テネクテプラーゼ、脳梗塞治療でアルテプラーゼと同等の効果
急性期脳梗塞の治療薬として2月28日、米食品医薬品局(FDA)により承認された血栓溶解薬のTNKase(一般名テネクテプラーゼ〔tenecteplase〕)の有効性と安全性は、米国の大多数の病院で使用されている血栓溶解薬のアルテプラーゼと同等であるとする研究結果が報告された。テネクテプラーゼには、アルテプラーゼと比べて投与に要する時間が格段に短いというメリットもある。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのJustin Rousseau氏らによる本研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月12日掲載された。

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Rousseau氏らの説明によると、米国では毎年約80万人が脳卒中を発症し、その原因のほとんどは血栓が脳への血流を遮断することで生じる脳梗塞だという。アルテプラーゼは、1996年にFDAにより承認された血栓溶解薬であるが、投与に時間がかかるという欠点がある。同薬剤の投与プロセスは、最初に投与量の10%程度を1〜2分で急速投与し、その後、1時間かけて点滴で投与するというものであり、治療の中断や遅延を引き起こす可能性があると研究グループは指摘する。
これに対し、テネクテプラーゼはわずか数秒の注射で投与される。テネクテプラーゼは、血栓による心筋梗塞の治療薬としてすでに市場に出回っているが、急性期脳梗塞に対しては適応外で使用されていた。
今回の研究でRousseau氏らは、2020年7月1日から2022年6月30日の間に急性期脳梗塞に対する治療としてテネクテプラーゼを投与された9,465人(平均年齢69.6歳、女性47.6%)とアルテプラーゼを投与された7万85人(平均年齢68.5歳、女性48.6%)を対象に、有効性と安全性を比較した。有効性の主要評価項目は、退院時の機能的自立性(修正ランキンスケール〔mRS〕スコア0~2点)、副次評価項目は、退院時に障害がないこと(mRSスコア0~1点)、自宅退院、退院時の自立歩行であった。安全性の評価項目は、治療後36時間以内の症候性頭蓋内出血(sICH)、院内死亡、ホスピスへの退院、および院内死亡とホスピスへの退院の複合とされた。
その結果、対象者全体では、有効性と安全性の評価項目についてテネクテプラーゼ群とアルテプラーゼ群の間に有意な差は見られないことが明らかになった。一方、血管内血栓回収療法(EVT)適応があったが血栓溶解療法のみを受けた患者の間では、アルテプラーゼ群と比べてテネクテプラーゼ群で、自宅退院のオッズが有意に高く(調整オッズ比1.26、95%信頼区間1.03〜1.53)、院内死亡(同0.63、0.47〜0.85)、および院内死亡とホスピスへの退院の複合(同0.78、0.62〜0.97)のオッズは有意に低かった。
研究グループは、テネクテプラーゼとアルテプラーゼの有効性と安全性は同等であるが、投与の容易なテネクテプラーゼを使用することでEVTをより迅速に受けられるようになるなど、急性期脳梗塞の治療の柔軟性が高まる可能性があると見ている。
Rousseau氏は、「急性期脳梗塞の治療では、『時は脳なり』と言われる。効果的な治療が遅れるほど死滅する脳細胞が増え、予後が悪くなるからだ。本研究結果は、テネクテプラーゼがアルテプラーゼによる従来の治療法に代わる安全で効果的な治療法であり、場合によっては患者の回復を早める可能性があることを示唆している」とサウスウェスタン医療センターのニュースリリースの中で述べている。
▼外部リンク
・Short-Term Safety and Effectiveness for Tenecteplase and Alteplase in Acute Ischemic Stroke

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