厚労省の薬局機能検討会での取りまとめでは、予め処方・調剤された医薬品を患者宅に配置しておくことや、一般用医薬品で臨時的に対応することが困難な場合、訪看STに必要な医薬品を準備し医師の指示で使用するとされ、対象薬剤として輸液(体液維持剤)が考えられるとしていた。
この日のWGで日本訪問看護財団は、「訪看STの配置薬剤の拡充が地域の実情に応じた選択肢となる結論は現場にとって朗報」と歓迎しつつ、「対象となる患者の状態と使用する薬剤の範囲拡大が必要。特に脱水症状に対する輸液、湿布、下剤、ステロイド軟膏、解熱鎮痛薬、感冒薬等の追加」を訴える意見を表明した。
また、訪看STが必要時に卸売販売業者から必要な薬剤を円滑に入手できるよう卸売販売業者への周知、必要時に薬剤が在宅療養を行う患者の症状緩和に使用できるよう医師、看護師、薬剤師等の在宅医療に従事する職種への周知、制度運用後の対象薬剤の見直し等も求めた。
佐々木淳専門委員(医療法人社団悠翔会理事長)は、「輸液だけでは現場の課題は改善しないと確信する。基本的には医師の指示に基づいて使用するため、医療用麻薬等を除けば制限をかける理由はない」と指摘。
伊藤由希子専門委員(津田塾大学総合政策学部教授)も「湿布、鎮痛薬、軟膏も無理となるのは疑問」とした上で、輸液については「具体的な通知がなければ現場は動けない。当事者間の合意があれば配置可能という認識だが、蓋を開ければ関係団体が反対するなど、実質的には変化なしということがないよう具体的な設計が必要」との考えを示した。
これらの意見に対して、厚労省の佐藤大作大臣官房審議官(医薬担当)は「多職種間で議論してコンセンサスを得たものが輸液で、他の薬剤も対応できるかは議論が必要。湿布やステロイドなどは協議の上、患者宅に事前に処方して配置するのが基本と考えている」との考えを示した。
ただ、高山義浩専門委員(沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科副部長)は「事前処方はある意味で過剰処方となり、この無駄は若い世代に負担させている。訪看STに配置しておく方が無駄を省く意味でも適切で、薬局やドラッグストアがない離島・僻地では基本的な薬剤があれば、在宅患者だけでなく救急医療を適正に維持できる」と主張した。