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馬車道レディスクリニック 池永秀幸院長

読了時間:約 5分29秒  2011年05月10日 AM11:30
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池永秀幸院長

婦人科・関東2位人気のクリニック
メディカル・ビル建設から始めたこだわり開業

一番の苦労

融資が受けられず1年を棒にふる

0131階にはフレンチレストランが入り雑居ビルに見えるが、それも計算の上

 最も苦労したのが融資。開業した10年前は、バブルが崩壊して景気もどん底。金融機関の貸し渋りや貸し剥しがひろまり、開業医の廃業も増え始めた頃で、なかなか融資を受けることができなかった。それに不妊治療の認知度も低かった時代で、不妊治療専門クリニックを開業しようなんて、お金を貸すほうからは絵空事に見えただろう。
 必要な融資額が通常より大きかったのも、融資を渋られた理由だ。出回り始めたばかりの電子カルテや培養室など最新設備にこだわり、初期投資額が大きかった。しかもビルの1フロアを借りるのではなく、親所有の土地に7階建てのビルを建て替えたかったというプランだった。自分の医院も含めさまざまなクリニックをテナントとして入れ、メディカル・ビルにしたかったのだ。ビル名を「馬車道メディカルスクエア」としたのもそのためで、これについては一切妥協しなかったため、融資元を探すのに1年を棒にふった。
 その後知人の紹介でなんとか融資が決まり、ビルを建て替えることができたのもつかの間、次の苦労はテナント探しだった。医療関係のテナントが1軒も決まらない。そこで方針転換して、医院にこだわらず女性に関連したテナントを入れることにした。1階にフレンチレストラン、2階にジュエリーの加工や修理の専門店、3階にフットマッサージサロン、そして5~7階が当院という構成になった。女性の出入りが多い雑居ビルにすることで、不妊治療という、ともすれば入りづらいイメージを払拭し、たとえ出入りを見られてもどこに行くのかカモフラージュできるのではないかと考えた。

一番の契機

口コミによる患者増加は、爆発的だった

2階には、最新のバイオクリーンルーム。入室には指紋認証が必要

 ビルの4階のみテナントが決まらない状態で開業したが、半年くらい経った頃、患者数が急増した。なぜかと思ったら、それは『患者が決めた!いい病院-関東版-』という書籍で、婦人科ランキング2位になったのがきっかけだった。さらには、診療を卒業した患者さんが、知らぬ間に口コミサイトで推してくれたり、知り合いを紹介してくれた。そこからは一気に来院数が増え、5階の受付兼待合室が手狭になってしまった。そこで、テナントが入らずに空いていた4階に広い待合室を作ることにした。
 その後も患者数は増え続け、スタッフ数も開業当初の2倍に。窮屈さを感じ始めていたとき、3階のテナントが出ていくことに。そこで、6階にあったスタッフルームを移動。事務長室と倉庫も新設した。その後2階も空いたので、6階にあった培養室を移動して、手術室なみのバイオクリーンルームを設置。空いた6階には、患者さんの回復室とカンファレンスルームを作った。結局、今はビルの2~7階を当院で使っている状態だ。
 このような患者数の増加に合わせたスペースの移動や拡張は、もしテナントとして入っていたらとてもじゃないができない。自社ビルだからできたことだし、大家とのやりとりもなく、増やしたいときに増やせたわけで、非常に効率的だった。最初に妥協しなくて良かったと思っている。
 またこれは計算外だったが、開業から2~3年経った頃に新しい地下鉄が開通して、最寄り駅から徒歩2分と、アクセスがぐっと良くなった。それまでは最寄り駅から徒歩5分だったので、この開通で、患者さんがより通いやすくなった。

