スマートウォッチをスマートに使って健康増進
健康増進のためにスマートウォッチを使って毎日の歩数を測定している人は少なくない。しかし、新たな研究によると、スマートウォッチは歩数だけでなく、健康にとって重要な別の指標も測定しており、それら両者のデータを用いることで、より高い精度で健康効果を予測できる可能性があるという。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のZhanlin Chen氏らの研究の結果であり、米国心臓病学会(ACC.25、3月29~31日、シカゴ)で報告された。

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一般的に、健康のために1日1万歩歩くことが推奨されている。しかし実際には、研究によって、最適とされる歩数は異なる値が報告されている。一方、Chen氏らの研究結果は、単に歩数を測定するのではなく、1日の心拍数を歩数で割ると、心臓の健康状態をより高精度に評価できるというものだ。同氏は同大学発のリリースの中で、「われわれが開発した方法は、運動そのものではなく、運動に対して心臓がどのように反応するかという点に着目したものだ。身体活動が1日を通して変動する中で、ストレスが加わった時に心臓がそれに適応する能力を把握しようとする、より核心的な課題に迫る意義の高い方法である。われわれの研究は、スマートウォッチというウェアラブルデバイスでそれを捉える初の試みだ」と話している。
この研究では、米国立衛生研究所(NIH)が支援して行われている全国規模の前向き研究の参加者のうち、スマートウォッチ(Fitbit社)の記録と電子カルテ情報がそろっている約7,000人の米国成人のデータが解析に使われた。用いられたデータは合計で、580万人日、歩数にすると510億歩に及んだ。
1日の心拍数を歩数で割った値(daily heart rate per step;DHRPS)が高い人(上位4分の1)は、DHRPSが低い人に比べて、高血圧リスクが1.6倍、2型糖尿病リスクが2倍、アテローム性動脈硬化症による冠疾患のリスクが1.4倍、心不全リスクが1.7倍であることが明らかになった。また、DHRPSは歩数のみや心拍数のみよりも、心血管疾患リスクとの強い関連が認められた。ただし、脳卒中や心臓発作のリスクとの間には、有意な関連が見られなかった。
この結果に基づき研究者らは、「歩数で除した心拍数を用いることで、心臓のより詳しい検査が必要な人を抽出したり、運動療法により高い効果を期待できる人を特定したりすることが可能ではないか」と話している。またChen氏は、「この指標は誰もが容易に計算でき、スマートウォッチにアプリをダウンロードして値を求めることもできる」と、DHRPSの利点を付け加えている。
さらに研究者らは現在、1日単位ではなく、分単位で心拍数/歩数の値をモニタリングして、それが疾患の予後と関連があるか否かを確認する研究を計画している。「ウェアラブルデバイスの利用者は急速に拡大しており、1日中装着されることが多いため、短時間で変動する心臓の健康に関する情報を分単位で得ることが可能だ」とChen氏は述べている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
▼外部リンク
・A Smarter Way to Track Heart Health with Your Smartwatch?

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