「経営に悩む医療人の役に立つならば」・・・軌道に乗るまでの失敗談や苦労、成功の秘訣やノウハウ、そして“次の一手”など、「他では開示されない貴重なノウハウ」を、教えてくれます。
有力院長が次々と登場するので、月に2回はアクセスして、「自院の方向性チェック&考察」の機会にご利用ください。
医療法人KMG 小菅医院
小菅孝明院長
「漢方」と「西洋医学」の融合で、
15人の医師が参画する
クリニック版オープンシステムを実現
一番の悩み
十人十色の医師に対応する事務スタッフの苦労
当院は、かなり変わった診療体制を敷いていて、4つの診察室で15人程度の医師が入れ替わり立ち代わり外来担当している。しかも、ほとんどが専門医で、既に診療スタイルを確立している先生方ばかりだ。ベテランの開業医もいるから、私も細かいところまで口を挟まず尊重している。
専門科目が違うだけでも診療パターンが分かれるのに、価値観が異なる一国一城の医師が集まれば患者さんとの接し方一つとっても異なる。よって、1院内に複数の診療方針が存在することになる。
このしわ寄せは、全てコメディカル、特に事務スタッフに向かう。例えば、1時間に10人ペースで診る医師と2人しか診ない医師がいれば、待合室では「なぜ私の順番は、こんなに遅いの?」というクレームが発生する。また、ベテラン医からは「私は長年カルテをこう書いてきたから、これで良いだろ。」と行き違えが発生するケースもある。女医さんが「子供が急に熱を出した」といえば、「じゃあ、別フロアで預かりますよ」と急きょ赤ちゃんの面倒を見たりもする。
そんな不測事態の毎日のなかで、患者さんと医師の双方に気持ちよく診療を進めてもらうためには、スタッフの機敏な対応力とコミュニケーションスキルが必須だ。現スタッフは優秀だが、あくまで微妙なバランスの上に成り立っていることは自覚している。特にウチは個性的な先生が多いからね(笑)、気苦労は絶えないだろう。私自身でも頻繁に各医師とコミュニケーションをとってはいるが、スタッフ達に過度なストレスが重ならないように、心を配っている。よく一緒に飲みに行くしね(笑)…スタッフと飲みに行く院長は、意外と珍しいのではないか。
一番のこだわり
目指すのは「壮大なる総合医」
人が生まれてから死ぬまでのすべてを引き受けたいと思っている。当院には内科、小児科、整形外科、産婦人科などのべ8人の専門医がいるので(QLifeサイト上の小菅医院の専門医欄を参照)、お互いに協力し学びあえば一人ひとりが持っている力以上に治癒率を高めることができる。
どの医師にも要請しているのは「もし病気が否定できない場合には、必ず他の医師にコンサルトしてください。漢方医学だけ、各専門領域の視点だけで完結しようとしないでください。」ということ。いわば「院内連携」だ。
漢方だけでは、隠れている大きな病気を見逃して手遅れになってしまう危険もある。これは絶対にしてはいけない。逆に、西洋医学で70%の病気が治るとしたら、残りの30%のうちの20%は漢方で治せる。それぞれの専門家が協力することによって、さらに5%の病気が治せる。100%治すことはできなくとも、70%を95%にするために、互いに学び合うことが必要だ。
だから向かいのビルにある研修センターで定期的に症例検討会を開いており、診療が終わる夜の8時くらいから開始するので、いつも終わるのは 10時過ぎ、時には11時を回る。医師だけでなく臨床検査技師や看護師も含め、すべてのスタッフに「プロとして学び続けてほしい」と話しているし、資格を取るためや学会出張などの費用は積極的に支援している。
一番の秘訣
クリニック版の「オープンシステム」
