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動物実験を段階的廃止へ-抗体医薬がターゲットに

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2025年04月16日 AM10:17


■非臨床試験の大転換か

)は米国時間の10日、抗体医薬品の開発候補を対象に動物実験を段階的に廃止するためのロードマップを策定した。ヒトの毒性が予測可能となるようインビトロ評価、生体模倣システム(MPS)やAIなど先端的な技術を組み合わせて新たな安全性試験を考えていく「」(新しいアプローチや方法論)を数年で実現させ、動物実験を廃止できるよう非臨床試験のガイドライン改訂も計画する。日本でもNAMsの実現を目指したプロジェクトが始動しており、「抗体医薬品やバイオ医薬品関連の企業はNAMsへの対応に動き出す可能性がある」との声もある一方、製薬業界からは「3~5年で動物試験を完全に置き換えるようなNAMsの出現は難しい」と現実的な見方もある。

FDAは、抗体医薬品の安全性評価で用いられる動物実験を代替するため、薬物の体内での挙動を予測するためにコンピュータモデリングとAIを活用することを推奨し、副作用予測に役立てる方針だ。ヒト細胞のオルガノイドや肝臓、心臓、免疫臓器などのヒト臓器を模倣した臓器チップシステムの使用を推進し、動物実験では予測できないヒトでの毒性を予測して、ヒト評価に外挿できるようにする。

さらに、NAMsによる手法で得られたデータを考慮した非臨床評価ガイドラインの改訂に取り組む。米国国立衛生研究所(NIH)などの連邦機関と緊密に連携し、米国代替法に関する省庁間連絡会議(ICCVAM)を通じてNAMsの検証と導入を加速する。

今年後半にはワークショップを開催し、関係者の意見を収集。今後1年間で、選定された抗体医薬品の開発企業が動物実験を行わない試験戦略を採用できるパイロットプログラムを開始予定で、最終的には動物実験の廃止を目指す。

非臨床の安全性評価をめぐっては、新規モダリティを中心に動物試験の限界が指摘されており、ヒトでの副作用を予測できないケースが発生している。ヒト予測の妥当性、開発期間の削減、最先端の科学を取り入れた新たな評価など、様々な観点から安全性試験にパラダイムシフトが必要との声が出ているほか、使用動物数の削減や使用動物の苦痛軽減、実験動物を用いない試験法への置き換えに向けた動物福祉への対応も重要な課題となっていた。

FDAは2023年1月に公表した「近代化法2.0」で、医薬品の非臨床試験において動物実験の義務を廃止し、さらに今回踏み込んだ対応を行った。マーティン・マカリー長官は、今回のロードマップ策定について「医薬品の非臨床試験で実験動物の使用を終わらせるための第一歩となる」との声明を発表した。

FDAの発表を受け、国内のアカデミアの専門家は「抗体医薬品に関しては動物実験を不要とする試験戦略の本格的検討に入った」との認識を示す。「FDA近代化法3.0が議会を通過すれば、予算措置でより舵が切られる」とし、日本での医薬品開発に与える影響についても「ロードマップで今後のステップが示されているので日本で議論をする良い題材になる。抗体医薬品やバイオ医薬品関連の企業はNAMsへの対応に動き出す可能性がある」と話す。

一方、製薬業界の専門家は「FDAのNAMsの審査官などとのコミュニケーションでは、まだゴールデンスタンダードは動物実験であるという考え方は確固たるものがある」と慎重な見方だ。

医薬品の安全性評価手法としてNAMsが動物実験を代替するためには、技術的な課題があり、「まずは短期の試験とNAMsを組み合わせて長期試験を不要としたり、利用する動物数を減らそうという流れだろう。現状3~5年で動物試験を完全に置き換えるようなNAMsの出現は難しい」と語る。

日本でもNAMsの積極活用について、日本製薬工業協会などで検討が始まっているが、行政が受け入れるかという課題が立ちはだかる。

日本の場合、開発終盤の承認申請間近で試験の適格性を審査するため、NAMsを活用した非臨床戦略が受け入れられない場合には開発のリスクが大きく、この専門家は「積極活用とはいかないのではないか」と指摘している。

 

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