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ちかしげクリニック  近重民雄院長

読了時間:約 5分34秒  2010年08月24日 PM08:12
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ちかしげクリニック
近重 民雄院長

クリニック移転ミスを完全払拭した、
新規挑戦好きな院長が
2回の“新規開業”を振り返る

一番の苦労

移転地選定で、いわゆる「好立地」を優先してしまった失敗

 別の場所で9年開業していたが、当地にクリニックを移転した。理由は、JRの駅から近い物件だったからということ。単純に物事を決めてはいけなかったと反省している。
 よほど特別な事情がないかぎり、開業地の移動は元の場所から半径500m以内にしておくべきだった。その理由はもちろん、顧客となってくれていた患者さんたちの足の便の問題だ。今の場所は、駅から徒歩1分で新規開業の立地としては良好だが、旧くからの患者さんにとっては継続通院しにくくなってしまった。今となっては、なぜその配慮ができなかったと不思議に思うくらいだが、医療者として、長年通ってくれた患者さんたちに大変申し訳ないことをしてしまったと悔いている。
 当然、それはクリニックの経営にも反映される。新たな土地で、新たに開業することになったわけだから、新しい地域の人たちと一から信頼関係を築いていかなければならない。過去の9年の開業実績は関係ないから、結局は新規開業をもう一度したようなもの。クリニックが信頼関係を築くのには5、6年の歳月が必要だから、その間は苦労をした。
 何をやったかというと、ひたすらコツコツと地道な努力の積み重ね。一人一人の患者さんにできるだけ丁寧な診察をおこなうように心がけ、日曜日も診療するようにした。正直、「もう駄目かな」と思ったときもあったが、投げ出さずに努力し続けたことが今に繋がっていると思う。
 ホームページを立ち上げたり、広告を出してみたりもしたが、当クリニックの場合にはその効果はあまりなかったと言える。やはり、今の時代にあっても、一番強いのは口コミだった。患者さんに誠実に対応していくことによって、少しずつ地域の皆さんに受け入れられていくということを実感した。

一番の「秘訣」

患者さんや同業者との人間関係で、医院は成り立つ

 だから、クリニックの運営は、とにもかくにも目の前の患者さん一人ひとりを大切にしていくことしかない、と私は考える。その為には、「話を聞く」ことが肝要だ。病状についての話はもちろん、日常的な会話も御座なりにしない。総合病院の医師も患者さんとのコミュニケーションには心を砕いているだろうが、やはり個人経営のクリニックの方が患者さんにとっては話しやすい。その特性を十分に活かし、「大病院に行くよりも、まず最初はこの先生の方が安心して診てもらえる」と思ってもらえる人間関係を築くことを重視している。
 「話を聞く」ことの弊害は、他の患者さんの待ち時間が長くなること。待ち時間の長さは不満の原因になる。特に、町のクリニックが一時間以上も待たせるのは頂けない。だから、「会話に費やす時間」と「他の患者さんの待ち時間」のバランスに、常に細やかな配慮と調節をしている。
 予約制にしたり、長い待ち時間が予想される場合は、患者様にPHSを渡して診察の順番が近づいたら患者様に連絡するなどの工夫が考えられるが、当院の大きな課題として、現在も試行錯誤している。
 人間関係構築が大切なのは、対患者さんだけでない。同業の友人との関わりも非常に重要だ。移転して暫く経営に苦しんでいた時期、相談にのってくれたり、力を貸してくれたのは、大学の医学部の時代からの友人たちだった。プライベートでも仕事においても、人は一人では生きてはいけない、人と人との繋がりによって生かされているんだと、痛切に感じた。
 また、地域の先生たちとのネットワークも重要である。入院が必要な患者さんを受け入れてもらえるような事前の根回しは、入院施設を持たないクリニックの経営者としては不可欠な仕事だ。それをしておかなければ、最悪、救急車を呼んで救急病院に運び込んでもらうしかなくなってしまう。私の場合、(大学の医学部の)同窓会の集まりに出かけたり、普段から患者さんをよく紹介したりすることくらいしかしていない。もっと交流していきたいが、お互いにあまり時間がとれないのが実状だ。

