アナフィラキシーは暖かい季節に多く発生するが、詳細は未解明
東京科学大学は2月13日、2011年から2022年までの全国規模の入院データを解析し、気温が高いとアナフィラキシーによる入院リスクが増加することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野の那波伸敏准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Allergy」にオンライン掲載されている。

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アナフィラキシーは、急性発症を特徴とする重篤な全身性アレルギー反応。主な誘因として、食物や昆虫刺傷が挙げられるが、医薬品や造影剤なども誘因となることが知られている。アナフィラキシーは、命に関わる場合もあるため、そのリスク因子を解明することが重要だ。
これまでの研究で、アナフィラキシーが暖かい季節に多く発生することが報告されていた。しかし、気温とアナフィラキシーの関連性を詳細に検討するためには、日々の患者の入院データと気象データを連結して検討する必要がある。
全国規模の入院データと気温データを解析、真夏日に入院リスク49%増
そこで研究グループは、全国規模の日ごとの入院データと気象庁の気象データを活用し、気温とアナフィラキシーによる入院リスクとの関連を明らかにすることを目的として研究を実施した。
研究期間中である2011年から2022年までのアナフィラキシーによる入院患者数は5万5,298人に上り、1日の平均気温が高くなると、アナフィラキシーによる入院リスクが上昇することが確認された。特に、99パーセンタイルに該当する極めて高い日平均気温(30.7度)にさらされた場合、入院リスクが49%増加することが明らかになった(95%信頼区間: 19%~85%)。
食物性などのアナフィラキシーが特に高リスク、医療処置関連では影響なし
さらに、アナフィラキシーのタイプ別に解析を行った結果、高気温への曝露と入院リスクの関連性は、医療処置や治療に関連するタイプのアナフィラキシーでは認められなかった。一方で、医療処置や治療とは無関係な食物性などのアナフィラキシーのタイプでは、この関連性が特に顕著であることがわかった。これは、医療処置や治療が通常、気温が管理された医療施設内で行われるため、高気温の影響を受けにくいことが要因である可能性がある。
高気温とアナフィラキシーによる入院リスクの関連メカニズムの一つとして、熱への曝露が「暑い日の食事パターンの変化」「昆虫刺傷や花粉曝露の増加」などの要因を介して間接的にリスクを高める可能性が考えられる。また、気温の上昇により屋外活動が増えることで、環境アレルゲンへの曝露や昆虫刺傷の機会が増加し、アナフィラキシーのリスクがさらに高まる可能性がある。さらに別の可能性として、高気温への曝露が呼吸器系や消化器系の症状を増幅し、アナフィラキシーの重症化につながることも示唆される。
気候変動による健康リスク、エビデンスに基づく予防策に期待
今回の研究結果から、暑い日には「虫刺されや花粉への適切な対策を行う」「アレルギーのある食品や、普段食べ慣れていない食品の摂取に注意を払う」などの予防策を講じることが重要だと考えられる。また、同研究は、気候変動が人間の健康に悪影響を及ぼす可能性を示す更なる証拠であり、公衆衛生の観点からも、気候変動対策を急ぐ必要性を強く訴えるものだ。
「今後の研究では、これらのメカニズムをさらに詳細に解明することが必要だ。また、気候変動による気温上昇が健康に与える影響を包括的に理解することで、効果的な予防策や公衆衛生対策の構築が期待される」と、研究グループは述べている。
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