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ながのクリニック 永野靖彦院長

読了時間:約 6分44秒  2011年08月23日 PM07:40
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永野靖彦院長

病気で一度は諦めた開業だったが
明確なビジョンと他院にはない強みを生かして
順調に集患を伸ばし続ける

一番の苦労

開業場所が決まらず、さらに病気で開業を一度諦める

 開業するにあたり、一番苦労したのは開業場所。納得できる物件がなかなか見つからず、やっと場所が見つかりそう…というタイミングで病気をしてしまった。手術でC型急性肝炎がうつってしまったのだ。すでに開業に向け動き始めていたので、入院先で点滴を受けながら依頼業者と立地や物件の話をするなどなんとか頑張ったが、周囲の人たちの意見もあり治療に専念した。そのため、開業準備はいったんペンディングすることにして、今まで決まっていた話はすべてご破談にした。
 その後、病気は自然と治り体調もよくなってきた。そこで、もう一度開業を決意。一度目はなかなか物件が決まらないという苦労を味わっていたので、二度目はもう少し広い範囲で物件を探すことにし、30軒以上の物件を見て回った。実は当院がある戸塚駅には今まで降りたことがなく、物件を見にきたときにはじめて降りた駅だった。しかし見回ってみると、勤務先であった横浜市立大学病院の関連病院が周囲に何軒かあり、横浜市にも長く住んでいて土地勘がないわけではなかった。何よりこの街の雰囲気や物件そのものが気に入り、ここで開業することに。最初の決意から、じつに4年後の開業となった。

一番の自慢

こだわりの詰まった内装と優秀なスタッフ

 30軒以上の物件をまわってやっと見つけた物件だったが、窓がないという問題点があった。しかし窓を作るわけにはいかなかったので、院内を明るくするため電球の数を多めにし、壁紙にも明るい色を用いるようにした。また、診療内容に手術や内視鏡検査があるため『怖い』というイメージを持たれがちなので、こうした恐怖心の緩和、待合室で待っているときにも緊張しないように、柔らかい色味で統一するように心がけた。
 院内のレイアウトにも相当なこだわりがあったので、依頼した業者にはかなりのわがままを聞いてもらった。入口からクリニック内は完全バリアフリーで広々としており、車椅子の方や高齢者の方でもスムーズかつ安全に移動できるようになっている。患者さんがリラックスできるよう外からは待合が見えないように配置するなど、患者さんもスタッフも動きやすくなければならないので、納得できず自分で図面を引くほどだった。病気等で開業までの時間があった分、アイディアも明確だったので妥協できなかったのだ。しかしこだわった甲斐もあり、現在のレイアウトや内装には非常に満足している。
 今、私以外のスタッフは4人いるのだが、素晴らしいスタッフに恵まれていることも自慢。まず募集には、多くの応募者の中から選んだほうが良い人材が選べると思ったので、広い範囲で応募が可能なインターネットの求人サイトを利用し、企業採用時にも使われる性格テストを施行して客観的な評価を加えた。同じような人ではなく、たとえば受付は医療事務の経験者と別業種で受付をしていた接客のプロのふたりを。医療従事者は看護師と臨床検査技師をというように、それぞれが別の個性やスキルを持った人を採用するようにした。
 共通認識を持ってもらうためのマニュアルの作成、定期的な診療のレクチャーは必須。受付の人たちにも診療、検査、手術の現場を見学してもらい、実際の医療がどのようにおこなわれているのかを勉強する機会を設けている。僕には質問しにくいが、受付や看護士になら質問できるという患者さんは非常に多い。だから医師以外のスタッフも、患者さんに聞かれたことについて的確に応えることができなければクリニック全体の信頼を高めることはできないから。また、スタッフを家族と思い、コミュニケーションを大切にするようにもしている。

一番の強み

他院にはない当院だけの『ウリ』は何か

013 外科は非常に幅広い科で、甲状腺、乳がんなども外科。肺や痔などの手術だけでなく、怪我による傷などの処置もする。最近は、自分の専門の手術しかしないという医師も少なくないが、関東逓信病院でトレーニングを受けていたときの恩師は非常に手術が上手で、内科や泌尿器科の医師がその先生に手術を頼むこともあった。そういう恩師を見てきたし、さまざまなことに興味を持ってしまう性格ゆえ、その都度勉強をして、気づけばさまざまな手術に関わり、いろいろな専門医になっていた。
 開業時に自分はどういう医者として大学病院でやってきたのかを改めて省みたとき、自分は肝臓やすい臓の医師でもあり、胃腸や肛門の医師でもあった。だからあえて診療科目は絞らず、今まで自分が身につけたことの中でトップレベルの水準が維持できる治療は全部やってみようと思った。診療科目が多いせいか、開業して最初の頃は『先生は何人いらっしゃるんですか?』と聞かれることもあったし、実際にやってみると大変だが、ひとりの医師でこれだけ多くの診療科目があるクリニックは他にはないと思っている。
 さらに開業をしたら、手術はもうしなくていいと思っていた。自分が納得できる手術もできるようになっていたし、後輩への技術の継承もできていて、大学での役目はある程度終わったかなという自分の中での達成感があったから。しかし、周囲には手術はせずに、診療科目を絞った専門に特化したクリニックがたくさんあったので、他院と同じことをやっても面白くないと思った。そこで、自分の強みを生かせる手術は続けることに。なかでも、そけいヘルニアの日帰り手術をやっているクリニックは全国的にも少なく、とくに横浜市にはまだないので、これも強みになっていると思う。

