頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群、早期の患者に対する治療法が必要
神戸大学は4月1日、小児期発症の難治性に至っていない頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群を対象とした医師主導治験を実施したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科内科系講座小児科学分野の野津寛大教授、兵庫県立こども病院の飯島一誠病院長および国立成育医療研究センター臨床研究センターの佐古まゆみ部門長らの研究グループによるもの。この治験成績に基づいて、全薬工業株式会社がリツキシマブ(遺伝子組み換え)(販売名:リツキサン点滴静注100mg、同500mg)において、「小児期発症の難治性に至っていない頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群」に対する適応追加の承認を2025年3月27日付で厚生労働省より取得している。

ネフローゼ症候群は、腎臓を構成するネフロンにおける糸球体スリット膜の障害により高度タンパク尿と低アルブミン血症が生じた結果、全身性浮腫をきたす病態の総称。小児期に発症するネフローゼ症候群は小児の慢性腎疾患で最も頻度の高い原因不明の指定難病だ。そのうち約80~90%は、第一選択薬であるステロイドにより速やかに寛解する「ステロイド感受性ネフローゼ症候群」だが、うち約50%は、ステロイドによっても比較的短期間に再発を繰り返す「頻回再発型ネフローゼ症候群」、あるいはステロイドの減量または中止に伴い再発する「ステロイド依存性ネフローゼ症候群」に分類される。
「頻回再発型あるいはステロイド依存性ネフローゼ症候群」に対しては、ステロイドの長期投与による副作用を軽減する目的で免疫抑制薬の導入が推奨されている。しかし、免疫抑制薬を用いても頻回再発型あるいはステロイド依存性のままステロイドからの離脱ができず難治性に至ったり、成人期に移行したりするケースが存在することや、免疫抑制薬の長期投与による重大な副作用の発現が問題となっている。
リツキシマブは「難治性頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群」で有効であることがすでに知られていたが、より早期の患者での有効性の臨床試験での裏付けがなく、進行した難治例のみの適応にとどまっていた。
医師主導治験でリツキシマブの有効性と安全性を評価
そこで今回の研究では、小児期発症の難治性に至っていない頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群患者を対象として、リツキシマブを投与した際の有効性および安全性を評価する多施設共同ランダム化二重盲検比較試験(医師主導治験)を全国13の大学病院などにおいて実施した。被験者または被験者の代諾者から文書により同意を取得した40人を対象として、リツキシマブ375mg/m2/回(最大投与量500mg/回)、またはプラセボを1週間間隔で2回投与し、再発するまでの期間(無再発期間)や有害事象および副作用の発現について評価した。
リツキシマブは再発抑制に効果あり、新たな有害事象と副作用は確認されず
その結果、無再発期間の中央値がリツキシマブ群(18人)では285.0日、プラセボ群(22人)では80.5日となり、リツキシマブ群でプラセボ群より有意に延長し(ハザード比:0.266[95%信頼区間:0.120-0.592]、p=0.0006[層別log-rank検定])、リツキシマブによる再発抑制効果が示された。また、有害事象の発現割合はリツキシマブ群とプラセボ群で大きな違いは認められなかった。副作用の発現割合は、リツキシマブ群で高い傾向にあったが、確認された有害事象および副作用は、これまでに国内外で同剤の既承認の適応症に使用されて報告された有害事象および副作用と同様だった。
治療選択肢が増え、患者QOLの向上に期待
今回の研究により、小児期発症の難治性に至っていない頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群患者に対して、リツキシマブ治療が有効かつ安全であることが確認できた。この治療法の開発によって、既存の免疫抑制薬治療に加え、さらなる治療選択肢が増えることになる。
「既存の治療による副作用を軽減し、再発が抑制されることで、ステロイドや免疫抑制薬の長期投与から離脱することが可能となる。患者のQOL向上が期待でき、その意義は大きい」と、研究グループは述べている。
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・神戸大学 プレスリリース