どの腸内細菌がどのような機序で肝臓の脂質代謝を異常にする?
名古屋大学は3月31日、砂糖の摂り過ぎによって起こるメタボリックシンドロームへつながる脂質代謝異常(脂肪肝、高中性脂肪血症)の原因となっている腸内細菌を5つ見つけたと発表した。この研究は、同大大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らを中心とする研究グループによるもの。研究成果は、「Food Bioscience」に掲載されている。

画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性を基盤とする生活習慣病の前段階の未病状態であり、生活習慣の改善により元に戻ることが可能であると考えられている。これまでメタボリックシンドロームの原因は、エネルギーの過剰摂取や動物性脂肪(飽和脂肪酸)の取り過ぎが主な要因であると考えられてきた。しかし近年、砂糖や異性化糖などフルクトースを含む糖の取り過ぎが主要な原因の一つであることがわかった。そのためWHOは1日の砂糖の摂取を摂取エネルギーの5%未満に抑えるように勧告を出した。これは、小さじ6杯分の砂糖に相当するわずかな量である。そして、WHOは砂糖税の導入を各国に呼びかけた。
一方、砂糖・フルクトースがなぜ脂質代謝異常を引き起こし、メタボリックシンドロームにつながるかについて、従来の考え(旧メカニズム)が間違っていることが明らかになった。これまで、肝臓にフルクトースが大量に流れ込むことが原因と考えられていたが、同研究グループを含む世界の複数のグループが、小腸がフルクトース代謝の中心臓器であり、あふれたフルクトースが大腸の腸内細菌を変化させて肝臓の脂質代謝異常を起こすことを示した(新メカニズム)。しかし、どの腸内細菌が変化して、どのような機序で肝臓の脂質代謝を異常にするかは明らかでなかった。腸内細菌を特定することは、脂質代謝異常を予防する方法につながるため、重要なステップとなる。
代謝異常に関与の原因腸内細菌を5つ特定、ラット実験で
そこで今回の研究では、原因となる腸内細菌を特定するためにラットに炭水化物としてスターチを与えたグループと砂糖を与えたグループを設け、大腸の腸内細菌叢を調べた。その結果、食べ過ぎた砂糖は大腸の腸内細菌叢を変化させることが明らかとなった。これらのラットに、4種類の抗生物質の混合物を与えると、腸内細菌叢が変化し脂質代謝異常が抑えられた。次にそれぞれの抗生物質を単独で与えたところ、抗生物質のメトロニダゾールを与えたときに脂質代謝異常が抑えられた。さらにメトロニダゾールと作用が類似する抗生物質オルニダゾール、チニダゾールを与えて比較したところ、メトロニダゾールだけに効果が見られた。これらの実験から変動する腸内細菌を絞り込んだことで、代謝異常に関与する原因腸内細菌が5つ特定された(Lachnospiraceae Blautia、Lachnospiraceae Dorea、Eubacterium dolichum、Bacteroidaceae Bacteroides、Bacteroidales Rikenellaceae)。これらの腸内細菌を標的にすることで、砂糖の摂り過ぎによる脂質代謝異常やメタボリックシンドロームを予防できる可能性がある。
食品などで腸内環境を整え、メタボ予防に期待
砂糖や異性化糖などのフルクトースを含む糖の摂り過ぎが脂質代謝異常ならびにメタボリックシンドロームを起こすメカニズムはよくわかっていなかったが、今回、研究グループは、その作用が腸内細菌叢を解する作用であることを明らかにして、その原因腸内細菌を5つ特定した。砂糖の取り過ぎによる脂質代謝異常から導かれるメタボリックシンドロームの予防は、砂糖の摂取を抑える以外になかった。「5つの特定された腸内細菌を標的とする食品などにより腸内環境を整えることは、砂糖の取り過ぎによる脂質代謝異常やメタボリックシンドロームの予防につながると考えられる」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・名古屋大学 プレスリリース