一番の配慮

来院から帰宅までをイメージする徹底した患者目線

013患者さんのストレスを軽減させるため、何事もわかりやすく説明

 重要なのは、患者さんが家を出て病院に来る…そして病院を出て再び帰宅する…この流れを思い浮かべて、患者さんの満足度を上げることを一生懸命に考えること。すると患者さん目線に立った診療や対応ができるようになり、おのずと患者数はついてくる。
 当院が専門とする「不妊治療」は、患者さんが非常に強いストレスを感じる治療だ。通うこと自体がストレスになり、治療を続けてもらうのは容易ではない。だから根気よく通ってもらうために、患者さんからの要望はできる限り採り入れるようにしている。診察前や会計時の待ち時間軽減のために、完全予約制にして医事コンピューターを導入した。その短縮した待ち時間でさえもストレスを感じないでもらえるよう、待合室を広くした。
 また、開業当初から患者アンケートをとり、その集計結果を待合室やホームページ上で公開している。ご批判は出しにくいものだが、あえて正直に出している。今は他院でも、診療内容を明示した領収書を渡さなければいけなくなったが、こうした情報開示は、うちでは当初から当たり前にやっていた。電子カルテも日本語で入力して、患者さんが内容を見てもわかるようにしており、すべての質問にきちんと答えている。情報開示を徹底していると、患者さん自身が、自分の治療内容や予定費用について、すべてを納得した上で治療を受けてくれる。これこそが、私の考える「患者さんが納得できる治療」だ。

一番の自信

本分である治療実績にこだわることこそ差別化

患者アンケート結果は、待合室で自由に閲覧可能

 「医療はサービス業であり、患者さんはお客様」と私は考えている。だが医療機関の本分はもちろん治療実績だ。妊娠までの治療日数をきちんと集計しているが、当院は「1年以内」が一番多い。患者さんのストレス軽減のためにも、早く結果を出すことに重きを置いている。
 実は、爆発的に患者数が増えた頃、自分ひとりで診れるキャパシティを超えそうになった。一人あたりの診療時間が短くなり、待ち時間は逆に長くなり始めた。収益的には良いかもしれないが、私は全ての患者さんを自分できちんと診たいタイプなので、決して好ましい状態ではなかった。何より、「少しでもストレスを減らして」「一人ひとりを丁寧に診て結果を出していく」という私のポリシーが危うくなった。
 ところがその後、不妊治療を行う医院も近所に増えてきて、患者さんの行き先が分散され、落ち着いてきた。しかしこの10年で築いてきた実績があるので、いくら競合が増えても一定数の患者さんは必ず来てくれるという自信がある。
 開業した当初からずっと取り続けているアンケートによると、当院の受診理由は圧倒的に口コミと患者さん同士の紹介が多い。このデータは、我々の自信と安心になっている。また、当院で1人目を妊娠した患者さんは、2人目以降の妊娠に治療が必要な場合、必ずといっていいほど来てくれる。これも、結果を出してきたからだと思う。

一番の夢

自分の仕事を社会貢献に繋げる

013

 クリニックのスペースが増えた以外は、開業当初から自分が考えてきた通りに維持してきた。課題はこれをどう維持するかだ。設備などハード面の維持や更新も必要だし、治療法も新しいものを取り入れていきたい。そして、これからも患者さんにストレスのない治療を提供し、妊娠実績を少しでも100%へと近づけていきたい。
 そして目指すところは「通うのが楽しくなるクリニック」。夫婦に子供がいるといないとでは、人生は異なってくる。つまり、根気よく通院していただいて結果として子供ができたという成果が出た場合には、その人の人生が変わったことになる。私が結果を出してあげられるかどうかで、その人の人生が左右されるばかりか、少子化対策にもつながるわけで、社会的にも責任の大きな仕事をしていると思っている。だからこそ、常に患者さんの要望にできる限り応えて、理想の不妊治療へと極めていきたい。

医院プロフィール

馬車道レディスクリニック

神奈川県横浜市中区相生町4-65-3
TEL:045-228-1680(代表)
医院ホームページ:http://www.bashamichi-lc.com/


みなとみらい線「馬車道」駅下車すぐ。JR、横浜市営地下鉄ブルーライン「関内」駅からも近い。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

産婦人科(不妊専門クリニック)

理念

患者さんが納得できる、ストレスのない治療を重視。

院長プロフィール

池永秀幸(いけなが・ひでゆき)院長略歴

1986年 東邦大学医学部卒業
同年 東邦大学大森病院第1産婦人科入局
2001年 馬車道レディスクリニック開業

所属学会

日本産科婦人科学会認定医、日本生殖医学会会員、日本受精着床学会会員、日本哺乳動物卵子学会会員、日本IVF学会評議員

明確なビジョンをベースに語られる開業ストーリーは、
医師というより起業家の話を聞いているようだった。