一番の「工夫」

神戸で最初に経鼻内視鏡を採用、医療機器導入は一貫して積極姿勢

 当クリニックでは、経鼻内視鏡を非常に早い時期に導入した。最新の医療機器に対する情報収集や、実際に導入して積極利用していく姿勢は、大切にしていることの一つだ。
 経鼻内視鏡などの電子内視鏡、動脈硬化検査機器、超音波骨評価装置、ヘルストロンなどを導入している。
 例えば電子内視鏡は、スコープの先端部に超小型テレビカメラを搭載していて解像度が高く、より精度の高い診断を下すことを可能にしてくれる。また、検査後すぐに詳しい説明ができるので、結果を待つ間の患者さんの不安を取り除くことができる。
 動脈硬化検査機器は、両手両足首の4箇所の血圧などを同時に測定するだけの簡単な検査で、所要時間は10分程度だ。痛みもほとんどないので、患者さんに気軽に定期検査を受けてもらえる。
 骨粗しょう症の状況を簡単に調べられる超音波骨評価装置も、女性の患者さんに広く喜ばれるため、整形外科ではないが導入している。測定にかかる時間はたったの2分程度だ。
 ヘルストロンは、座っているだけで三万ボルトの電界に全身を包み込まれる装置。体中の血管に電流が流れることにより血行が良くなるだけでなく、血液を弱アルカリ性に向かわせる働きもある。この装置は治療に使っているというよりは、クリニックに訪れた患者さんにリラックスしてもらうために導入したのだが、職員にも好評で、肩こりや不眠、便秘の軽減にも効果がありそうだ。

一番の「配慮」

診療の幅を広げる努力は、「固定観念」外しから

 最新の医療機器の導入は、診療の幅を広げてくれる。医療機器以外でも、患者さんの選択肢を増やすためであれば、私は努力を怠らない。
 特に心がけているのは、「医療者側の固定観念にとらわれない」こと。例えば、花粉症の治療は、本来なら科目違いなので「ウチじゃなく、耳鼻科に相談してください。」となりがち。でも現実問題として患者さんからの質問は多い。そこで今では、「町のクリニック」を頼りにしてくださるなら、積極的に診なければならないと考えている。花粉が飛ぶ二週間以上前から抗アレルギー点眼薬などを使用する初期療法が効果的なので、マスクやメガネの指導等も含め、事前の対処を薦めている。
 また、漢方の勉強もしている。西洋医学と東洋医学の良いところを組み合わせた治療を試みている。正直に言うと、若い頃には漢方治療には懐疑的だったが、勤務医のときに同僚に薦められて勉強会に行ったのをきっかけに、診療の視野が広まった。例えば、腫れに対して西洋医学では利尿剤を使用するが、それでは脱水を引き起こすこともある。リバウンドを起こし、かえって悪くなってしまう場合もある。ところが漢方治療なら、不必要な水分だけを排出することができる。しかも、体質改善の可能性も考えられるのだから、関心をもつ価値はあるといえる。西洋医学だけでなく他の手段を持ってより良い治療法を提案できるのは、患者さんからみても安心感が増すだろう。

一番の夢

自分の個性を診療現場に還元するのは、個人医院ならでは

 既に述べたように、最新医療機器や他科診療や漢方薬など、積極的な情報収集と研修参加で、いつも最先端の医療技術を実践できる医師であろうと心掛けている。
 今後は、鍼や灸などの勉強もしてみたいと思っている。実は、アロマセラピーの資格などにも興味をもっている。とにかく、新しいことに挑戦するのが好きなのだろう。
 これは、自分の一つの個性であり、能力だと思う。個人医院の経営においては、そうした院長の個性や能力を伸ばし、それを診療という場で患者さんに還元していくのが理にかなっていると思っている。

医院プロフィール

ちかしげクリニック

兵庫県神戸市須磨区大池町5-14-7アルファステイツ鷹取駅前1F
TEL:078-735-0882
医院ホームページ:http://chikashige-clinic.com/


JR鷹取駅から徒歩1分。詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

肛門外科、消化器内科、内科

理念

謙虚であれ

院長プロフィール

近重 民雄(ちかしげ・たみお)院長略歴

1978年 神戸大学医学部卒業
1979年 神戸大学医学部附属病院麻酔科
1983年 協立総合病院、野垣肛門科
1984~1985年 愛知県がんセンター消化器肛門病外科等で研修
1994年 ちかしげクリニック院長

資格・所属学会他

日本消化器内視鏡学会、日本大腸肛門病学会、日本東洋医学会、日本内科学会

診療の予定を控えているにも関わらず、院内にある部屋・機材など、過去のエピソードを交えながら案内していただいた。