当院は、どの診療時間帯に駆け込んでもらっても内科、小児科は必ずいるし、予約すれば専門領域の治療も受けられる。患者さんから見れば「かかりつけ」と「病院」の良いところ取りの姿だし、働く医師から見れば「オープンシステム」(設備を院外医師に開放して共同診療するしくみ)になっている。オペ室も含め設備は自由に使え、前述のとおり、症例検討会への参加や、他医師へのコンサルトもすぐできるから、医師にとって研鑽しやすい環境だ。
それだけではなく、実は「医院経営のセンスが磨かれる」メリットも提供している。当院は、日本東洋医学会の研修指定施設になっているので、専門医資格取得のために多くの医師が研修にいらっしゃるが、彼らは他科の専門医資格を既に持っているので、研修の傍ら外来を担当していただくことがある。あるいは、自院を閉院後に「週に1日だけ、じっくり30分かける診療をやりたい」という医師や、開業ノウハウを学びたいという若い病院勤務医もいる。
様々な背景で当院のオープンシステムを利用していただいているが、どの医師も給料は完全歩合で「医業収入の30%」だ。通常、こうした仕組みでは20-25%が多いらしいから、それよりは上の設定にしている。
1時間あたりの収入額は、診療スタイルの違いによって10倍近い開きが出ることもある。患者満足度と収入増をどうやって両立するかは、医院経営において重要なノウハウだ。医業収入は報酬点数が基になっている。しかし医学部教育ではもちろん、研修医・勤務医時代には診療報酬についての教育は全くなされない。そのため保険診療報酬制度の基本的なところを知らない医師は多い。当院では必要であれば事務スタッフが解説し、医師と一緒にレセプトチェックや集計を行ってもらうことも可能だし、医師同士で互いの点数を分析しあって試行錯誤もできる。
一番のゆめ
漢方による新たな診療・経営スタイルを広げる
開業前からオープンシステムを考案していたわけでないが、たまたま最初から複数医体制で診療所をスタートしたのがうまく機能し始めた。このようなシステムは、各科の専門医が集まる漢方専門医の研修施設だからこそ可能なんだと気付いてからは、漢方の普及発展も兼ねて、もっとこのしくみを広げられないかと考えるようになった。病診連携も診診連携も自然な形で広がるので、地域医療のメリットも大きい。
西洋医学的な診断、治療を前提としつつも、疾患がきちんと否定できた後は漢方の対処を加えるというスタンスは、西洋医学医師も納得しやすいし、大多数の患者さんにも喜ばれるのではないか。
私が漢方に出会ったのは大学時代で、当時は、輸入薬には不純物が混じっていたりして、研究しようにもまともなデータを集めることができず、こんなことでは効果を証明することなんてできるわけがないと漢方治療からはきっぱり離れた時期もあった。それが今では、漢方あっての私の診療スタイル、経営スタイルとなったのは感慨深い。
医院プロフィール
小菅医院
神奈川県横浜市中区石川町1-11-2 小菅医療ビル4階
TEL:045-651-6177
医院ホームページ:http://www.kosuge-med.com/kosuge/index.html
JR京浜東北線・横浜線、石川町駅から徒歩2分。詳しい道案内は、医院ホームページから。
診療科目
内科・消化器科・循環器科・小児科・外科・整形外科・アレルギー科
理念
温故知新。歴史と共に世紀の医療をみつめ続ける。
院長プロフィール
小菅孝明(こすげ・たかあき)院長略歴
1986年 東邦大学医学部卒。同大学第一内科にて血液学および動脈硬化の臨床・研究に励む。
1989年 東邦大学医学部大学院修了、医学博士。
2000年 ベイサイドクリニック 院長就任
2005年 小菅医院 院長就任
現在東邦大学理学部非常勤講師、横浜市立大学附属市民総合医療センター総合診療科・漢方外来、社会保険横浜中央病院循環器科、上海中医薬大学付属日本関校客員教授を兼務。
所属学会
日本東洋医学会専門医・指導医、ほか
他人を巻き込みぐいぐい前進するパワーが溢れる一方で、
その場にいる人々への配慮は素早い。