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小児COVID-19「感染に気付かない」が多い傾向-千葉大

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2025年02月19日 AM09:30

実際にどれくらいの子が感染?どんな子が感染しやすい?

千葉大学は2月6日、同大教育学部附属小学校の子どもたちとその卒業生から提供された血液を用いて、2020年度から2022年度の3回にわたる新型コロナウイルスの感染状況調査結果を発表した。この研究は、同大予防医学センターの山本緑講師、櫻井健一教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症は、世界中で拡大し、2024年2月に世界保健機関が発表した感染者数は累計約7億7,000人を超えた。当初、子どもは新型コロナウイルスに感染しにくいと考えられていたが、その後の調査により、子どももウイルスに感染はするが、無症状や軽症で済む場合が多いことがわかってきた。国や県では、検査を行った医療機関の報告に基づいて感染者数を把握している。しかし、症状があまり見られないなど、検査を受けていない感染者を把握することはできない。そのため、実際にどれくらいの子どもが新型コロナウイルスに感染しているのか、どんな子どもが感染しやすいのかについての十分なデータがなかった。

2020~2022年度、小中学生355人へ抗体検査+保護者へ行動調査

今回の研究は、2020年12月の調査に参加した同大教育学部附属小学校の子ども355人を対象に実施(1年目調査:1年生51人、2年生64人、3年生69人、4年生68人、5年生49人、6年生54人)。2020年度、2021年度、2022年度の冬に抗体検査を行い、新型コロナウイルスに感染したことがある子どもの数を調べた。また、それぞれの子どもについて身長体重などの身体測定に加え、新型コロナウイルス感染症にかかったかどうか、他の子どもと遊ぶ傾向が強いか、兄弟の有無などについて、保護者へ質問票調査を行った。

抗体検査「陽性」2022年は60.9%

調査に参加した子どもの保護者の報告によると、2022年1月から新型コロナウイルス感染者が急激に増え、その動向は日本全国や千葉県での報告数の動向とほぼ一致していた。抗体検査で陽性の(一定量以上の抗体を持っている)子どもの割合は、1年目0.6%、2年目2.2%。3年目は60.9%で、半数以上の子どもたちが2022年に感染していたことがわかった。

2022年「かかっていないと思う」子36%が抗体検査陽性

子どもが新型コロナウイルスにかかったかどうかを保護者に尋ね、抗体検査の結果と比較した。2022年の質問票調査において、「かかっていないと思う」という子どものうち36%が抗体検査陽性であった。また、「調べていないが、かかったかもしれないと思う症状があった」という子どもは83%が陽性であった。この結果から、新型コロナウイルスに感染しても、症状がないか、検査を受けていないために感染に気づかなかった子どもが多くいたことがわかった。

感染と関係する要因、他の子と遊ぶことを好む/学年が低い

3年目の抗体検査で陽性となった子どもの中で、2年目の抗体検査が陰性だった者を対象として、3年目に陽性となったこと(2022年に感染したこと)にどのような要因が関連しているのかを調べた。いくつかの考えられる要因について調べた結果、感染した子どもたちには次の2つの傾向が高いことがわかった。1つ目は、一人でいるよりも他の子どもと遊ぶことを好むこと。他の子どもたちとの接触を通して感染した場合が多いと考えられる。2つ目は学年が低いこと。この時期までにワクチンを接種した子どもが少ないことや他者との距離が近くなりやすいことが関係していると考えられる。

今後、ワクチン接種・子の生活習慣など感染症対策の研究を

2022年は、感染力が高いオミクロン株が流行したことに加え、熱中症予防のためのマスク着用の緩和、学校内外での活動が再開されるようになった。これらの状況と、無症状や軽症で感染に気づかない子どもたちが多いことから、急速に感染が広まったと考えられる。今後も新型コロナウイルス感染症だけでなくさまざまな感染症が流行し、基本的な感染対策が重要であることは言うまでもない。一方、子どもたちは、他の人達との交流を通して成長していくため、感染しやすいからといって、遊びや交流の機会を妨げることは望ましくない。ウイルス感染が起こりにくい屋外での遊びを推奨するなどの取り組みによる感染対策が望まれる。

今回の研究により、2022年に子どもたちの中で新型コロナウイルス感染症が急速に広がったこと、感染に気づいていない場合が多かったこと、他の子どもたちとの遊びなどを通して感染が広がっている可能性があることがわかった。これらは、子どもたちの中での感染の実態を示す重要な成果だとしている。同研究では、子どもたちの生活の様子を詳しく調査していないため、具体的にどのような生活が感染対策に結びつくかを明らかにすることはできていない。「今後は、ワクチン接種および子どもの生活習慣を含めた感染症対策について、さらなる研究が求められる」と、研究グループは述べている。

 

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