不眠症状を伴ううつ病に対する各クラスの睡眠薬の有効性と安全性は不明だった
秋田大学は3月24日、不眠症状を伴ううつ病に対する各クラスの睡眠薬の有効性と安全性の系統的レビューとメタ解析を行い、その結果を発表した。この研究は、同大精神科学講座の竹島正浩准教授と杏林大学の丸木拓助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に掲載されている。

不眠症状はうつ病の患者に高率に認められる。不眠症状を伴ううつ病は不眠症状を伴わないうつ病と比べてより重症で、抗うつ薬への反応が得られにくいため、不眠症状を伴ううつ病に対する治療の開発が求められていた。抗うつ薬と睡眠薬の併用療法は不眠症状を伴ううつ病の治療候補の一つだが、これまでその有効性と安全性は系統的に調査されていなかった。
そこで研究グループは今回、不眠症状を伴ううつ病に対する各クラスの睡眠薬の有効性と安全性を調査するため、系統的レビューとメタ解析を行った。
抗うつ薬+Z-drugの併用療法、12週以内の抑うつ症状の寛解率や不眠症状改善度「高」
その結果、8研究が同定され、うち1研究がベンゾジアゼピン系睡眠薬、6研究がZ-drugの研究、1研究がメラトニン受容体作動薬の研究であることが判明した。メタ解析の結果、抗うつ薬とZ-drugの併用療法は抗うつ薬単剤療法と比べ、12週以内の短期における抑うつ症状の寛解率・反応率・改善度、不眠症状の改善度が有意に高く、全ての理由による脱落や有害事象による脱落、重篤な有害事象、めまい以外の個々の有害事象に有意差はなかった。
併用療法による「めまい」は単剤療法より多かった
めまいについては併用療法は単剤療法より有意に多いという結果だった。Z-drug以外のクラスの睡眠薬を調査した研究は全て1研究以下だったため、メタ解析を実施することができなかった。
不眠症状を伴ううつ病に対する抗うつ薬と新規睡眠薬の有用性の調査が必要
今回の研究により、不眠症状を伴ううつ病に対する抗うつ薬とZ-drugの有用性が示唆された。しかし、同メタ解析に含まれた研究のほとんどは短期試験であるため、長期使用における抗うつ薬とZ-drugの併用療法の有用性は不明だ。
「本研究により、安全性の高い新規睡眠薬と抗うつ薬の有用性を調査した研究がほとんど実施されていないことが明らかになった。今後、不眠症状を伴ううつ病に対する抗うつ薬と新規睡眠薬の有用性が調査されることが望まれる」と、研究グループは述べている。
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・秋田大学 プレスリリース