小児の急性重症呼吸不全、救命治療の確立は不十分
東京大学医学部附属病院(東大病院)は3月11日、小児の急性重症呼吸不全に対する救命治療として生体肺移植が有効である可能性を示したと発表した。この研究は、東大病院呼吸器外科の佐藤雅昭教授らの研究グループによるもの。

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これまで、10歳未満の小児におけるECMO(体外式膜型人工肺)管理下での生体肺移植の報告はなく、また、急性重症呼吸不全に対する救命手段の確立も進んでいなかった。研究グループは2024年に、小児2例に対し、ECMOで生命維持を行いながら地元施設から東大病院に患者を搬送し生体肺移植を実施した。
直前まで通学もウイルス感染によるARDSを発症した女児、肺移植実施後の経過良好
1つめの症例は、直前まで元気に通学していた10歳未満の女児で、ウイルス感染による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症し、ECMO管理下での生体肺移植が唯一の救命手段と判断された。東大病院に搬送後、両親をドナーとする生体肺移植を実施し、術後経過は良好で、患児は肺移植から約1か月後に地元病院へ転院、最終的に自宅退院した。
別疾患治療で薬剤アレルギーと思われるTENを発症した男児、移植後の経過は良好
2つめの症例は10歳未満の男児で、やはり直前まで元気に通院しており、別の疾患の治療過程で生じた薬剤アレルギーによると思われる中毒性表皮壊死症(TEN)を発症し、それに続発する形で急性呼吸不全が進行した。ECMO導入後も改善が見られず、生体肺移植が唯一の救命手段と判断された。東大病院に搬送後、両親をドナーとした生体肺移植を実施し、術後経過は良好で、患児は肺移植から約1か月後に地元病院へ転院、術後半年を前に自宅退院となる見込みである。
地元医療機関との情報共有、院内各診療科との密接な連携が成功の鍵
今回の発表では、急性の重症呼吸不全を呈した10歳未満の小児においてECMO管理下での生体肺移植を成功させた症例を報告した。これにより、小児の急性重症呼吸不全に対する救命治療として生体肺移植が有効な選択肢となりうることが示された。特に、地元医療機関とのタイムリーな情報共有、東大病院内の呼吸器外科と小児集中治療室(PICU)、心臓外科、臨床工学部、麻酔科等との密接な連携が成功の鍵となった。
小児の重症呼吸不全において、新たな救急治療指針の確立につながると期待
10歳未満の小児において、ECMOで橋渡しをした生体肺移植の実施は非常にまれである。またこれまでの事例と比較し、もともと元気に過ごしていた子どもが急性に重症呼吸不全を発症し、その救命治療としての生体肺移植の有効性と安全性を示した点で新規性がある。この成果は今後、小児の重症呼吸不全・救急治療に対する新たな治療指針の確立に貢献することが期待される。「今後は、さらなる症例の蓄積と長期予後の検討を行い、小児の肺移植医療の発展に貢献することが期待される」と、研究グループは述べている。
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・東京大学医学部附属病院 プレスリリース