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痛みを感じる時の扁桃体活動、fMRIでリアルタイム計測する方法を開発-慈恵医大ほか

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2025年04月11日 AM09:30

痛みの情報処理に重要な扁桃体、従来法では活動の可視化は困難だった

東京慈恵会医科大学は4月1日、急性の痛みに関連した扁桃体の活動を可視化する新しい機能的MRI記録手法の開発に世界で初めて成功したと発表した。この研究は、同大の今村彩子研究実習生(筑波大学グローバル教育院大学院生)、神経科学研究部の高橋由香里講師、釣木澤朋和非常勤講師(・主任研究員)、加藤総夫名誉教授、筑波大学の本城咲季子助教、宮竹功一研究員、ブルカージャパン株式会社の荒木力太研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「NeuroImage」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

従来の機能的MRI(以下fMRI)では、局所の静磁場の不均一性を強調するグラジエントエコーエコープラナー画像法(gradient echo echo planar imaging、GE-EPI)やスピンエコーエコープラナー画像法(spin echo echo planar imaging、SE-EPI)と呼ばれる撮像法を用いている。神経活動に付随する酸化型/還元型ヘモグロビンの比率の変化により、ヘモグロビンのヘム鉄による磁場の乱れを検知し、結果として神経活動が上昇した領域を画像化することができる。

GE-EPI法は磁場の乱れに敏感であるため、マウスの全脳の神経活動による機能的ネットワークを可視化することができる一方、耳の穴に存在する空気によって生じる磁化率アーチファクトにより、扁桃体を含む前脳腹側の信号が大幅に減衰するという問題があった。扁桃体は痛みの情報処理において重要な役割を担っているため、扁桃体の活動の可視化はfMRI研究の命題だった。

磁化率アーチファクトに強いZTE法をfMRIに応用、3秒ごとにマウス全脳の画像取得

今回の研究では、磁化率アーチファクトに強いゼロエコー時間法(zero echo time、)という撮像法をfMRIに応用し、扁桃体の活動を捉えることを目的とした。

ZTEの撮像パラメータを最適化し、3秒ごとにマウス全脳の画像を取得できるようにした。続いて、イソフルラン(0.5~0.8%)とメデトミジン(0.05mg/ml/h)の混合麻酔下で9.4テスラ(T)MRIを用いてZTEにより脳活動計測を行った。

ホルマリンによる急性疼痛で、・大脳皮質・視床を含む領域が5分以内に活動変化

まずZTEで神経活動を計測できることを確認するため、マウスの足裏に電気による感覚刺激(10Hz、2mA)を加え、大脳皮質体性感覚野の信号変化を調べた。次に、マウスの右足の裏にホルマリン(5%)を投与し、急性疼痛を引き起こした。ZTEで撮像開始から5分後にホルマリンを投与し、その後35分間撮像した。ZTEは3秒ごとに全脳の画像を取得した。コントロールとして生理食塩水を投与し、生理食塩水群の平均の信号に対してホルマリン投与による信号の比を計算した。

マウス足裏への感覚刺激により、大脳皮質体性感覚野の活動を確認した。次に、ホルマリン投与により、投与後5分以内に扁桃体、大脳皮質、視床を含む領域に活動変化が認められた。さらに投与後20分後に再びこれらの領域を含むより多くの領域に活動変化が認められた。この2相性の活動変化は、行動学の解析による2相性の急性炎症と時相的に合致していることから、急性炎症により生じる脳活動変化を反映している可能性が示唆される。

fMRIでこれまで計測できなかった脳領域を計測可能に、痛みや認知機能研究への貢献に期待

ZTEは従来のfMRIで磁化率アーチファクトにより計測できない脳領域の計測を可能にする。マウスにおいては、これまでfMRIで計測できなかった扁桃体の活動を計測可能になり、動物モデルによる痛み研究への貢献が期待される。「ヒトのfMRIでは認知活動に重要な眼窩前頭前野の計測や側頭部の活動計測が可能になる。これにより、ヒトの認知機能の研究が加速することが期待される」と、研究グループは述べている。

 

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