腎臓オルガノイド、動物実験なしでサプリメントなどの影響評価が可能と期待
岡山大学は3月7日、ラットの腎臓細胞から作った「ミニ腎臓(腎臓オルガノイド)」を活用し、薬が腎臓に与える影響を調べる方法を開発したと発表した。この研究は、同大学術研究院医歯薬学域(医)腎・免疫・内分泌代謝内科学の辻憲二助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Nephrology」にオンライン掲載されている。

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小林製薬株式会社の「紅麹コレステヘルプ」などのサプリメントを摂取した人の中で、腎機能が低下するケースが報告され、日本で大きな健康問題となっている。これまでの調査では、腎臓の「尿細管」という部分が傷ついたり炎症を起こしたりする可能性が指摘されているが、詳しい原因はまだわかっていない。サプリメントには多くの成分が含まれており、影響を特定するのは難しく、従来の調査では時間と精度に課題がある。また、動物実験は時間がかかるうえ、3R(代替・削減・改善)の観点からも制約がある。そこで、より迅速かつ正確に評価できる代替手法として「ミニ腎臓(腎臓オルガノイド)」の活用が期待されている。
「紅麹コレステヘルプ」が腎臓に与える影響をラット由来のミニ腎臓で評価
研究グループは、ラットの腎臓の幹細胞から作った「ミニ腎臓」を使って、「紅麹コレステヘルプ」が腎臓に与える影響を調べた。研究グループが作製したミニ腎臓は、腎臓に特徴的な「尿細管」と「糸球体」と呼ばれる構造を持つことが確認されている。
健康被害報告のロットで、抗がん剤シスプラチンと同様のダメージを確認
このミニ腎臓に、健康被害が報告された製品ロットの「紅麹コレステヘルプ」を加えたところ、尿細管の細胞壁の菲薄化、管腔構造の断裂などの変化が見られ、腎臓に強い毒性を持つ抗がん剤「シスプラチン」を加えたときと同じようなダメージが確認された。さらに、「アポトーシス」と呼ばれるプログラム化された細胞死を認める細胞が増加した。
この結果から、特定の製品ロットの「紅麹コレステヘルプ」が腎臓の細胞を直接傷つけ、それが原因で腎臓の病気を引き起こした可能性が考えられる。
食品や薬における腎臓への安全性、速く正確な評価につながると期待
「今後、被害情報のあるロットにおいて検出が報告されている化合物プベルル酸を使って調べることで、腎障害の原因をさらに解明できる可能性がある。さらに、この技術を活用すれば、腎臓に影響を与える可能性のある食品や薬の安全性を、より早く正確に評価できることが期待される」と、研究グループは述べている。
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