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「大腸内視鏡検査前処置」の負担、リナクロチド併用で軽減の可能性-大阪公立大

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2025年04月08日 AM09:10

負担の少ない大腸内視鏡検査の前処置として、慢性便秘症治療薬「」に注目

大阪公立大学は3月28日、より効果的で負担の少ない新たな大腸内視鏡前処置法を検証し、その結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 消化器内科学の前田夏美研究医、東森啓病院講師、藤原靖弘教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Gastroenterology」にオンライン公開されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

大腸内視鏡検査の前処置として、世界的に広く推奨されている方法には、ポリエチレングリコール腸管洗浄剤(PEG)4リットル(L)や、アスコルビン酸を含むPEG製剤(PEG-Asc)2Lの服用法がある。しかし、どちらも飲む量が多いため負担が大きく「辛い、飲みにくい」と感じる人が多いことが課題だ。

そこで洗浄力を保ちながら飲む量を減らす方法として、近年、浸透圧性下剤や刺激性下剤を補助的に使う前処置法が研究されている。日本では刺激性下剤を併用することが多く、研究グループは過去の研究において、PEG-Ascに刺激性下剤(センナ24mg)を組み合わせることでPEG-Ascの必要量を1Lまで減らせることをランダム化比較試験で証明した。同試験の結果、前処置成功率は1L+センナ群で88%、2L群で89%とほぼ同じであることがわかった。さらに前処置後の患者へのアンケート調査の結果、1L+センナ群の方が「同じ前処置を再度受けたい」と答えた人の割合が高く、飲みやすさの向上が確認できた(1L+センナ群:85%、2L群:62%)。しかし、腹痛を感じる人の割合が多く(1L+センナ群:15%、2L群:9%)、便秘症の患者には洗浄効果が不十分であるという課題が残った。

この課題を解決するため研究グループは、2018年に日本で慢性便秘症の治療薬として承認された「リナクロチド」に注目した。リナクロチドは腎臓や肝臓への負担が少なく、安全で強力な下剤であるが、腹痛を抑える作用もあるため、センナより洗浄力が高く腹痛が少ない可能性があると考えた。実際に、便秘症の患者を対象にした同研究グループの調査では、センナの代わりにリナクロチド0.5mgを使うことで、より高い腸管洗浄力を維持しつつ腹痛などの副作用が増えないことが確認できた(前処置成功率:センナ群:80%、リナクロチド群:89%)。

1,464人を対象に調査、リナクロチド群はセンナ群に比べ洗浄力/前処置成功率「高」

研究グループは今回、調査対象を日本国内の5つの病院(大阪公立大学医学部附属病院、南大阪病院、育和会記念病院、泉大津市立病院、ツカザキ病院)で大腸内視鏡検査を受ける全ての患者に広げ、PEG-Asc 1L+リナクロチド0.5mgとPEG-Asc 1L+センナ24mgの前処置法を比較。PEG-Asc 1L+リナクロチドの有用性を証明することで、より効果的で負担の少ない前処置法の確立を目指した。

研究では、有効性を正確に評価するため、内視鏡医に患者がどちらの前処置法を割り当てられたかを知らせない盲検方式を用いた無作為化比較試験を実施した。2022年4月~2023年4月までに大腸内視鏡検査を受ける予定の1,464人の患者を、PEG-Asc 1L+リナクロチド0.5mgを使用するリナクロチド群(731人)とPEG-Asc 1L+センナ24mgを使用するセンナ群(733人)に分けた。検査前夜にリナクロチド群はリナクロチド0.5mgを、センナ群はセンナ24mgを飲み、検査日の朝に両群ともPEG-Asc 1Lを服用する前処置法を行い、それぞれの効果を比較した。

その結果、リナクロチド群はセンナ群に比べて洗浄力が高く、前処置成功率も有意に高くなった(リナクロチド群:92%、センナ群:86%)。一方で、患者の負担や辛さの程度(忍容性)には大きな違いはなかった。

リナクロチドの前処置はセンナと比べ効果「高」、前処置不良リスクの高い患者にも有効

さらに、年齢や併存疾患などが原因で腸がきれいになりにくい「前処置不良のリスクが高い患者」と「リスクが低い患者」に分けて検討したところ、リスクが低い患者ではどちらの群も94%と同程度の高い洗浄効果があったが、リスクが高い患者ではリナクロチドを使用した群の方がより前処置成功率が高くなった(リナクロチド群:94%、センナ群:86%)。

これらの結果から、リナクロチドを用いた前処置は、センナを用いた前処置と比べて効果が高く、特に前処置不良リスクの高い患者にとって有効であることが示された。

リナクロチドを補助薬として使うことで、理想的な低用量前処置法実現の可能性

今回の研究により、大腸内視鏡検査前処置でリナクロチドを補助薬として使うことで、洗浄力・安全性・忍容性の全てを兼ね備えた理想的な低用量前処置法が実現できる可能性があることがわかった。前処置の成功度には個人差があるため、患者それぞれに適した方法を選ぶことが重要だが、実際の診療では一人ひとりのリスクを細かく評価し、それに応じた前処置法を選択するのは容易ではない。そこで、同研究で提案されたリナクロチドを用いた前処置法が、幅広い患者にとって使いやすく効果的な方法となることが期待される。

「今後は、この方法が現在の標準的な前処置法よりも本当に優れているのかを検証すること、また、より少ない服用量で効果的な方法がないかを探ることが重要だと考えている」と、研究グループは述べている。

 

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