未来塾は、医薬品供給について、多国間の取引である以上、各国の薬事制度、為替を含む価格水準、輸出入管理政策、関税制度などが影響すると共に、国内需要と原薬調達のタイムラグ、中国など特定国に依存する原薬調達における安全保障問題、国内の多段階にわたる流通など「複雑かつ多岐にわたる問題」と指摘。そのため、一企業の対応に委ねるのではなく「サプライチェーン全体の問題として捉えられるべき」との認識を示し提言をまとめた。
厚生労働省に対しては、医薬品供給に責任を負う立場から、平時からサプライチェーン全体の状況を把握できる体制を整備すると共に、民間と共に安定供給のための枠組みの構築を図るべきと訴えた。
提言では「別枠の予算の常時確保」「最低薬価の引き上げ」「国内に製造施設を有する医薬品企業への優遇税制等」のほか、「流通改善ガイドラインの微修正」として同ガイドラインにおいて別枠の交渉とすべき安定確保医薬品の範囲をカテゴリーAだけでなく、Bも含めることを求めた。
また、「医療用医薬品の製造場所、原料調達国のモニタリング」を政府に求め、「高度なセキュリティ体制を維持しながら、医療用医薬品(まずは安定確保医薬品から)の製造場所(特に国)をデータベース化し、モニタリングすること」を提言。早急な検討を促した。
そのほか「経済成長と安全保障のためのインパクトのある投資とメリハリのついた支援強化」として、今後創設する基金等による支援策を「よりインパクトのある規模とし、対象分野をよりきめ細やかにメリハリをつけ、投資誘因力を向上させる必要がある」と対応を求めた。
この中では「低分子医薬品から高分子医薬品まで、また再生医療等製品などに関して、製造技術は近年、飛躍的に進歩している。これらの技術開発・導入、製造場所としての誘致およびアジアへのサプライチェーンのハブとしての存立が一つの可能性ではないか」と問題提起した。
抗菌薬については、医療上の必要性の高さから、短期的対策として専用製造設備が必要で、新設には3年近くの年月が必要となることを踏まえ「既存設備において有事に備えた十分量を製造し、政府による一定量の買い取りと備蓄を実施すべき」と提言した。
中期的には「公衆衛生の維持・向上のために必要不可欠な薬剤であるため、抗菌薬を実勢価に基づく薬価改定の対象品目から除外し(改定除外)、抗菌薬メーカーの事業の持続可能性が担保できる薬価の評価方法を取り入れるべき」と対応を求めた。
さらに政府に対し、設備更新に必要な資金面での支援または将来必要となる設備投資費用を見込んだ薬価の設定、平時における生産余力の維持コストも反映した現状薬価を超える特例薬価を講ずることを求めた。