日本医療安全調査機構は19日に公表した医療事故の再発防止に向けた警鐘レポートで、2018年以降に造影剤や抗菌薬、抗悪性腫瘍剤などの注射剤を血管内投与した後にアナフィラキシーショックに至り、死亡した事例が19例に上ることを公表した。同機構は、アナフィラキシーショックによる死亡を回避するためには注射剤投与後に初発症状が出現した時点で皮膚症状がなくてもアナフィラキシーを疑い、直ちに緊急コールとアドレナリン筋肉内注射を行うよう医療機関に注意喚起した。
対象となった19例で投与された注射剤は造影剤のヨード造影剤が8例、抗菌薬のβラクタム系抗菌薬が6例と多かった。最初に認めた症状では「苦しい」が6例、「気分不快」「掻痒感」が4例と続き、初発症状に皮膚症状がない事例が約7割に上った。注射剤投与から初発症状まで中央値で2分、初発症状出現から心停止まで7分と短時間で症状が進行していた。
具体例を見ると、60歳代の直腸癌患者はCT検査室でヨード造影剤(イオメプロール)を注入直後、咳嗽が出現。初発症状から1分後(撮影中)に気分不快があり、2分後(撮影終了時)には著明な眼結膜充血、冷汗などを認め、医師等へ連絡した。5分後に嘔吐し意識レベルが低下し、アドレナリン0.3mgを筋肉内注射して緊急コールして8分後に血圧測定不能となり救急処置を実施したものの、約1時間後に死亡した。
これらを踏まえ、同機構はショック状態に至る前にアナフィラキシーの初発症状を捉え、直ちに緊急コール、大腿前外側部にアドレナリン筋肉内注射を行うよう提言。アナフィラキシー対応の備えとして、直ちに緊急コールとアドレナリン筋肉内注射ができるよう緊急対応のプロトコールを作成し、周知・訓練するよう医療機関に呼びかけた。
警鐘レポートは、医療機関から医療事故としてセンターに報告された医療事故調査報告書をもとに、迅速に注意喚起することで死亡回避につながると考えられたものを整理・分析し、専門的知見・医療安全の観点から予期せぬ死亡につながった要因、回避するための再発防止策を焦点化し、臨床現場に情報提供することを目的としている。