一番の配慮

患者さんの満足度を上げる診療とSNSの導入

 開業前も開業後も一番大切にしていることは、インフォームドコンセント(説明をうけた上での同意の意)や患者さんの立場に立ったレベルの高い治療を提供するようにしている。当たり前のことだが、患者さんに話をするときはなるべく専門用語は使わず、わかりやすい言葉で丁寧に説明するようにしている。
 また、患者さんとの対話も大切にしている。なんでも納得してくれる患者さんばかりではないが、時間をかけて信頼関係を築いていくしかないと思っているから。とくに開業してからは、いろいろなタイプの患者さんを診ることが多くなった。その分、ニーズも多様化して、患者さんとの距離は非常に近くなったと思うので、まれにプライベート上でのトラブルなどが話題になることもある。しかし、こうした問題を抱えていることが原因で不調を引き起こすこともあるからこそ、患者さんときちんと向かい合って話をするようにしている。
 さらに、集客という意味で、いまや情報発信は必須。SEO対策の一環もあるが、見やすいホームページを作ることは大前提で、その中にフェイスブックやTwitterのページを設けて、検診や健康教室の告知をしている。更新するのは大変だが、こうしたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の仕組みは、どんどん活用していきたい。

一番の夢

地域医療への貢献、ニーズの変化に応じた臨機応変な対応

 開業してから1年も経っていないので、すべてが手探り中ではあるが、開業してから患者さんの「訴えたいこと」や「こうしてほしいこと」を瞬時に掴んで、地域医療に貢献していくことが町医者の役割、かつ、永遠のテーマなのではないかなと思うようになった。患者さんのニーズを的確に捉えて、それにきちんと応えられるようになりたいと思っている。不満を持ったまま帰らせてしまうのではなく、満足して「このクリニックに来てよかったな」「このクリニックにまた来たいな」と思って帰っていただけるようにしていきたい。
 さらに、地域住民の人たちと最前線で向き合い、その地域の健康意識を高めていくということも含めて、コミュニケーションがとれるようにしていきたいと思っている。当院で健康教室を開催したり、地域ケアプラザなどで話をする機会を今以上に増やして、地域にどんどんと顔を出していきたいと思っている。
 また、今後どうなっていくかはわからないが、これから患者さんが増えてくれれば、自分ひとりでまわせなくなり、患者さんのニーズに応えられなくなる日がいつかはくるかもしれない。だが、忙しいからといって雑な診察や手術をして、患者さんに迷惑はかけられないし、何時間も待たせるような状況にはしたくない。だからもし今後の患者さんの数が増えたりニーズによっては、そけいヘルニアの日帰り手術、内視鏡検査など、診療科目ごとにクリニックを分割して、各々を専門クリニックとして独立させて後輩と一緒にやっていくのも面白いかなと思っている。

医院プロフィール

ながのクリニック

神奈川県横浜市戸塚区上倉田町481-1 八恍ビル1階
TEL:045-392-8612(代表)
医院ホームページ:http://www.nagano-clinic.net/


JR「戸塚駅」東口より徒歩4分、横浜市営地下鉄線「戸塚駅」1番出口より徒歩3分。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

外科、胃腸内科、肛門内科、内科

理念

レベルの高い医療を安全に患者さんの立場に立って提供する

院長プロフィール

永野靖彦(ながの・やすひこ)院長略歴

1991年 山形大学医学部卒業
1996年 関東逓信病院(現NTT関東病院)ジュニア・シニアレジデント修了
2000年 横浜市立大学付属病院 第二外科助手
2002年 横浜市民病院外科・副医長 IBD治療に従事
2003年 横浜市立大学附属市民総合医療センター・消化器病センター 助手
2005年 アメリカ MDアンダーソン癌センター留学
2007年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 准教授・医局長
(2008年より松島病院大腸肛門病センター非常勤)
2010年 ながのクリニック開業

所属学会

消化器内視鏡学会専門医、大腸肛門病学会専門医、肝臓学会専門医、消化器病学会専門医・指導医、消化器がん治療認定医、食道学会会員、胃癌学会会員、外科学会専門医・指導医、消化器外科学会専門医・指導医・評議員、肝胆膵外科学会高度技能指導医・評議員、内視鏡外科学会技術認定医・評議員、臨床腫瘍学会暫定指導医、ヘルニア学会会員、乳がん学会会員、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、臨床栄養協会認定サプリメントアドヴァイザー

開業までのご苦労を感じさせない穏やかなお人柄と、他クリニックではあまり見かけない診療科目や診療科目数の多さ。さらに最先端の手術を受けることができる環境の整備など、開業して間もないが、早くも安定した集患が見込めている理由を垣間見ることができました。

※記事内で使用している写真はながのクリニック様より提供されたものです。