脊椎の転移性骨腫瘍、軽微な段階で早期診断するには?
キヤノンメディカルシステムズ株式会社(以下、キヤノンメディカル)は2月13日、時系列のCT画像の差分から転移性脊椎腫瘍の脊柱管内浸潤の疑いがある領域の可視化を支援する技術を開発したと発表した。この研究は、同社と国立がん研究センター中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科の中谷文彦医長、放射線診断科の三宅基隆医長らの研究グループによるものだ。

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近年の治療の進歩により、多くのがんにおいて進行を抑制し長期生存が得られるようになったが、肺がん、乳がん、前立腺がんなどは骨転移をきたしやすく、それ以外のがん患者でも長期の経過中に転移性骨腫瘍が発生しうるため、患者のQOLに大きく影響する転移性骨腫瘍への警戒が必要だ。特に転移性脊椎腫瘍においては、骨破壊や神経障害よって引き起こされる疼痛の緩和を行い、脊髄の圧迫による四肢麻痺・膀胱直腸障害などを予防することが重要だ。ひとたび脊髄の損傷により完全麻痺になると手術等の治療による神経回復は困難なことも多く、パフォーマンスステータスが低下し、身体的・社会的な要因から積極的な治療継続が困難となり、結果として予後が悪化する要因となる。また、がん終末期において自分自身で動くことができなくなることは精神的にも多大な影響を及ぼす。脊髄の損傷による麻痺を予防するためには、転移性骨腫瘍の中でも特に脊椎の転移性骨腫瘍を、症状がない、もしくは軽微な症状の段階で早期診断し、適切に治療が行えるようにする対策が必要だ。
既存の読影支援アプリ、脊柱管内の可視化は未対応
その対策として、がん診療におけるフォローアップ目的で日々用いられる胸腹部CT検査において早期診断することが重要であるが、膨大な画像情報から脊椎の転移性骨腫瘍を遺漏なく診断するのは、従来の画像確認方法では現場の負担が大きくなるという課題があった。
また、同社の読影支援ソリューション(製品名:Abierto Reading Support Solution)の機能であるTemporal Subtraction For Boneは、経時的な位置合わせ技術によって、CTにおける骨領域に対する経時変化の確認を支援することが可能であるが、骨外は差分処理の対象外であるため、転移性脊椎腫瘍のなかでも脊髄圧迫をきたすような、脊柱管内の状態を可視化するようなシステムの開発が期待されていた。
経時的なCT画像を用い、脊柱管内の差分領域を表示する機能を開発
今回研究グループは、がん患者のフォローアップのために定期的に撮影する経時的なCT画像を用いて位置合わせを行い、差分の画像から脊椎・脊柱管の形状を踏まえた情報を用い、腫瘍の脊柱管内への浸潤の可能性がある領域の可視化を支援する技術を開発した。
今回得られた知見や技術を応用することで、脊髄圧迫のリスクが高い転移性脊椎腫瘍の診断が容易になった場合、がん患者のQOLの維持、さらには積極的ながん治療継続の助けにつながることが大いに期待される。同社は、「サービスの社会実装に向けて、同技術を搭載した製品の早期市場導入を目指す」としている。
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