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死後脳研究、ブレインバンクへの提供意思登録者に意向調査-京大ほか

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2025年02月27日 AM09:00

提供意思を登録した88人を対象に郵送で調査

京都大学は2月14日、東京都健康長寿医療センターの「」(死後脳のバンク)への提供意思を登録した88人を対象に郵送調査を実施し、得らえた回答についてまとめ、発表した。この研究は、同大大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療倫理学分野の井上悠輔教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Neuropathology」に掲載されている。

近年、死後脳研究は神経疾患や精神疾患の解明に重要な役割を果たしている。こうした研究活動には、研究参加に協力する人の存在が欠かせない。一方、日本では、解剖写真のSNS投稿が大きな話題になったように、身体の取り扱いや流通のあり方について、多くの人々が関心を持っている。研究に参加する意思を表明した市民・患者の視点に寄り添い、その背景や関心をより深く知る作業が研究側にも求められると考え、研究グループは、ブレインバンクへの提供意思を登録した88人を対象に郵送調査を実施し、52人から回答を得た(回答率59.1%)。今回は調査の一報である。

「死後にどのような流れで提供がなされるか」「家族への情報の充実」に関する意見

その結果、以下のことがわかった。貢献・協力姿勢を支える要素•協力の意向の背景として、「医学・研究に貢献したい」という思いが一番多く挙げられた。ただ、これが単一の背景というよりは、「受けた医療への感謝」「家族・周囲の影響」など、実際には複数の思いや動機が連なり、重なって表明に至っていることが多い傾向だった。また、登録者の年齢・立場による違いもみられた。

一層の情報提供が期待される内容•意思について、表明をした後も、研究の進展について継続的に関心を持ち続けていることがわかった。死後にどのような流れで提供がなされるか、家族への情報の充実を求める視点が示された。

ブレインバンクに限らず今後の研究活動において重要な視点を提供する成果

今回の研究により、本人の関心や懸念に応じたコミュニケーションの重要性、家族向けガイダンスの充実や、研究成果の定期的な発信の重要性が明確になった。研究グループは、今後もインタビュー調査などを通じてより検討を深める取り組みを続ける予定としている。

研究の成果にについて、井上教授は次のように述べている。「遺体研究やブレインバンクは、医療・研究と社会との間にあり、一つひとつの出会いを大事にして積み上げられてきたものであることを改めて実感している。解剖や死後の研究参加の話は、年末の報道では大きな話題になったが、従来、社会的に注目を集めることは多くない。世代をまたいで、患者・家族と医療者・研究者との共同作業で活動が積み重ねられていることや、今後も続けていくためにどのような取り組みが必要かを、引き続き考えていきたい。これまで、研究倫理の文脈でも、遺体や死後の話はほとんど議論されてきていない。その人が生きていることを前提とした配慮・保護の議論の延長のみで、医学研究をカバーし切れるのか、問題意識を持ってきた。死後の研究参加は人や他者を信頼し、そこに託す視点が強くなる。この視点は、ブレインバンクに限らず、現在・将来の研究活動にとって大きな広がりがある概念だと考えている」。

 

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