患者により重症度が多様なHRSVD、数の多いSVD症例からの診断は困難
新潟大学は3月19日、HTRA1関連脳小血管病(HTRA1-related Cerebral Small Vessel Disease:HRSVD)の診断に有用な、新しい頭部MRI所見である「Chocolate Chip Sign」を見出したと発表した。この研究は、同大脳研究所脳神経内科学分野の安藤昭一朗助教、小野寺理教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Neurology Genetics」にオンライン掲載されている。

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脳小血管病(Cerebral Small Vessel Disease:SVD)は、脳内の細い血管に変性が起き、認知機能障害や歩行障害、脳卒中などを引き起こす疾患群である。加齢に伴い、SVDを呈する者は数多く存在する。中でもHTRA1変異によって生じるHRSVDには、CARASILと、その軽症型であるヘテロ接合性HTRA1変異に伴うSVDが含まれる。HRSVDには、若年性の禿頭や脊椎症、頭部MRIでのarc signという特徴的な所見がある。しかし、患者ごとに重症度が非常に多様であり、数多く存在するSVD症例から、HRSVDを診断することは容易ではない。研究グループは、この問題を解決するために、頭部MRIでHRSVDを画像的に捉える手がかりを探すことを目的に研究を進めた。
34人の患者のSWI、中脳周囲にチョコチップのような点状の低信号を多数確認
HRSVD8人、CADASIL12人、孤発性SVD14人の合計34人の患者を解析対象とし、頭部MRIのSusceptibility-Weighted Imaging(SWI)を比較した。その結果、HRSVD患者群では、中脳周囲に点状のSWI低信号が多数確認され、チョコチップのように散在して見えることから「Chocolate Chip Sign」と命名した。点状のSWI低信号が5個以上認められる場合、「Chocolate Chip Sign」陽性と定義したところ、HRSVDとCADASILや孤発性SVDをよく弁別できることがわかった。
「Chocolate Chip Sign」は患者の静脈拡張を反映
このSWI低信号が、3次元再構成では線状の構造物として観察でき、7テスラMRIでは脳実質外に認めていた。また、剖検した患者の脳血管を評価すると、CADASILや孤発性SVDの患者と比較して、HRSVDの患者の静脈が有意に拡張していた。以上から、「Chocolate Chip Sign」は静脈拡張を反映している所見であると結論付けた。
今回の研究では対象患者の数が限られているため、今後はより多くのHRSVDの患者で、「Chocolate Chip Sign」を認めるかを評価する。また、「Chocolate Chip Sign」が、疾患の重症度や進行予測の画像バイオマーカーとなり得るかも検討する予定、と研究グループは述べている。
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・新潟大学脳研究所 研究成果・実績