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高齢者の自転車利用は健康寿命を延伸、車を運転しない人で顕著-筑波大

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2025年04月08日 AM09:00

中山間地域在住高齢者対象、自転車利用量と要介護化・死亡との関連性を10年追跡で検証

筑波大学は3月28日、長期的な追跡調査の結果、高齢者における自転車利用は健康寿命および寿命の延伸に貢献し、この効果は特に車を運転しない人において大きいことを示唆する研究結果を発表した。この研究は、同大体育系の角田憲治准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Transportation Research Part F: Traffic Psychology and Behaviour」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

欧米に比べて、日本では多くの高齢者が移動手段として自転車を利用している。自転車は、徒歩よりも長距離の移動が容易であり、高齢者が痛みを抱えやすい膝関節への負担が軽いという利点がある。したがって、特に交通網が発展していない中山間地域では、自転車は重要な「生活の足」としての役割を担っていることが予想される。これまで日本で行われた横断研究より、自転車利用者は社会交流や身体活動量が多いことがわかっており、長期的に見た場合は、要介護化や死亡のリスクを低減する重要な生活因子となることが期待される。一般成人を対象にした複数の研究では、自転車利用者は死亡リスクが低いことが既に報告されているが、高齢者では、欧米においてこの関連を認めた報告と、認めなかった報告の両方があり、一貫した結果は得られていなかった。加えて、日本では長期の追跡研究そのものが行われていない。

そこで今回の研究では、まず、基本的解析として、中山間地域在住高齢者を対象に、調査開始時の自転車利用量と要介護化、死亡との関連性を10年間の追跡研究により検証した。続いて、初回調査から4年後にもう一度同様の調査を行い、自転車利用状況(非利用、開始、中断、継続)と要介護化、死亡との関連性を検証した。さらに、両課題において車を運転しない人(非運転者)に限定した解析を追加で実施した。

2013年に茨城県笠間市で高齢者を対象に実施した郵送調査の有効回答者6,385人(平均年齢74.2±6.5歳、女性52.5%)を対象に、2023年まで10年間にわたり追跡し、要介護化(要支援1以上)と死亡の状況について調査した。自転車利用状況は、平均的な1週間における自転車に乗る日数と時間を質問紙で調査し、週当たりの自転車利用量を、「非利用、1~74分、75~149分、150分以上」の4つのカテゴリーで集計した。

自転車利用の高齢者で要介護化・「低」、特に車の非運転者で顕著

分析の結果、2013年時点に短時間であっても自転車を利用していた高齢者は、非利用者に比べて、その後10年間の要介護化および死亡リスクが低いことがわかった。また、自転車利用による両リスクの低下は、特に車の非運転者において強まることがわかった。ただし、自転車利用量が多い者ほど各リスクが低下するという量反応関係は見られなかった。

2013年・2017年における自転車利用状況と、要介護化・死亡との関連性を検証

次に2013年時点の有効回答者6,385人のうち、2017年時点の生存者でかつ、介護認定歴や転出歴がない者を対象に再度郵送調査を行い、3,558人から有効回答を得た。そして、2013年および2017時点の自転車利用(週1日以上)状況から対象者を「非利用、利用開始、中断、継続」の4グループに分け、2023年まで6年間にわたり追跡し、要介護化と死亡の状況について調査した。

車の非運転者、自転車利用の継続者・開始者で要介護化リスク「低」

分析の結果、2013年から2017年にかけて4年間、自転車利用を継続していた人は、非利用者に比べて、その後6年間の要介護および死亡のリスクが低いことがわかった。さらに、車の非運転者に限った分析では、自転車利用の継続者に加え、開始者も要介護化リスクが低いことがわかった。

これらの結果から、高齢者における自転車利用は、健康寿命および寿命の延伸に貢献し、この効果は特に車を運転しない人において大きいことが示唆された。高齢者にとって自転車は「生活の足」として機能し、心身の健康維持・増進に貢献していると考えられる。運転免許返納による高齢者の移動手段の確保が課題となっている日本において、高齢者の自転車利用を促進するような社会的支援が望まれる。

今後、電動自転車の健康効果を調査・検証

今回の研究では、自転車利用における電動アシスト機能については評価できていない。通常の自転車に比べて、電動アシスト付き自転車の方が身体的な負荷は軽くなるが、傾斜地での利用を容易にすることや、走行距離、利用の継続性といった面で利点があると考えられる。今後は自転車利用に関する調査項目を充実させて、電動アシスト付き自転車の健康効果について調査、検証を進めていく予定である、と研究グループは述べている。

 

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