加齢によるエピソード記憶能力の減退を緩和するには?
富山大学は3月7日、これまで大がかりな測定システムでしか行えなかった「エピソード記憶」(出来事に関する長期記憶)能力を、誰でも・いつでも・どこでも高精度に検査できるスマートフォンアプリを開発し、その特許が登録された(発明の名称:エピソード記憶能力改善装置、特許番号:第7583773号)ことを明らかにした。この開発は、富山大学学術研究部工学系の田端俊英教授、キュアコード株式会社の共同研究グループによるもの。特許に関する研究成果は、「Medicine」に掲載されている。

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日本では少子高齢化が進行し、加齢によるエピソード記憶能力を含む認知機能の減退が、高年齢者の生活の質を低下させ、多くの産業で深刻な人手不足が生じている。こうした問題を解決するため、政府は高年齢者の健康寿命の延伸と生涯現役で働ける社会の実現を国の目標に掲げている。近年、デジタル化の進展に象徴されるように、あらゆる産業で知識集約化が進み、働き手は常に新しい技術の習得を求められるようになっている。そのため、生涯現役社会を実現するには、学習の入口となるエピソード記憶能力の加齢による減退を緩和することが重要だ。また、エピソード記憶能力の加齢による減退を緩和することは、高年齢者の生活の質の向上にも重要と考えられる。
能力検査に加え、ウェアラブル端末と連動し有酸素運動をユーザーに指示する機能も搭載
開発したアプリは、ユーザー(被験者)に学習すべき課題画像を多数提示し、一定時間が経過した後に、学習した画像を再認識できるか否かを問う。スマートフォンを用いて、学習課題の提示から被験者の再認識検査まで、全てのプロセスを自動で実行する。これまで、大がかりな測定システムでしかエピソード記憶能力の検査を行うことができないという課題があったが、開発したのはスマートフォンアプリであるため、誰でも、どこでも、いつでもエピソード記憶の検査を実施できる。さらに、オプション機能として、学習直後に有酸素運動を指示する機能も備えている。ウェアラブル端末と連動し、有酸素運動がエピソード記憶の定着を促進するのに最適な強度となるよう、ユーザーに指示を出す。このオプション機能により、ユーザーはエピソード記憶能力の減退を緩和する行動変容を体験しながら学習できる。
今後、大人数の集団での効果を検証
今後は、広く共同研究先(民間企業等)を募り、大人数の集団に開発したアプリを繰り返し利用してもらうことで、長期的にエピソード記憶能力がどのように変化し、かつ有酸素運動がどのような効果を及ぼすのかを詳しく調査していく。「生涯にわたって本アプリを有効に活用する方法を確立したいと考えている。また、将来的に販売先となる民間企業を見出し、本学とキュアコード株式会社が共同で製品化を進めていきたい」と、研究グループは述べている。
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