に、「ああ良かった」と思う人と、「がっかり」して不安になる人だ。前者のタイプは、それだけ医者を信頼してくれるわけだから有難い話だが、後者のようにご自身の健康に自ら責任を持とうとする患者さんの方が、今後の医療のあるべき姿だろう。
 後者の患者さんは、詳細な説明を求めるし、実際にキチンと説明をすれば満足度が高まり、治療効果も上がるタイプだ。診察室に大画面モニターがあるが、全ての患者さんにこの画面で説明をしているわけではない。前者タイプの患者さんは、珍しがってはくれるが、あまり喜んではもらえない。
 整形外科のように回転率を維持しないと経営が成り立たない科では、限られた時間で全ての患者さんに同じ対応をしていては、全体の満足度は下がってしまう。笑顔で肩を叩いてテキパキ送り出してあげる方が元気になる患者さんか、それともじっくり説明することを喜んでくれる患者さんか、私達は見極めて対応しなければならない。これは初診か2診目かでも違う。

一番の夢

「患者参加型医療」を実践する医院


※画像をクリックすると大きな画像になります

 診療所は、患者さんが「最初に来るところ」であり、かつ「最後に来るところ」でもある。私達は、治癒が見込めない慢性疾患の患者さんには一生付き合っていく覚悟をしなければならない。その前提として、もはや「納得して治療を受けてもらう」時代ではなく、「理解して治療に参加してもらう」時代に変わりつつあると考えている。“チーム医療”といっても、医療者間でコラボするだけでなく、考え方をもっと進めて、患者さん自身がチームの一員になれるようにしなければならない。
 ITを使うことで、患者さんがご自身の健康状態や治療内容をより把握、理解できるようになれば、新しいチーム医療の世界が拓けてくる。当院は、そんな「患者参加型医療」を現場で実践していきたいと思っている。

医院プロフィール

習志野台整形外科内科

千葉県船橋市習志野台2-16-1
TEL:047-461-1221
医院ホームページ:http://www.narashinodai.jp


新京成線 高根木戸駅より徒歩7分。駅からは少し距離があるが、車でのアクセスは抜群。駐車場が最近拡張されて19台収容に。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

内科、整形外科、リハビリテーション科

理念

地域の皆様の笑顔と幸せのために、健康ではつらつとした毎日を過ごせるようサポートし、安心と信頼と与えられる医療機関として地域医療に貢献

院長プロフィール

宮川一郎(みやがわ・いちろう)院長略歴

1993年 帝京大学医学部卒業
1993年 帝京大学医学部付属病院整形外科
1995年 千葉旭中央病院整形外科
1998年 帝京大学医学部付属病院救命救急センター整形外科
2001年 医療法人財団岩井医療財団岩井整形外科内科病院整形外科部長
2007年 習志野台整形外科内科開業、院長就任

所属学会他

日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会脊髄脊椎病認定医、日本脊椎脊髄病学会、日本骨折治療学会

「ドクター」の枠を超えた発想で、メディアからの注目度も高い宮川先生。
「一人何役をやっているんだろう?」と思うくらいの、行動力です。