右側大腸に発生するSLを高精度に検出するには?
岡山大学は3月14日、酢酸・インジゴカルミン混合液を用いた新たな色素内視鏡観察法を開発し、従来の内視鏡観察法と比較して大腸ポリープの検出率が有意に高いことがわかったと発表した。この研究は、同大病院消化器内科の衣笠秀明助教を中心とした国内9つの医療機関(住友別子病院・福山市民病院・三豊総合病院・姫路赤十字病院・一宮西病院・岩国医療センター・高梁中央病院・津山中央病院)の共同研究グループによるもの。研究成果は「American Journal of Gastroenterology」のOriginal articleとして掲載されている。

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大腸がんは世界的に主要ながんの一つであり、特に右側大腸における大腸ポリープの1つである鋸歯状病変(SL)はその発生に深く関与している。しかし、SLは平坦で粘液に覆われているため、従来の白色光内視鏡観察(WLI)では検出が困難とされてきた。より高精度な内視鏡技術の開発が求められている。
SL検出率、WLI22.4%に対し酢酸・インジゴカルミン混合液使用で69.3%に向上
研究グループは今回、多施設共同ランダム化比較試験として、酢酸・インジゴカルミン混合液(AIM)を用いた色素内視鏡観察によるSL検出率について検討した。AMIによる大腸内視鏡観察は特別な技術や機器が必要なものではなく、どの施設でも施行可能なものだ。
その結果、AIMを用いた群は従来のWLIやインジゴカルミンのみの内視鏡観察(IC)と比較して、鋸歯状病変の追加検出率が有意に向上した(WLI vs. AIM:22.4% vs. 69.3%,p<.001;IC vs. AIM:5.8% vs. 69.3%,p=.001)。この結果より、AIMを用いることで従来の手法では見逃されていた病変をより効果的に検出できることが示された。
大腸がんの発生率低下につながると期待
研究成果は、大腸がんの早期発見・予防に大きく貢献する可能性がある。特に、右側大腸に発生するSLは従来の内視鏡では検出が難しく、見逃されることで大腸がんのリスクが増加していた。「AIMを用いることで検出率を向上させることができれば、より効果的なスクリーニングが可能となり、大腸がんの発生率低下につながると期待される。また、技術の普及により、医療コストの削減や患者の負担軽減にも寄与することが考えられる」と、研究グループは述べている。
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