緑内障を眼底写真から専門医レベルで迅速・正確に判定するにはAIのサポートが必要
東北大学は3月3日、眼科専門医レベルの緑内障診断AIの開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科眼科学分野の中澤徹教授、シャルマ・パーマナント准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「npj Digital Medicine」に掲載されている。

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緑内障は日本で失明原因第1位の疾患であり、発症する人は年々増え続けている。緑内障による視野障害を回復させることはできないため、早期発見・早期治療により進行を遅らせることが不可欠だ。
緑内障の早期発見には検診が重要で、眼底写真から緑内障に特徴的な視神経乳頭所見を見つけることが大切だ。しかし、初期緑内障の場合は視神経乳頭や眼底の変化も微小であり、普段から緑内障の診療を行っている眼科医でないと見落としてしまう可能性がある。さらに、検診では多くの眼底写真を読影する必要があるため、一枚一枚の写真を吟味する時間が限られている。また眼科医の数が限られている地域が多数あり、眼科専門医の読影を受けられない状況も想定される。
このような課題を解決し、多数の眼底写真を眼科専門医レベルの精度で迅速かつ正確に判定していくために、AIのサポートが求められている。また、正確な眼底写真読影を可能にするため、眼科専門医の読影過程を模したAIの開発も待ち望まれている。
眼科専門医の診断過程を模した高精度な緑内障スクリーニングAIを開発
研究グループは今回、AIを活用した「緑内障スクリーニング(AI-GS)ネットワーク」を開発した。このAI-GSネットワークは、緑内障の診断に重要な所見(視神経乳頭出血、網膜神経線維層欠損、視神経乳頭陥凹拡大)を個々に判定するための専用AIモデルを作成し、それぞれの結果をふまえて統合的に緑内障の有無を判定するAIモデルだ。
8,000枚の眼底写真を用いたテスト、感度93.52%/特異度95%
このような手法を取ることで、従来のAIシステムを大きく上回る性能を発揮し、8,000枚の眼底写真を用いたテストでは感度93.52%、特異度95%を達成した。特に、眼底写真の変化が小さい初期緑内障を高精度で検出できる点が大きな強みである。またAI-GSネットワークが出力する結果は、それぞれの確信度を数値によって出力することが可能である。従来のAIは「ブラックボックス」であり、AIによる判定の根拠が不明だったことに対して、研究チームが開発したAIは結果の根拠や確信度を数値によって出力するため、読影医がAIの判断根拠を理解することができる。
さらにAI-GSネットワークの強みは軽量設計であることである。画像の読影結果も1枚あたり1秒未満で出力が可能で、携帯型デバイスで活用することも可能となる。
眼科医が限られた地域でも、多くの人が緑内障早期発見の機会を得られる可能性
今回開発されたAIモデルは軽量であるため、携帯型デバイスや低リソース環境においても利用が期待できる。また、眼科医が限られた地域でも高度の眼底読影が可能となり、より多くの人々が緑内障早期発見の機会を得られると期待される。
「緑内障スクリーニングにおいて、専門医と同等の診断性能を持つAIを活用した大規模なスクリーニングを行うことが期待される」と、研究グループは述べている。
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