母子8万組超のデータより、幼児期の機能性便秘と毎日の歯磨き回数との関連を調査
東北大学は3月7日、環境省が実施している子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の8万3,660組の母子を対象に、機能性便秘の有無と、毎日の歯磨き回数(2歳、4歳時点)との関連について解析結果を発表した。この研究は、同大病院顎口腔機能治療部の土谷忍助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。

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過敏性腸疾患などの消化器疾患患者では、重度の歯周炎が認められる。このことから、近年は口腔細菌と腸内細菌叢の密接な関連が研究されている。昔から食事中の咀嚼やガムを噛むなどの口腔刺激は、腸の運動を促進し、排便を改善することから、臨床的にもリハビリや行動療法として応用されている。脊髄損傷患者を対象として1日2回、5分間の歯磨き介入を実施することで、重度の機能性便秘が改善することを示した報告がある。一方、子どもの歯磨き習慣と機能性便秘との関連については不明だった。
研究グループは今回、環境省が実施している子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)のデータを用い、子どもの歯磨き習慣と機能性便秘との関連について検討を行った。8万3,660組の母子のデータ(進行中の全国的な前向き出生コホート研究の全固定データ)を使用して、幼児期の機能性便秘(3歳と4歳時それぞれ、RomeⅢ基準の2つ以上の項目で該当あり)と毎日の歯磨き回数(2歳と4歳時、1日2回以上、1日1回、1日1回未満の3群)との関連を調査。保護者に記載してもらった自記式質問票には母親(出産年齢や回数、喫煙・飲酒歴など)や子ども(性別や食事回数、カウプ指数など)の要因に関する質問も含まれており、機能性便秘の罹患と関連する項目として調整に用いた。
日常的な歯磨き回数「減」とともに、機能性便秘罹患率「増」
解析の結果、機能性便秘に罹患していたのは、3歳時は1万123人(12.1%)、4歳時は8,820人(10.5%)で、3歳および4歳の両方で機能性便秘(慢性的な機能性便秘)だったのは3,659人(4.4%)。日常的な歯磨き回数が減るとともに、機能性便秘の罹患率が増加した。2歳時の歯磨き習慣と3歳時の機能性便秘の関係(調整オッズ比[95%信頼区間])では、適切な歯磨き回数(1日2回以上)の群と比較して、1日1回の群で1.12(1.07~1.17, p<0.001)、1日1回未満(歯磨きを毎日はしていない)の群では1.46(1.12~1.89, p=0.005)だった。これらの傾向は4歳時の機能性便秘においても同様であった。また、慢性的な機能性便秘(3歳および4歳の両方)を対象とすると、2歳時の歯磨きが1日1回の群で1.22(1.14~1.31, p<0.001)、1日1回未満の群では1.62(1.14~2.31, p=0.008)だった。
機能性便秘の治療歴・食習慣などを踏まえた研究を
今回の研究では、毎日の歯磨き習慣と子どもの機能性便秘が関連している可能性が示唆された。しかし、エコチル調査では機能性便秘の治療歴や家庭での育児環境(トイレトレーニングなど)、食習慣(野菜の摂取量など)についての情報が不足しており、それらを含めたさらなる研究が必要と思われる、と研究グループは述べている。
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