815万人の働く35~69歳男女を対象に、BMI・身長・体重の推移を調査
慶應義塾大学は2月12日、全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)に加入している35~69歳までの男女あわせて815万人分のデータを用い、肥満の指標であるBMIに加えて、身長と体重の2015~2020年度の推移を明らかにしたと発表した。この研究は、同大スポーツ医学研究センターの勝川史憲名誉教授、植村直紀元研究員、西田優紀兼任所員(所属:東京科学大学)、看護医療学部・大学院健康マネジメント研究科の山内慶太教授の研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Obesity」にオンライン掲載されている。

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肥満(BMI≥25 kg/m2)は、心血管疾患の発症や全死亡率の上昇と関連することが広く知られており、米国をはじめとする世界各国で深刻な健康問題となっている。日本人を対象として加齢に伴うBMIの推移を示した先行研究は存在するが、食習慣の西洋化する1960年代以前に生まれた集団や特定の職域集団を対象としており、代表性に限界があった。またBMIは体重を身長の2乗で除して算出されるが、これまでの研究では加齢に伴う身長の短縮による影響について、十分に議論されていなかった。
そこで研究グループは今回、日本の就労世代が多数加入する協会けんぽのデータベースを用いて、1950~1980年代に生まれた中高年世代815万人を対象に、6年間にわたるBMI・身長・体重の推移を明らかにすることを目的とした。
男女ともに、全ての年齢層でBMIが増加する傾向
研究では、2015年度に協会けんぽに加入していた35歳以上70歳未満の被保険者および被扶養者815万5,894人(男性477万7,891人;女性337万8,003人)を対象とし、性別および5歳刻みの年齢区分に基づいて14の集団に分類した。解析には線形混合効果モデルを用いて、6つの時点(2015~2020年度)におけるBMI・身長・体重の値をそれぞれ推定した。
その結果、1年あたりのBMIの変化量は全ての集団で正であり、男女ともに全ての年齢層でBMIが増加する傾向が示された(男性:0.02~0.14 kg/m2/年、女性:0.05~0.16 kg/m2/年)。
身長は加齢に伴い短縮傾向、70~74歳では男女とも累積で3cm近く背が低くなると判明
身長は加齢に伴い短縮していく傾向にあり、35~39歳を基準とした場合、70~74歳では男女ともに累積で3cm近く背が低くなることが明らかとなった。このため、男性の65~69歳では体重は減少傾向にあるが、身長も同時に低下傾向にあるため、BMIでみると増加していく結果になったと考えられる。一方で、集団間で比較すると2020年度の方が2015年度よりも同じ年齢層の体重が重くなっていた。
高齢期のBMIによる体格評価について、身長短縮も考慮したさらなる検討が必要
今回の研究により、現代日本人の中高年世代においては、男女ともに全ての年齢層でBMIが増加傾向にあることが明らかとなった。高齢期では体重減少とともに身長も短縮するため、BMIでみると増加する結果となった。一方で、サブグループ間で比較すると、同じ年齢層でも後に生まれた世代の体重の方が重かったため、今後肥満者の割合が増加していくと推測される。また、高齢期のBMIによる体格評価については、身長短縮も考慮したさらなる検討が必要だ。
「本研究の主な対象者は食習慣の西洋化が進んだ1960年代以降に生まれた世代であり、現代の日本人における肥満の動向を理解する一助となる」と、研究グループは述べている。
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