クローン病と潰瘍性大腸炎で複数年の安全性・有効性を立証した唯一のIL-23p19拮抗薬
日本イーライリリー株式会社は2月20日、米イーライリリー・アンド・カンパニーが2月7日に、中等症~重症の活動期クローン病の治療のために「オンボー(R)(ミリキズマブ)」の投与を2年間受けた患者(うち43.8%は生物学的製剤が効果不十分であった患者)の大多数で、長期にわたり臨床的および内視鏡的アウトカムの達成が認められたと発表した。同試験データは、サンフランシスコで2025年2月6~8日に開催された「Crohn’s and Colitis Congress(CCC、クローン病・大腸炎会議)」で発表された。

オンボーは、クローン病と潰瘍性大腸炎のいずれにおいても複数年にわたる長期的な安全性と有効性を立証した最初で唯一のIL-23p19拮抗薬。2025年1月に米国食品医薬品局(FDA)より、中等症~重症の活動期クローン病の成人患者の治療薬として承認された。さらに2024年12月には欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)が、中等症~重症の活動期クローン病の成人患者の治療薬としての承認を勧告する肯定的見解を採択した。同社はカナダ、日本、中国など世界各国において適応追加申請を提出しており、今後さらなる国・地域での申請を予定している。また現在、中等症~重症の活動性潰瘍性大腸炎の成人患者を適応として世界44か国で承認を取得している。
また、今回の試験以外にもクローン病と潰瘍性大腸炎に対する試験を実施中で、小児患者と成人患者におけるオンボーの長期的な有効性・安全性を評価する試験や、実臨床の潰瘍性大腸炎患者における同剤の影響を評価する第4相リアルワールドエビデンス試験などが行われている。
1年時点で臨床的寛解したオンボー投与継続患者、90%以上が2年時点の臨床的寛解を維持
VIVID-1試験は、中等症~重症の活動期クローン病の成人患者を対象とした52週間にわたる第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。オンボー群の患者は0、4、8週時に1回900mgの点滴静注を、12~52週の間は4週ごとに1回300mgの皮下投与を受けた。第3相VIVID-1 試験でオンボー群に割りつけられ、1年時点で内視鏡的改善を達成した患者が、VIVID-2試験に参加し、オンボーによる維持療法を受けた。VIVID-1試験における1年間を含め合計2年間の継続投与を受けた患者を対象としたobserved case解析では、以下の結果が認められた。
まず、VIVID-1試験の1年時点で臨床的寛解を達成した患者のうち、2年時点で臨床的寛解を維持した患者の割合は92.9%だった(クローン病活動指数(CDAI)に基づく評価)。
1年時点で内視鏡的改善した投与継続患者、90%近くが2年時点の内視鏡的改善を維持
さらに、VIVID-2試験で投与を受けた患者のうち、内視鏡的改善を維持した患者の割合は87.6%だった。内視鏡的改善は、内視鏡所見に基づくSES-CD(Simple Endoscopic Score for Crohn’s Disease)スコアがベースラインから50%以上低下することで判定された。
VIVID-1試験の1年時点で内視鏡的寛解を達成した患者のうち、2年時点で内視鏡的寛解を維持した患者の割合は78.6%だった。内視鏡的寛解は、SES-CDスコアが4以下で、ベースラインから2ポイント以上低下し、かついずれのサブスコアも1を越えない場合に判定された。
加えて、1年時点でCDAIに基づく評価で臨床的寛解を達成しなかった患者のうち、2年時点で臨床的寛解を達成した患者の割合は60.8%。1年時点で内視鏡的寛解を達成しなかった患者のうち、2年時点で内視鏡的寛解を達成した患者の割合は35.4%という結果も得られた。
試験結果についてはmNRI法(modified non-responder imputation、欠測値の補完を行う解析法)による解析も行った。その結果、1年時点で内視鏡的改善がみられたオンボー投与例のうち、2年時点で内視鏡的改善を維持した患者の割合は81.8%、2年時点で臨床的寛解を維持した患者の割合は86.9%、2年時点で内視鏡的寛解を維持した患者の割合は72.5%だった。
長期安全性プロファイルも、既知のオンボーの安全性プロファイルと概ね一致
VIVID-2試験に参加した中等症~重症の活動期クローン病患者におけるオンボーの長期安全性プロファイルは、既知のオンボーの安全性プロファイルと概ね一致していた。オンボーの継続投与の1年時点で内視鏡的改善がみられた患者のうち、投与2年目に重篤な有害事象が現れた患者の割合は6.8%、有害事象のため投与を中止した患者の割合は0.8%だった。
リリーの自己免疫疾患 開発部門のシニアバイスプレジデントであるMark Genovese医師は「本結果はオンボーが臨床的、内視鏡的、組織学的に良好な結果をもたらし、早期に意義のある改善と長期的な疾病コントロールが可能であることを示すエビデンスとなった」と、述べている。
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