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認知症予防に「楽器のグループ演奏活動」が寄与の可能性-東北大ほか

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2025年03月24日 AM09:20

「グループで音楽セッション実施」した場合の効果はよくわかっていない

東北大学は3月12日、楽器未経験の健常高齢者を16週間、グループ音楽セッションに参加するグループと参加しないグループに分けて介入を実施したときの認知・心理機能への影響を調査し、介入群において全般的な認知機能、言語性記憶、気分状態が有意に改善したことがわかったと発表した。この研究は、同大スマート・エイジング学際重点研究センターの品田貴光助手、瀧靖之教授らと株式会社池部楽器店の研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Aging」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

世界的に高齢化が進んでいる中、認知症の発症率が増加している。日本においては、認知症による年間の経済的損失が12兆円を超えると推定されており、その予防策の確立が求められている。楽器演奏は聴覚・視覚・触覚を同時に使用して脳の広範な領域でさまざまな情報処理を必要とし、先行研究では楽器演奏による認知・心理機能の改善が明らかになっており、認知症の予防策として有効と考えられる。これまでの研究では「1人で行う楽器演奏」の介入効果について検討されてきたが、健常高齢者における「グループ音楽セッション」の効果(複数種類の楽器によるバンド演奏)の研究は限られていた。

楽器未経験の高齢者対象、90分間のグループ演奏を16週実施してもらい評価

今回研究グループは、65~74歳の楽器未経験の高齢者27人を対象に、グループ音楽セッショングループと、そうでないグループにランダムで分かれ、16週間、毎週90分間の介入を実施した。グループ音楽セッションでは、講師がピアノで簡単な曲(童謡や歌謡曲)のメロディを弾き、それに合わせて被験者がそれぞれベースギター、キーボード、ドラムを演奏した。グループ音楽セッションに参加しないグループ(コントロールグループ)においては、被験者は普段通りの生活を16週間過ごした。介入期間前後で両グループにおいて認知機能検査および心理機能検査を実施し、脳と心の健康の変化を調査した。

グループ演奏の参加者で認知・心理機能の改善

調査の結果、音楽セッショングループにおいて、全般的な認知機能()、言語性記憶(WMS-LMⅡスコア)、気分状態(POMS2:活気-活力スコア)が改善した(p=0.05)ことがわかった。

今回の研究においては、楽器未経験の健常高齢者においてグループ音楽セッションの認知機能と心理機能への改善が明らかになった。研究成果は、グループ音楽セッションが高齢者の脳と心の健康維持・向上させ、健康寿命延伸に寄与する可能性を示唆している。「今後、神経生理学的データ(MRI等)を用いた研究を進めて、グループ音楽セッションの有効性のメカニズムの解明が求められる。また、認知症予防プログラム開発においてグループ音楽セッションを取り入れることが期待され、より効果的なグループ音楽セッションのデザインを検討していく必要がある」と、研究グループは述べている。

 

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