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Desbuquois骨異形成症、脱臼の予防につながる糖鎖の異常を発見-岩手大ほか

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2025年03月19日 AM09:20

CANT1遺伝子変異を原因とし高頻度の脱臼を起こす疾患、腱の異常に着目

岩手大学は3月12日、CANT1遺伝子が働かなくなったマウスの腱では形態と糖鎖の合成に異常が起きていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院獣医学研究科の古市達哉教授ら、、酪農学園大学、、国立国際医療研究センターの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Molecular Sciences」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脱臼とは関節が外れて、骨の位置が関節からずれてしまう状態で、転倒や自動車事故、運動選手の過剰なトレーニングなどによって脱臼することがある。一方、脱臼は遺伝的な原因によって発症することもあり、Desbuquois骨異形成症というヒトの遺伝病の患者は高頻度に脱臼を起こす。Desbuquois骨異形成症はCANT1遺伝子の変異が原因で発症するが、CANT1の機能異常によって脱臼が起きる原因は長らく不明のままだった。

研究グループらは、ゲノム編集技術を用いて、CANT1が全く働かなくなったマウス(CANT1欠損マウス)の作製に成功しており、このマウスはDesbuquois骨異形成症とよく似た病態を示すことを報告していた。腱は骨と筋肉をつなぎ留める役割を担っており、事故などによって腱が切断されると脱臼が起きる。従って、Desbuquois骨異形成症によって起きる脱臼は腱の異常が原因であるという仮説を立て、CANT1欠損マウスの腱を詳しく調べることにした。

CANT1欠損マウスの腱、円形のコラーゲン細線維が立方状に変形

腱の組織切片を光学顕微鏡で観察した結果、出生直後のCANT1欠損マウスの腱に異常は認められなかったのに対し、1か月齢のCANT1欠損マウスの腱幅は正常マウスよりも、かなり小さくなっていた。次に6か月齢マウスの腱を電子顕微鏡で観察した。腱はコラーゲンという分子が集合してできており、正常マウスの腱では円形のコラーゲン細線維が規則正しく配置している像が観察された。一方、CANT1欠損マウス腱のコラーゲン細線維は立方状に変形しており、隣同士のコラーゲン細線維の距離が近くなっていた。CANT1欠損マウス腱ではコラーゲン細線維の形態と走行に異常が生じていることがわかった。

コラーゲン細線維を束ね正しく走行させるデコリン、CANT1欠損マウスではDS/CS糖鎖が短縮

腱のコラーゲン細線維は、デコリンという分子によって規則正しく走行するように束ねられている。デコリン分子では、そのコアタンパク質にデルマタン硫酸(DS)またはコンドロイチン硫酸(CS)という糖鎖が一本結合している。CANT1欠損マウス腱のDS/CS含量は、正常マウス腱と比べ大幅に減少していた。さらにCANT1欠損マウス腱でつくられるデコリンの分子量は、正常マウスのデコリンよりも小さくなっていた。コアタンパク質の分子量は正常であったので、CANT1欠損マウス腱ではデコリンに付加しているDS/CS糖鎖が短くなっていることがわかった。

、腱においてDS/CS糖鎖の産生を調節する酵素と判明

CANT1は腱におけるDS/CS糖鎖の産生を調節している酵素であることが明らかとなった。CANT1欠損マウス腱では、デコリンに付加しているDS/CS糖鎖が短くなっており、それによってコラーゲン細線維を正常に束ねることができずに、腱に異常が生じていることがわかった。この異常によって、CANT1欠損マウスの腱では荷重に耐える力が弱まり、脱臼を起こしやすくなっていると考えられる。

腱への正常DS/CS糖鎖の補充が、患者の関節脱臼を予防できる可能性を示唆

今回の研究から、正常なDS/CS糖鎖をDesbuquois骨異形成症患者の腱に補充することによって、多発する関節脱臼を予防できる可能性が示された。CS/DS糖鎖はグリコサミノグリカンという種類の糖鎖で、DS鎖はブタの腸、CS鎖はサメの軟骨などから大量に抽出される。「今後はCANT1欠損マウスを用いて、この補充療法の有効性を検討していく」と、研究グループは述べている。

 

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